リーグトップの数字を叩き出すのは打撃や投手だけでなく…
4年ぶりのリーグ優勝に向けて、ソフトバンクが好スタートを切った。44試合を終えて29勝13敗2分けの貯金16。24日からのロッテ戦(ZOZOマリン)では今季初の同一カード3連敗を喫したものの、2位の日本ハムに4.5ゲーム差をつけた首位で、28日から始まる「日本生命セ・パ交流戦」を迎えることになった。
開幕からの2か月は上々の戦いぶりだった。チームの197得点、102失点、31本塁打はいずれもリーグトップ。近藤健介外野手が打率で、山川穂高内野手が本塁打と打点でリーグトップに立ち、柳田悠岐外野手は打率、打点でリーグ2位につける。投手陣でもリバン・モイネロ投手、大津亮介投手が防御率1点台をキープし、救援陣の防御率も1.83と安定。投打が噛み合い、44試合を戦い抜いてきた。
投打ともに好調なチーム状況にあって、忘れてはいけない“強み”がある。データ面で見ても、他球団を凌駕している圧倒的なホークスの武器とは、一体なんなのだろうか?
好調なホークスを支える1つの武器、それはチーム全体の走塁意識の高さだ。打者が全力疾走するのはホークスとしての伝統として受け継がれてきたもの。主力こそ、それを徹底することを義務づけられている。現に今季、走塁で効果的な得点を生み出したのは一度や二度ではない。
それはデータ面にもしっかりと表れている。セイバーメトリクスの指標などで分析を行う株式会社DELTAのデータには「UBR」という指標がある。盗塁、盗塁死を除く走塁面での貢献を得点化した指標で、リーグの平均的な打者に比べてどれだけ多く走塁で得点を生み出したか、を表す。安打の際の進塁やタッチアップ、併殺崩しなどが評価の対象となる。
この「UBR」でホークスは今季ここまで「8.4」と12球団トップの数字を残している。2位はセ・リーグの中日の「4.9」で、パ・リーグ2位の西武の「1.6」とは7点近い差を生み出している。ロッテは「0.1」、日本ハムが「-3.0」、オリックスが「-3.5」、楽天が「-6.3」となっており、パ・リーグの他球団に対して、走塁面で大きなアドバンテージを生んでいることが分かる。
走塁といえば、スペシャリストの周東佑京内野手の存在が思い浮かぶだろう。実際に、周東個人で「UBR」は「4.4」を叩き出しており、こちらも12球団でトップ。ただ、周東だけでなく、ほかの多くの主力も、この「UBR」でプラスを生み出しているのは驚くべき点だ。
例えば、35歳の柳田は「2.3」で、これは12球団全体でも6位の高さ。今宮健太内野手も柳田と同じ「2.3」で、さらに近藤が「1.4」、栗原陵矢外野手が「0.9」、川村友斗外野手が「0.8」と、軒並みプラスを生んでいる。主力で「UBR」がマイナスなのは山川と甲斐拓也捕手だけしかいない。
2022年はこの「UBR」でリーグ4位の「-15.0」、2023年はリーグ2位の「2.3」だった。小久保裕紀監督は以前から「走塁に関してはホークスの1つの武器というか、チーム全体、4軍まで含めてやる決め事でもありますので。その辺は1軍選手がしっかり手本を示すのは当然ですね」と語っており、選手たちに常に“全力疾走”“1つ先の塁を狙う”ことを求めている。
今後、シーズンが進むにつれて、疲労などでこの数値に変化が出る可能性もある。それでも、ここまでホークスが走塁意識高く戦ってきていることは明らか。打って、守るだけじゃない。走って勝つ、のもホークスの戦い方の1つである。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)