「選手の気持ちもわかるから」広い視野で考える広報の業務
選手時代に得た経験を次の世代の成長へつなげていく。昨季限りでホークスを戦力外となった重田倫明さんは、5年間の選手生活にピリオドを打ち、今年からファーム担当の球団広報として活動している。
重田さんは千葉英和高、国士舘大を経て、2018年の育成ドラフト3巡目でホークスに投手として入団。2022年にはウエスタン・リーグで44試合に登板して、7勝3敗4セーブ、防御率3.10の好成績を残したものの、選手最終年となった昨季は6試合のみの出場に留まり、2勝1敗、防御率3.95。シーズン終了後に戦力外通告を受けて球団職員へと転身した。
選手時代は東浜巨投手と自主トレを行うなど、常に高い向上心を持って野球に取り組んできた。そんな重田さんは今、広報としてどのような気概で仕事と向き合っているのか。また、自身も広報のルーキーとして、今年の新人たちにどのような印象を持ち、どのように接しているのかだろうか。
「正解がないのでなんとも言えないんですけど、選手にとってもやりやすい、メディアにとってもやりやすい、ファンの方にどう届けるのか、あと選手をどう見せるのか。なるべくウィンウィンな関係というか、信頼し合えるような関係を保てるような方法であったり、仕事だったりをしつつ、人との繋がりを大事にしたい。自分も人として成長しないと、広報として成り立たないだろうなと思うんで、自分も勉強したいっていう気持ちは継続しながらやりたいと思ってます」
重田さんはこう語る。広報の仕事はチームとメディアの間に入って、首脳陣や選手を露出するため、調整などを行う部署。メディアとの信頼を高めつつ、どうすればファンに喜んでもらえるのか、選手をどのように売り出していくのかを日々考えながら業務にあたっている。
「選手の気持ちもわかりますから。人を特別視とかはしたくはないんで、ルーキーだからとかはないんですけど、僕が同じルーキーだし、広報だし、接する時間は長いっていうのはある。それに関しては性格というか素性も知っている関係性ではあるので、やっぱり期待はしますね」。同じ1年目でもあるルーキーたちへの期待も溢す。
賑やかすぎる同級生…比較すると「真面目すぎ」
前田悠伍投手や岩井俊介投手ら、今年のルーキーたちの印象を重田さんはこのように語る。「みんな真面目すぎるなって思います。真面目ないい子たちだなっていうのは思います。僕の中で対照になるのは、同期になってしまうんですけど、泉(圭輔、現巨人)だったり、甲斐野(央、現西武)だったり、本当にアホやっていた選手を5年間見てきたので、そういうのを見てると真面目だなっていうのは特に思います」
重田さんは1996年生まれで、同級生には栗原陵矢内野手をはじめ、西武へ移籍した甲斐野など賑やかな選手が多い「96年世代」の1人。そんな同期と比べると、今年のルーキーはどこかおとなしく感じている。真面目であることはいいことでもあるが、心配もあるという。
「野球の結果云々に関係なく、もう少し楽しくやってもらいたいな、とは傍から見てて思ったりはしますね。悪い結果が残っても、その壁とかを楽しんでいるとかだったらいいんですけど、それが真面目で、閉じこもっちゃうとかにならないでほしいなと……」
選手である以上、調子によって気持ちの浮き沈みはあるもの。そんな状況すらも楽しめる選手であってほしいと、ルーキーたちへの願いを込める。「それがダメだっていうことを学んだり、何度も何度も繰り返したっていうのは自分の中でも経験あるので」。自身も5年間のプロ生活で経験してきたものがあるからこそ、壁にぶち当たっても、それを乗り越えることを困難だと思わずに取り組んでほしいと願う。
「ちょっとの心の拠り所であれたらいいなとは思うんで。(選手との年齢が)近い分、全く気にせずに、単純に人として心の拠り所になれればいいな、とは思ったりはします」。落ち込むような状況になった時には、“人として”仕事の範囲を超えてでも選手に寄り添っていきたい。そんな信念で、広報1年目に挑んでいる。
(飯田航平 / Kohei Iida)