長谷川威展の“勝ち運”をガチ考察 10試合で4勝…最大の要因は「明日やろうはバカ野郎」

ソフトバンク・長谷川威展【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・長谷川威展【写真:荒川祐史】

4日の中日戦では大島を見逃し三振…ラストボールは直球で「気持ちよかった」

 白星がついてくる。“勝ち運”という抽象的な言葉を、ガチで考察してみた。今季からホークスの一員となった長谷川威展投手は、防御率0.00という圧倒的な存在感を見せている。10試合で4勝の結果には「なんでですかね? やばいと思いますよ」と自らも言うほど。運にも左右される勝利を、なぜこんなにも掴むことができているのか。

 4日の中日戦(バンテリンドーム)では、同点の7回2死三塁から登板。代打・大島と相対した。通算2037安打、竜が誇るヒットマンだったが「誰とか関係なく、行く気持ちで。ここでちゃんと仕事をしたらいいなと思いました」と臆することなく向かっていった。「感触はよかったし、気持ちよかったです」というのは、4球目のラストボール。外角に139キロ直球を通してみせ、見逃し三振に仕留めた。雄叫びをあげたのも「勝手に出ました」と照れ笑いで振り返る。

 8回に打線が点を奪えば勝利投手の権利が得られる状況だったが「そんなもう、おこがましいです。何も狙っていなかったです」とチームの勝利だけを願っていた。先発投手にとっても、9回無失点に抑えても白星を掴めない時もあれば、5回5失点でも転がり込んでくる時もある。なぜこんなにも“勝ち運”があるのか、真剣に聞いてみた。「たまたまですよ」と言いながらも、自分なりの見解を語ってくれた。

「まずは無失点に抑えていることじゃないですか? あそこ(マウンド)で点を取られたらいけないですから。(自分が投げる展開は)ビハインドですし、点差を開かせないこと。ちゃんと、繋がれた状況の中でも集中できていると思いますし、そこが欠けていたら……というところでも、しっかり集中していることだと思います」

 当然のことだが、最大の要因は無失点に抑えていること。自身の役割を果たしているからこそ、打線にも逆転のチャンスをもたらしている。ビハインドの登板が多い中でも「点差は関係なく、基本的にも集中できています」と自分の仕事にフォーカスしている。投げた後、打線を見守っている時の気持ちも「点取ってほしいなとは思っていますけど、勝ちをつけてほしいだなんて1ミリも思ってないですからね」と笑って語る。

 オープン戦から結果を残し、開幕1軍入りを内定させた。開幕直前に体調を崩したものの、4月4日に1軍昇格となった。倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は「みんな“投げたい投げたい”なので、嬉しい悩みです」と投手陣全体に競争心が生まれていると語る。言い方を変えれば、開幕して2か月以上が経って長谷川ほどの結果を残していても、10試合登板しかない。1回1回の登板に緊張感があると、本人も言う。

「確かに、緊張感は持てています。しっかり集中して、という感じです。競争意識ももちろんありますけど、今の自分の仕事はビハインドをしっかり崩さずに、その状態のまま行くこと。大事な役割だと思うので、そこから勝ちを拾うという中では、大事な役割なんだと思います」

ソフトバンク・長谷川威展【写真:竹村岳】
ソフトバンク・長谷川威展【写真:竹村岳】

“勝ち運”という抽象的な言葉。何か、野球の神様が微笑みたくなるような習慣があるのか。聞いてみると「掃除とか、整理整頓とかはしています。そんなにするわけではないですけど、自分の中のルールでやる感じで、集中できるくらいには綺麗にしています」と語る。「あとあれですね」と続けて明かしたのが、長谷川威展なりのプロ意識だ。

「“今日はいいや”みたいな、ここはいいっていう時があるんですけど、そう思った時こそやろうとしていますね。ストレッチとか、スルーしてしまいそうな掃除だとか。“明日やろうはバカ野郎”って感じですね」

 チームが勝つための自分の役割は無失点に抑えること。抑えるために日々、プロとして最高の準備をすることだ。「妥協しそうな時、もう1度自分に“プロとして”っていうのは(問います)。実力がプロなのかはわかりませんけど、プロとしての意識だけは持てると思うので。それは常に意識していますし、ちょっとだけ芽生えているのかもしれませんね」と嬉しそうに笑った。

 もちろん冗談だが、ある先発投手からは「白星くれ」と言われたこともあるそう。4勝を挙げている大津亮介投手からも「大津さんが4勝目をした時に『すぐ追いつくからな』って言われたり」とやり取りを明かした。

(竹村岳 / Gaku Takemura)