オープン戦途中で2軍降格になったあと、2軍できっちりと結果を残している。ここまで27試合に出場し、ウエスタン・リーグ2位の打率.386、出塁率.475をマーク。34安打はリーグトップだ。1軍に昇格してもおかしくない状態、成績を開幕から残しているものの、まだ1度もお呼びが掛かっていない。
1軍は首位を快走しており、近藤健介外野手、周東佑京内野手、柳田悠岐外野手と外野のレギュラー陣はきっちり結果を残しており盤石だ。外野のレギュラー陣の壁が厚いことは承知の上ではあるが、柳町にいつチャンスが巡ってくるのか――。そして、柳町本人はどんな思いで日々を過ごしているのだろうか。
2軍とはいえ、波なく結果を出し続けるのは簡単なことではない。3割以上、時には4割を超える高打率をキープしている柳町は「しっかり結果残せているっていうことはいいことかなと思いますし、いつ呼ばれてもいい準備をしておかなきゃいけないと思うので。その延長線上でいい結果が出てるかな」と、自身の状態に手応えを感じている。
今、意識するのは「いつ呼ばれても結果を出せるような準備をすること」。小久保裕紀監督は柳町について「アタマから出る選手」と語っている。現在、1軍の野手として控えている川村友斗外野手や緒方理貢外野手、仲田慶介内野手は走力やユーティリティな守備力を買われ“途中出場”が起用の中心となるメンバーたち。柳町は控えとして1軍に置いておくのではなく、レギュラー陣にアクシデントなどがあった際にスタメンで出るため、2軍で状態を維持、上げていくことを求められている。
小久保監督からも、その“役割”について説明を受けた。2軍に降格する際に呼ばれた監督室。「『1軍の後ろで出るタイプの選手じゃないんで、2軍に行って、1軍のレギュラー陣に何かあった時に』って。そうやって役割を言って頂いているので、こういう役割なんだなって思いますし。今のところは呼ばれていないですけど、いつ呼ばれてもいいような準備をしなきゃなとは思いました」。柳町自身も指揮官からの言葉をしっかり受け止めた。
もちろん、現状へのもどかしさもある。「1軍に行きたいっていう気持ちもありますけど、それはこっちが操作できる問題じゃないので。今は準備して、いい状態でいられるようにすることしかできないんで、僕には。そこをしっかりやっていこうって思っています」。悔しくないはずがない。それでも、求められている役割が明確である分、やるべきことに取り組んでいる。「レギュラーとして出るのが目標」という柳町自身の思いも強い。
なかなかチャンスが巡って来ない現状に「(心が)ブレることもありますよ」と本音も溢れる。そんな中で、柳町がモチベーションにしていることがあるという。2軍降格を告げられた際に、小久保監督からある目標を与えられた。「小久保監督から『4割打って来い』って言われたんで、今は4割目指して頑張っています。今ちょうど、もうちょいなんで。(4割に)乗せられるように、そこをモチベーションにやってます」。そう語る表情には笑みも浮かぶ。
途中出場の試合もある。2軍は選手育成の場でもあり、他の選手との兼ね合いで柳町も毎試合スタメンというわけではない。ただ、そんな日も柳町にとっては貴重な練習機会。松山秀明2軍監督は「なかなか代打の経験って少ないと思うので、こういう時にそういう経験をしておくことによって、彼にとってもプラスになるとは思うんですよね」と言う。
1打席で結果が求められる代打。その経験も決して多くはない中で、柳町も日々勉強している。
「(代打は)めちゃくちゃ難しいです。(スタメンで出るのと)全然違いますね。スタメンだったらスタメンの結果を出さなきゃいけないですし、最初がベンチスタートでも、いつどこで呼ばれるかわからないんで、試合展開を見ながら、ここらへんだろうなって予想しながら、頑張っていくしかないのかなとは思います。出ろと言われたところで結果を出すしかないんで、そこはもう別にいろんなことに対応できるようにやらなきゃなと思います」
「代打で行った時はできるだけ、初球からじゃないですけど、1打席しかないんで、1球1球大事に、しっかりスイング入れていくよう意識はしています。スタメンの時は、1打席目からチャンスの時もあれば、チャンスじゃない時もありますし、先頭だったりしたら、やっぱりピッチャーの球をじっくり見ながらとか、展開とかを読みながらっていう打席が多くなると思うんで、そこは代打とはちょっと違いますね」
1試合に4打席前後あるスタメンと、1打席に懸ける代打では、アプローチは全く異なる。柳町自身、その日その日で与えられる役割に応じて、意識を変えて試合に臨んでいる。
「チャンスが来た時には、ちゃんと準備してたことをしっかり出して、もうその流れでずっと1軍にいられるようにどんどん結果を出していきたいです」と心強い言葉を発する。見てくれている人はいる。応援してくれている人もたくさんいる。柳町の力が必要になるときが必ず来ると、みんなが信じている。