ただひたむきにバットを振り続けている。今季からホークスの一員として加わったアダム・ウォーカー外野手。「1日でも早くしっかり打てるように調子を取り戻さなきゃいけない。そのためには練習しかない」。現在はファームでの再調整が続いているが、23日のウエスタン・リーグの中日戦ではレフトへ2号3ラン。ファームにいようが、とにかく真面目で練習熱心な姿が印象的だ。
チームとしても補強ポイントだった右の長距離砲として期待され、開幕から1軍でプレーしてきたが、なかなか結果を残せなかった。20試合に出場して打率.169、1本塁打3打点。首脳陣も我慢して66打席に立たせたものの、状態はなかなか上がって来ず、4月30日に出場選手登録を抹消された。
ファーム降格に忸怩たる思いを抱えているはず。ウォーカーの姿勢は1軍にいても、2軍にいても変わらない。アーリーワークも居残り練習も熱心に行う。「1日でも早く1軍に戻って、1軍の舞台で試合がしたいので。そのためには練習しかないんです。(練習に)早く来ますし、遅くまででもやります。練習あるのみです」と頷く。真面目な人間性が言葉の端々に表れる。
ウォーカーはファームに降格になった時のことをこう振り返る。「自分の中でも打席でのボールの見え方にちょっと迷いや良くない部分があった」。芳しくなかった打撃の感覚を取り戻すためには練習するしかない。とにかくバットを振るために時間を費やすことにした。
登録を抹消された4月30日。2軍はタマスタ筑後でウエスタン・リーグの広島戦が予定されていた。デーゲームの場合、ホームのホークスの打撃練習が終了するのは午前11時頃。選手たちは一度着替えや食事のため、クラブハウスへ戻る。だが、ウォーカーはグラウンドから室内練習場へと移動すると、そこから約2時間、ひたすらバットを振り続けた。
この日の2軍戦には出場せず、練習に没頭することにした。サポートした長谷川勇也R&D担当は「今日は試合には出ずに『iPitchを使って練習をしたい』っていうことだった。ちょうど今この時間は(試合があって)バッティングコーチが誰も手伝えないので、僕がお願いされて、練習出来る環境を提供しました」と説明していた。
iPitchとは、ボールの回転数や回転軸を自在に変えることができる最新鋭の投球マシン。対戦投手の球質を忠実に再現でき、ホークスは昨年5月に導入した。1軍投手の平均値に設定されたマシンでウォーカーは黙々とボールを打った。長谷川氏によると「最後は(球種)ミックスで『ゲームと同じようなハードな練習をしたい』ってことだった。調子が崩れた時ってなかなか難しい練習って遠慮しがちなんですよ。そこに果敢にトライしてくるっていうその彼の気持ちがすごく素晴らしい」と語っていた。
ハードな練習に挑んだウォーカーは「実戦により近い中でも、練習は練習なので。ここでの失敗はいくらでもしていい」と意図を明かす。「自分の中でボールの見え方にちょっと不安があったところで、iPitchを使って練習して、しっかり頭の中がクリアになりました。すごくいい練習になったと思います。実際のプロの選手が投げる球に1番近いものなので、それが打てなければ意味がない。より実戦に近い、より質の高い練習をしたかった」。こう語る言葉に、迷いはなかった。
練習の成果もあって、感覚は良くなってきている。21日の時点で、2軍では13試合に出場して打率.213、2本塁打8打点。まだ成績はついてきていないものの、「だいぶ解消されてきているので、あとは次の段階で、自分の打てる球をしっかり芯で強く叩いて、強い打球を打つというのを実戦でやっていけたらいいなと思います。それから先は、野球の神のみぞ知るという段階です」と表情は明るい。
常に、1軍で活躍する自身の姿を思い描く。「1日でも早く1軍に戻りたい。今、1軍は調子がいいですけど、その調子のいいチームの勝利の一部に自分がなりたいと思っている。もちろん2軍でも自分が1つの要因になって勝てるような試合をどんどん増やしていきたいと思います。ただ、やっぱりPayPayドームで早くもう1度試合がしたい。頑張るだけです」。実直な人柄が人を惹きつける。1軍でウォーカーが輝く姿を1日でも早く見たい。