欠場も「視野に入っていた」 首脳陣の問いと近藤健介の答え…全試合出場への強い“執念”

ソフトバンク・近藤健介【写真:竹村岳】
ソフトバンク・近藤健介【写真:竹村岳】

12日のヤクルト戦で右手を痛めて途中交代…「一番困る選手」と指揮官も心配

 大きな柱がいないことも、首脳陣は想定していた。ソフトバンクは13日、ヤクルト戦(みずほPayPayドーム)で6-3で勝利した。「5番・指名打者」で出場したのが近藤健介外野手だった。3打数無安打に終わったものの、2四球を選んで1打点。首脳陣は、欠場させることが選択肢にあったことを認める。近藤の試合出場への強い思いに押し切られる形で、グラウンドに立たせることを決めた。

 12日の同戦だった。4回2死満塁での守備、ヤクルトの鈴木が放った強烈な打球が左翼に飛ぶ。近藤がダイビングキャッチを試みたが、右手を痛めてしまった。その裏の打席には立ったものの、途中交代。小久保裕紀監督も「今後に響いてもらったら一番困る選手なので。明日は来てからになります」と心配を隠せずにいた。

 一夜が明けた13日、試合前から通常のメニューをこなしつつ「それは何もない時に比べたら力は入りづらいですけど、入らないってほどではないので。大丈夫です」と近藤が言い切った。守備については「投げていないので、ちょっと厳しそうです」と話し、指名打者での出場となった。午後1時30分ごろ、グラウンドに姿を見せ、最初に声をかけたのが奈良原浩ヘッドコーチだった。近藤とのやり取りの一部を明かす。

「『手の具合どう?』っていう確認です。『意外と大丈夫です』って言っていました」

 12日の段階では、時間が経たなければ何もわからない状況だった。奈良原コーチは欠場させることも「視野には入っていた」と認める。具体名こそ明かさなかったものの、近藤が欠場した時のスタメンも「一応考えていました。使わなくて済んでよかったです」と明かした。「だけど、本人が行けると言っているのに『やめとけよ』と言うわけにもいかないし」。試合前の練習を見ながら、首脳陣が近藤に課した条件は1つだった。

「本人が『行くか、行かないか』と言うよりは『振れるか、振れないか』でした。振れなければ当然そんなの無理だし、あくまでも振れている状況で、本人も『振れます』ということだったので、試合前のバッティング練習を見て、あれくらい振れるなら行きましょうかという決定でした。それと、最終的には本人が大丈夫という判断です」

 昨年は全試合に出場して本塁打、打点の2冠に輝いた。スタメンを外れたのも1試合だけだった。今季から1軍の指揮を執る小久保監督からは、柳田悠岐外野手とともに早々にレギュラーだと明言されてきた。だからこそ近藤は「出られるので、それだけです。迷惑がかかって無理なら無理だとは思っていましたけど、出られそうだったので」と語る。背負っている期待が大きいからこそ、グラウンドに立ち続けなければならない。

「もちろん、そこはレギュラーとして大事なことだと思います。今日は結果が出なかったですけど、明日しっかり修正していきたいと思います。腫れたりとかはありましたけど、そこはスイングの力加減には問題なかったと思います」

 小久保監督も現役時代も含めて「基本的に“王イズム”といわれる中では、基本的に主力はまず(試合に)出るところから僕らは育てられた。近藤もホークスの一員として主力の責任感というのは非常に頼もしく映っています」と言う。奈良原コーチも「本人が問題ないと言うから。何よりも彼が打線の中に1人、座ってくれているとね」と、改めて存在の大きさを実感し、スタメンを決めた。

 試合後、近藤は取材に応じながら右手をアイシングしていた。ドームを後にしてからも治療に向かうなど、毎試合グラウンドに立つために最善を尽くしている。「なんとか行けるかなって思います」。ヒヤッとする場面であったことは間違いないが、近藤の執念を、改めて見せつけた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)