7回2死二塁で代打・中村晃が登場「基本的に来た球に合わせていく感じ」
さまざまな感情を全て、喜びに変える一打となった。ソフトバンクは27日、西武戦(みずほPayPayドーム福岡)で2-1でサヨナラ勝利した。延長10回に試合を決めたのは川瀬晃内野手。お立ち台に上がったが、値千金の同点打を放ったのが中村晃外野手だった。7回に試合を振り出しに戻すと、ベンチで一番に出迎えていたのが牧原大成内野手。代打を“出された側”の牧原大だが、自分の行動を「当たり前」とキッパリ言い切る。
相手先発は、今季西武の開幕投手を務めた今井。5回の攻撃前には円陣を組むも、6回を終えて無得点と苦しめられていた。迎えた7回1死一塁、甲斐拓也捕手の犠打で走者を得点圏に進める。ベンチは動き、牧原大に代打・中村晃を送り出した。「狙いは特には(なかったです)。基本的には来た球にしっかりと合わせていくという感じです」とクールに振り返るが、結果は右前に抜けていく同点打。最高の形で、チームに勢いをもたらした。
送球間に二塁にまで到達した中村晃は、代走に野村勇内野手を送られて交代する。全員が出迎えた中でも先頭にいたのが、牧原大だった。その理由を「当たり前じゃないですか!」と切り出し、悔しさを押し殺したような口調で語った。
「チームが勝つためなので、自分どうこうは言っていられない。チームが勝つことが、監督の言っていること。そこは切り替えていました」
昨年の出来事ではあるが、背中に死球を受けた次の打席で代打を送られて「正直、イラッとした。これで休んだら、それがまた響いてくるかもしれない」と話すなど、グラウンドへの執着は誰よりも強い。この日の同点打に牧原大は「もちろん誰が打っても嬉しいですよ」と話すにとどめたが、歓喜の輪に飛び込んでいった中村晃は「ああいう姿というか、喜んでくれるっていうのは一番嬉しいですよね」と率直に受け取っていた。
中村晃にとって、4月17日の日本ハム戦(エスコンフィールド北海道)以来、12打席ぶりの安打だった。主に代打としての出場が続いており、1打席にかける思いからか、感情をハッキリと表に出す姿が印象に残る。本人は「そんなことないですよ」としながら「最近打っていなかったので、なんとかしたいと思っていました。普通にヒットが出ていなかったですし、そこらへんの悔しさはありました。今日はたまたまですけど、もちろん打ててよかったです」と胸中を語る。
サヨナラ打を放った川瀬も、ヒーローインタビューで「裏で晃(あきら)さんと一緒に話していて『行ってくるわ』と一言。やっぱり先輩カッコいいなと思ったので、それに続けてよかったと思います」と明かしていた。ベンチスタートからチームを支える2人。ミラールームで準備を始める中村晃の姿に川瀬は「なかなか声はかけられない」と言う。「準備の姿とか、どういうことをやっているのか、相手のデータを見たりとかも細かくされている。そういう部分は、途中から出る身としてはものすごく勉強になる」と毎日が経験だ。
代打として11打数4安打と結果を残している中村晃。数字自体は「たまたまじゃないですか」というが「準備をしっかりとさせてくれる状況にしてくれているので、そこは若い選手よりは準備しやすくさせてもらっています。配慮してくれている感じです」と首脳陣に感謝する。「(具体的な指示を)言われていなくても『準備しといていい』と言われているので、大体5回くらいには準備はしています」とプロとして自ら考えて動いた結果が、この日の一打だ。
全員が繋いだチャンスを川瀬がひと振りで勝利に繋げた。「こういう場面で打席が来るのは緊張するんですけど、佑京さんが出て、先輩がしっかりと送ってくれて、勝ててひと安心しています」。試合に勝てば、どんな感情も報われる。牧原大がやり返すチャンスも、今度は中村晃がお立ち台に選ばれる日だって、必ず来る。
(竹村岳 / Gaku Takemura)