柳田悠岐の言葉で「迷いがなくなった」 2軍で打率.347…佐藤直樹を変えた“師匠”の存在

ソフトバンク・佐藤直樹【写真:竹村岳】
ソフトバンク・佐藤直樹【写真:竹村岳】

「調子がめっちゃいいというよりは、毎日継続して打てている感じです」

 憧れの人からもらったヒントで、高打率を維持している。ソフトバンクの佐藤直樹外野手が、ウエスタン・リーグで33試合に出場して打率.347。開幕から高打率を維持しており「普通です。調子がめっちゃいいというよりは、毎日継続して打てている感じです。ちょっと前までは(調子いいというのが)あったんですけど」と、状態を自己分析する。課題だった打撃面が大幅に改善された背景には、柳田悠岐外野手の影響があった。至った答えは、シンプルなものだ。

 22日、ウエスタン・リーグの中日戦(タマスタ筑後)では延長10回1死から代打で出場。左腕・福から左中間に二塁打を放ち、同点のホームを踏んだ。松山2軍監督も「あそこでよく自分らしく、思い切りのいいバッテイングをしてくれたので。(2-2の引き分けに終わったのも)彼のおかげですね」と手を叩く。2死二塁から笹川吉康外野手の中前打で生還。佐藤直の脚力も生きたシーンだった。

 昨年オフに戦力外通告を受けて、育成契約を結んだ。高い身体能力は持ちながらも、1軍では通算打率.129、2本塁打。70打数9安打に終わっていた。「シンプルになってきました」と語り出したのは、柳田との自主トレで学んだことばかりだった。

「バッティングの考え方がシンプルになってきました。ギーさんの自主トレに行って、色々と考えていたのが『そんなシンプルなんや』って思ったんです。それだけ考えたら、あんまりいらんこと考えんでいいなって思うようになりました」

 昨オフから柳田の自主トレに参加。大分県佐伯氏で寝食をともにする中で、打撃面の技術論も何度も聞いた。「僕がしっくりきたたのがシンプルっていうところでした。今はそれを取り入れて、意識している感じですし、今は本当にそれだけです」。当然、大切なポイントは多くあるはずだが、通算1591安打の成績を残しているギータでも、考えは至ってシンプル。「無駄なことを考えなくてよくなって、迷いがなくなりました。それだけ考えて打席に入っているので、集中力も増しました」と、余計だったものは削ぎ落とされていった。

ソフトバンク・佐藤直樹【写真:竹村岳】
ソフトバンク・佐藤直樹【写真:竹村岳】

 技術的に加えた変化は「継続していることがあるので、それがハマっている感じです」という。柳田の影響もあり、自分のバッティングが少しずつ輪郭づいてきた。「『どうしたらいい』っていうのが今はないですね。ここがあかんから次どうしよう……とか」。これまでなら、打てない時はズルズルと引きずってしまうタイプだったが「それがないですね。1日1本でも継続して、四球も取ったり。打てない日もありますけど、それが今までなら『どうしよう』『やばい』ってなっていたのが、切り替えられています」と前だけを向けるようになった。

 昨年11月、育成契約を結んだ時は「頑張っていなかったわけではないんですけど、頑張りが足りていなかった。何をするにも、もっと野球にも自分自身にも向き合っていかないといけないです」と語っていた。開幕して、明らかに変わった姿を見せている今。過去を振り返っても「全然頑張っていなかったというか、考えられていなかった」と、今だからわかることがたくさんある。それだけ今の佐藤直樹が、野球に全てを捧げている証だ。

「今も頑張っているのか、頑張っていないのかは、自分ではわからないです。でも例年以上に野球のことを考えている時間は多いですし、怪我も多かったので家で自然に体のケアをしたりとか。野球以外のところも、野球に繋がるような生活を送っているとは思います」

 3月には緒方理貢外野手、川村友斗外野手、仲田慶介内野手が支配下登録された。支配下は残り5枠となったが「それは本当に、何も気にしていないです」と、今は自分のことだけに集中している。7月31日、登録期限も少しずつ近づいているが「それも、何もないです。なれたらなれたですし」と振り払うように言った。「最後のつもりで、悔いのないようにやっているので。それであかんかったら仕方ないので」と、覚悟が決まった表情でキッパリ言った。

 柳田とはキャンプ以降、顔を合わせられていない。「(自主トレ期間中は)『頑張れよ』『支配下いける』って、ずっとポジティブなことしか言っていなかったです」と、勇気が出る言葉を何度ももらった。5年目になる2024年。全てをかけて2桁背番号を勝ち取り、恩返ししたい人がいる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)