同期が明かす前田悠伍の素顔 先輩の誘いも遠慮なしに断る…“芯”を持つ「ガキンチョ」

ソフトバンク・前田悠伍(右)【写真:竹村岳】
ソフトバンク・前田悠伍(右)【写真:竹村岳】

「なにも躊躇せずに話せる“お兄ちゃん”っていった感じの存在」

 鷹フルでは今季の月イチ連載として、ドラフト1位ルーキーの前田悠伍投手を深掘りしていきます。今回は、先輩ルーキーが証言する「いたずらっ子」な本性。大人びた雰囲気を持つ高卒ルーキーですが、本性は「先輩が好き」。自身で認める“末っ子気質”なのだと言います。「お兄ちゃん」と慕う“年上同期”の先輩たちは前田悠にとってどんな存在なのでしょうか。

 昨年のドラフト会議で指名された15選手のうち、高卒は前田悠を含めて6人だった。同期入団の半数は大卒、社会人出身の先輩。支配下登録選手でも7人中5人が年上だったが、前田悠はすぐに先輩たちと打ち解けていた。「(年齢は)4つ上とかが多いですけど、普通に話せるというか……。なにも躊躇せずに話せる“お兄ちゃん”といった感じの存在です。頼もしいというか、一緒にいて楽しいです」。浮かべる笑みは18歳の少年だ。

 キッカケ等もなく仲良くなった。「もう自然と、ですかね。入団会見とかでみんなと会って話して、自然と仲良くなって……」。出会ったのは半年ほど前だが、関係性は深まっている。グイグイと行くタイプではないというが、「1人仲良くなれば、周りとも話せるようになるので、そこから仲良くなりましたね」。中でも最初に仲良くなったのは「岩井(俊介)さん、宮里(優吾)さんですね」だと明かす。

 特にドラフト2位の岩井とは入団当初から球団のイベントやPR活動などで行動を共にすることが多かった。コミュニケーション能力の高い岩井には、初めて会った時から衝撃を受けた。「すごいですよね」。今まで出会ったことのないタイプだったようで、とにかく岩井の話になると笑いが絶えないのが印象的だ。

「悠伍はガキンチョっすよ」

 岩井はニヤリと笑う。前田悠自身も、そこに関しては自覚大アリの“確信犯”。先輩たちをいじったり、ちょっかいをかけたり、イタズラを仕掛けたり……。「なんかちょっかいかけたくなるんですよね。(ちょっかいかけたくなるのは)やっぱり岩井さん(笑)。同期入団の人はほとんどみんなかけやすいですね」。同期以外の先輩にはまだ遠慮はあるが、徐々にその“本性”もさらけ出してきている。

 ただ、先輩にも流されない芯もある。“お兄ちゃん”と慕う岩井から食事に誘われても、前田悠は遠慮なく断るのだという。基本的に貴重な休日は「たくさん寝たい」といい、多い時は15時間も寝るそう。オフはまず、体をしっかり休めることに務める。揺るがない信念を持つ18歳だ。

 春季キャンプは高卒ルーキーで唯一、宮崎のB組で完走した。岩井は「キャンプ中、ああ見えて結構、神経使っていたみたいで。俺らとご飯食べる時、めちゃくちゃ笑顔でしたよ」とも明かす。初めてのキャンプで気疲れもあったはず。同じ宮崎でキャンプを送っていた“お兄ちゃん”たちの気遣いに何度も助けられたことだろう。

 そんな同期の先輩たちは岩井をはじめ、村田賢一投手と澤柳亮太郎投手も既に1軍を経験している。前田悠は「新人合同自主トレからずっと一緒にやってきた人たちが1軍で投げているっていうのは、自分にとっても刺激になりますし、僕も早くその舞台で一緒に投げたいなっていう思いがあります」とその背中を追いかけている。

「今は2軍とかで投げている段階なんですけど、とにかく自分のペースというか、焦らず“限界突破”っていうところをテーマとしてやっています。何事も限界まで追い込むというか、追い込んで、やっぱり真っすぐの質を上げていって、今年中に1軍を何度か経験できたらいいなと思っています。2軍でとにかく成績を残して、少しでも1軍で投げたいです」

 まず目指すのは今季中の“1軍デビュー”。大好きな先輩たちと共に、1軍で活躍するために、前田悠は目の前の課題に挑み続けていく。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)