“育成の星”候補は「かわいいヤツ」 投げる球はかわいくない…恩師が語る18歳の魅力

ソフトバンク・藤原大翔【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・藤原大翔【写真:上杉あずさ】

育成ドラフト6巡目で入団した藤原大翔は自己最速を151キロに更新

“育成の星”の候補となっていきそうだ。地元・福岡の飯塚高から育成ドラフト6巡目でソフトバンクに入団した藤原大翔(はると)投手が頭角を現し始めている。

 177センチ、64キロと細身ながら体にバネがあり、身体能力の高い素材型右腕。飯塚高時代には最速149キロをマークした。高卒ルーキーの投手たちは新人合同自主トレ、春季キャンプと体作り中心に日々を過ごしてきたが、実戦デビューを果たすと、ポテンシャルの高さを見せつけ、周囲の評価も“爆上がり”している。

 4月後半に行われた3軍の韓国遠征中に初登板を果たし、5月2日の四国アイランドリーグplus・愛媛との3軍戦ではタマスタ筑後で初登板。真上から投げ下ろす投球フォームは迫力満点で、今季4試合の登板で自己最速を更新する151キロもマーク。入団時から「持ち味」と語っていた真っすぐの平均球速も上がり、体作りの成果で確実に成長を遂げている。

 中継ぎで2イニングを投げた同7日の四国アイランドリーグplus・香川戦では「初球ストライクを意識した」と、打者6人に対して、5人から初球ストライクを奪い、投手優位で対戦を進めた。2回をパーフェクトに抑え「指にかかっていた」という直球で4度、150キロをマークした。

 バッテリーを組んだ渡邉陸捕手にはチェンジアップを褒められた。「チェンジアップが結構いいから、振ってくるバッターとかは、低めにチェンジアップで落としたりしたら抑えれるよ」と声をかけられた。渡邉陸も「藤原めっちゃいいですよ。奥村(政稔4軍投手)コーチが絶賛していた理由が分かりました。すぐに2軍で投げられるんじゃないですか」と絶賛していた。

 この日は、藤原にとってはいつもと違う緊張感もあった。「今日は高校の監督が来ていたので絶対抑えてやろうという気持ちで投げました」。スタンドから見守ったのは飯塚高野球部の吉田幸彦監督だった。教え子の成長に、吉田監督も目を細めていた。

「投げ方が良くなっている。ああやって投げてほしいなと思って指導してたんだけど、なかなか上手くいかなかった。僕らが指導できなかった分は、やっぱりプロの指導者にきっちり指導してもらっていて、今はコンパクトに投げている。球自体も速くなっているし、コントロールが良くなってる。高校の時はやっぱり日によって良い時と悪い時との差がすごかったんですが、今日見た限りでは安定していますよね。まだフォアボールも出してないそうですし」

 嬉しそうにこう語っていた吉田監督は藤原を「可愛いヤツですよ」と表現する。入団時から今のところ、決してキャラ立ちするタイプではなさそうで「まだ猫かぶってます」と本人も“モジモジ”しながら照れ笑いしていたが、周囲にイジられる姿はよく見かける。藤原はどんな性格なのか、吉田監督に聞いてみると「まだ素直ですよ」と笑う。

「ただ、本領発揮したところまで、まだ僕らに見せていないんですよ。コロナとか色々あって、遠征とかもなかなか行けなかったんですよね。遠征とか行くと、やっぱり話す機会も多くなるんですけど、遠征にも全く行けなかったから。まだ本性が見えてないんです」

 吉田監督は、春季キャンプを見に来た時のことを「存在感が全くなかった」と振り返る。キャンプ中、高卒ルーキーの投手はトレーニングがメインで投げる機会はほとんどなかった。「うちのコーチと一緒に見に来たんだけど、アイツどこにおるかなって。『アイツ投げ始めないと存在感出ませんよ』って。やっぱり投げ始めたら『なかなかいいですよ』っていう話は聞くので」と笑う。

“投げてこそ藤原大翔”という個性が光り、普段のおとなしそうな性格とのギャップが面白い。「球筋っていうか、ピュッと来るボールの伸び自体とかっていうのは(教え子の中でも)ナンバーワンでしょうね」と吉田監督の期待も膨らむ。「わかっていても打たれないような真っすぐを投げたい」と描く。成長著しい18歳のこれからが楽しみだ。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)