ブルペンで「クソ泣いた」 岩井俊介が“30分の大号泣”…投球に納得いかず「ダサいな俺」

ソフトバンク・岩井俊介【写真:竹村岳】
ソフトバンク・岩井俊介【写真:竹村岳】

3者凡退で抑えるも…抱えていた不安

 悔し涙を成長のキッカケへと変えていく。ソフトバンクが楽天に21-0の大差で勝利した21日。この試合の最後を締め括ったのは岩井俊介投手だった。4番手としてマウンドに上がり、先頭の村林一輝内野手を空振りの三振に切って取ると、その後も危なげない投球で3人をピシャリと抑える投球を見せた。

 大量の点差があったとはいえ、1イニングを無死球無安打の11球。投球内容としても申し分ない。それでも本人は「悪かったのが全部どこかに飛んで行って……」と、不安を抱える中での登板だったと振り返る。

 不安を感じたのは、この試合の前日の20日に行った練習だった。「僕その練習のブルペンで、けっこう投げた後に30分ぐらい泣いてたんですよ。最近ちょっと泣き癖? みたいな」。このように語った“涙の理由”には岩井らしい経緯があった。

 この日のブルペンでは、東浜巨投手や藤井皓哉投手ら、1軍の投手陣とともに汗を流した。投球練習を見ていた先輩投手からは「えぇやん」と声をかけられたが、岩井自身の中では納得がいくものではなかったという。

「内容が良くなかったんですよ。ちょっとブルペンの椅子に座ってたら岡本(正靖ストレングス&コンディショニング(1軍担当))さんが来て、ずっと僕を待っててくれたんですよ。僕が明らかにずっと下を向いて喋ってるんで、こいつおかしいなと思われて、めっちゃアドバイスくれたんですよ。そしたらもっと泣けてきちゃって、めっちゃうろちょろして、その辺でこうやって(泣くのを我慢する仕草)」

 試合ではなくとも、常に高い意識で取り組むところが岩井の良いところ。「クソ泣いたっすね。意味わからんぐらい泣きました、ダサいな、俺と思って。人前で泣かないタイプなんですけど、プロに入って涙もろくなっちゃった……」。不本意な内容だったことに対する悔しい気持ちが込み上げ、涙が溢れた。

 岩井が“泣いた”のはシーズンに入って2度目のこと。1度目は4月7日に行われたウエスタン・リーグの中日戦。9回にマウンドに上がるも、2死から連打を浴びて逆転サヨナラ負けを喫した試合だ。この時は周囲の励ましによって、我慢していた悔し涙をこらえることができなかった。

ソフトバンク・岩井俊介(左)【写真:竹村岳】
ソフトバンク・岩井俊介(左)【写真:竹村岳】

「あれ以来2回目。プロ入り2回目。なんか記録みたいな感じやけども(笑)」。普段は陽気なキャラで先輩後輩関係なく接する。その姿は西武へと移籍した甲斐野央投手と重なり、チームメイトからは、親しみを込めて“甲斐野2世”と呼ばれはじめている。

「ブルペンで泣くやつおらんってー(笑)」

 おどけながらに語ったが、悔し涙に嘘はない。交流戦が始まる前に登録抹消となり、今は2軍での調整を続ける日々。それでもきっと、1軍から必要とされ、岩井の投球が勝利をもたらす日は来る。初勝利の時には“嬉し涙”を見せてほしい。

(飯田航平 / Kohei Iida)