育成投手は「伸び悩んでいる」 厳しい現状で評価した2人の左腕…倉野コーチ、単独インタ

単独インタビューに応じたソフトバンクの倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:荒川祐史】
単独インタビューに応じたソフトバンクの倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:荒川祐史】

単独インタビュー第2回…明かす「育成投手の現状」

 倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)が鷹フルの単独インタビューに応じた。第2回のテーマは「育成投手の現状」について。開幕前に野手3人が支配下登録されて、現在の枠は65人。投手を統括する立場から、背番号3桁の投手たちをどのように見ているのか。状態がいい投手として具体的な名前を挙げたのは、2人の左腕だった。

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 3月19日、仲田慶介内野手、川村友斗外野手、緒方理貢外野手が支配下登録された。春季キャンプで育成野手は3人がA組に抜擢されていたが、投手は中村亮太投手だけだった。キャンプ中に古川侑利投手や大竹風雅投手がA組登板のチャンスを掴んだものの、現在はともにファームでの調整を続けている。倉野コーチは「そこまでは行っていない」と切り出すと、3桁の投手陣について言及した。

「キャンプの時に1軍で投げていた投手はちょっと今、僕が考えているよりは伸び悩んでいるかなと思いますけど、逆にキャンプの時にB組にいた三浦や前田純が伸びてきているので、その差はなくなってきていますよね。育成の中では縮まってきているとは思いますけども。そこから抜け出てほしいですよね」

 ウエスタン・リーグで古川は7試合に登板して防御率3.60、中村亮は9試合に登板して2セーブを記録。キャンプ中に倉野コーチは「古川以外は物足りないように見えた」と評価したが、開幕して1か月以上が経った今は、育成投手全体を「伸び悩んでいる」と言う。一方で三浦瑞樹投手は主に先発として4試合に登板して1勝0敗、防御率1.08。前田純投手は6試合に登板して3勝1敗、防御率1.29など、2桁背番号をかけた競争は倉野コーチの目から見ても熾烈を極めている。

ソフトバンク・中村亮太、古川侑利、渡邊佑樹(左から)【写真:竹村岳】
ソフトバンク・中村亮太、古川侑利、渡邊佑樹(左から)【写真:竹村岳】

 小久保監督も育成の投手陣に「ランク付けってやっぱりするじゃないですか。これが大事。ランク的に育成選手の中でも(投手の必要性はチームとしても)上。一皮むけてファームで無双するのなら、大いにチャンスはあります」と語っていた。当然、倉野コーチの管轄は投手。だが、3月に野手3人を支配下登録させた時は、小久保監督とも意見を交換したそうだ。「もちろんです。投手と野手の枠の取り合いというか、割り振りがあるので。監督とも話をさせていただきました」とやり取りの一部を明かした。

 誰しもが必死に2桁を目指していることは、痛いほど伝わってきている。投手を預かる立場としても当然、大きな“親心”がある。

「僕の中では、早く投手を支配下にしたい気持ちはあります。それは常々、ずっと考えていますね」

 シーズンが開幕している以上、2桁を掴むには1軍の状態にも左右される要素がある。その上で「2軍で『これは絶対に1軍で抑えられるパフォーマンスだ』と評価すれば当然チャンスは来ます」と背中を押すが「ただ、現状そこまでは行っていないです」とキッパリ言い切った。チームも首位を走っているだけに、厳しい評価を突きつけた。

「そこまでは達していないです。達したとすれば当然、1軍に上がってくるチャンスがありますけど、まだそこまでの評価をあげられていないのが現実です。ただ、本当にチャンスはあります。5枠あるし、7月31日まで時間があるようでない、ないようでまだあるので。この1軍のレベルに追いついてくる人を僕は期待しています」

 昨季は67人で開幕し、たった3枠を争っていた。2軍監督だった小久保監督も「(モチベーションは)全然なかったです。みんな“諦め”です」と昨季の育成選手たちの雰囲気を振り返っていた。千賀滉大投手や、尾形崇斗投手、2桁を掴んでいく投手を何度も見てきた倉野コーチも「今しかないんじゃないですか? 5枠も空いている年なんてないですよ。目の色を変えて貪欲にやってほしいです」と力を込める。狭き門であることは、プロの世界なら当然のこと。諦めなかった投手にだけ、チャンスはやってくる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)