試合中の広報コメントで「佑京さんに追いつくことができてよかったです」
愛される“くりうきょ”の絡みが、試合中も垣間見えた。ソフトバンクは21日の楽天戦(みずほPayPayドーム)で21-0で快勝。栗原陵矢内野手が今季1号ソロと2号2ランの1試合2発を記録した。待望の今季初アーチが生まれると、栗原は「佑京さんに追いつくことができてよかったです」とコメント。なぜ周東佑京内野手に視線が向いたのか? その“仕掛け人”は、まさかの本人だった。
まずは2回無死一、二塁で中越えに2点二塁打。3回無死には、待望の1号ソロが生まれた。ポンセのカットボールを捉えると、右翼テラスギリギリに着弾。広報を通じて「今シーズン初ホームランが出てホッとしています。佑京さんに追いつくことができて良かったです」とコメントした。周東に1号が生まれたのは17日の楽天戦(楽天モバイルパーク)。俊足が持ち味の“佑京さん”に、ようやく並ぶことができた。
5回無死一塁では右翼席に完璧な2号ソロ。同じく広報コメントで「周東佑京さんを超えることができました。それが良かったです」と、今度はフルネームだ。この日も試合前の練習中や、セカンドアップ中も笑顔で仲良く話していた“くりうきょ”。なぜこのような広報コメントを発することになったのか。試合前まで“ゼロ”だった栗原が胸中を明かす。
「自分がゼロっていうよりも、佑京さんに負けているのがムカついたっすね。めっちゃ煽ってきたので」
選手としてのタイプは違えど、どの選手にも数字はついてくるもの。結果的にではあるが、周東を追いかける形になっていたことを「自分の中でも周東さんに先に打たれたのがすごく悔しかった」と表現する。試合中のベンチ、周東と栗原は隣同士で座っている。周東本人に舞台裏を聞いてみると「隣で『そう言っとけ』って僕が言いました。最近ホームの時はずっと隣に座っているので」と、仕掛け人はまさかの周東だったそうだ。
わざと“煽って”いたということにも「僕よりも遅かったので、(本数で)勝っているうちに」とイタズラっぽく笑う。「どこかで1本くらいは出るので、そんなに意識はしていなかったですけどね」。周東自身は、1号が生まれるまでは地に足をつけていた様子。あっという間に抜かれてしまったことにも「いつか打つでしょう、あいつは」と、ケロッとしていた。
試合中に栗原からコメントを受け取ったのは、西田哲朗広報。「あ、そうなんですか?」と、周東が仕掛け人だったことは知らなかったよ様子だった。その上で「チラッと佑京が横で、そんな感じで『打つことができてよかったです』ってボソッと言った気がします」と舞台裏を明かす。打順も、この日は1番と6番。コメントを取りに行った時も隣に座っていたという。「横でワーワー話していたんですけど『周東佑京さんを追い越すことができてよかったです』みたいな感じで、その時も佑京は隣にいました」と続けた。
栗原も打率が.279まで上昇した。直近6試合では21打数10安打で打率.476。「いいバットの出方が、できてきていると思います」と近藤健介外野手と山川穂高内野手からの助言を明かす。
「何日かわからないですけど、ここでやった楽天戦。代打で出た後、セカンドゴロを打った打席の試合後の練習からです。近藤さんと山川さんと話をしました。もともと相手として戦っていた2人なので『相手として戦っていた栗原ってこういうバッターだよね』『こういう打球飛んでたよね』『じゃあこういう打ち方したらいいんじゃない?』みたいな、そういう会話からでした。『とにかくバッティング練習は右中間にライナーでぶち込みに行きなさい』みたいな感じです」
その日とは、5月1日の楽天戦(みずほPayPayドーム)。栗原が今季初めてスタメンから外れた試合だった。名前を挙げた2人からは「毎日いろんな話を聞かせてもらいますし、毎日違う話をさせてもらいます」とヒントをもらう日々。日本ハムにいた近藤と、西武にいた山川。「右中間にライナーで……」という意見は、2人とも同じだったそうだ。身近にいる超一流選手が、若鷹たちにも好影響を与えている。
4安打6打点で、三塁打が出ればサイクル安打を達成する状況だった。「ベンチで『僕まで回せ』みたいになっていたので、僕よりもすごく気合入っている声が出ていたので、ちょっと緊張しました」と苦笑いで振り返る。偉業のチャンスを与えようとしていたベンチからも、雰囲気の良さが伝わってくる。今季最多の貯金18。“くりうきょ”を筆頭に、ホークスはどこまでも走り続ける。
(竹村岳 / Gaku Takemura)