わずか2打席での2軍降格にも悲観はしていない。ソフトバンクの正木智也外野手は、小久保裕紀監督からかけられた真っ直ぐな言葉を励みに次のチャンスに向けて再スタートを切っている。
2軍で一時は4割を超える打率をマークし、2試合連続本塁打を放ってアピールすると、4日のロッテ戦(PayPayドーム)で、負傷した三森大貴内野手に代わって1軍初昇格を果たした。だが、1軍にいられたのは11日間だけ。その間のチャンスは2打席のみ。15日には出場選手登録を抹消され、19日からは2軍で試合に出場している。
「なかなか使ってやれずにゴメン」
状態の良さを買われての昇格だったが、1軍のスタメンはほぼ固定されていた。展開的にも接戦が多く、なかなか正木にチャンスを与えることができなかった。そんな状況があっても、指揮官は詫びたのだという。真っすぐに伝えてくれた指揮官の思いに、正木は「ストレートに伝えてくれるので、信頼しています」と受け止める。
それと同時に小久保監督から「正木はアタマから行く選手」だとも言葉をかけられた。柳町達外野手同様、首脳陣は正木をスタメンで起用すべき選手だと考えている。現状は1軍のレギュラー陣は固定され、全員が日本代表クラス。スタメンでのチャンスがなかなか巡ってこないことは、百も承知で「アタマから行く選手でも、まずは途中から出て結果を出さないとチャンスは来ない」と正木は言う。
11日間の1軍生活で与えられた2打席で安打は生まれなかった。それでも「1軍に行ってからも、ずっとバッティング練習とかの調子はすごく良かった。結果は出なかったですけど、そんなに悲観している部分はないというか、今までやってきたことを2軍に来ても継続していきたいと思います」と語る。手応えはあるからこそ、今の取り組みを継続していくつもりでいる。
限られたチャンスで結果を出さなければ生き残っていけないのがプロの世界ではある。「感覚が良い」だけでは認められないのも正木は分かっている。限られた打席で結果を出すためにも「2軍ではスタメンで出ることが多いかもしれないですけど、1打席1打席、常に代打の気持ちで試合に挑みたい」と、1軍での打席を想定して、2軍の試合にも臨む。
「代打の練習もしていかないといけないなと思うので、ファーストストライクをしっかり振るとか、そういうのを意識していきたい」。1軍にいる短い期間でも、代打の難しさを痛感した。「『ここで行くぞ』とは言われるんですけど、準備の面で難しさもありました。ずっとベンチ内にいると、暗いところからいきなり明るいところに出たりとか、そういうの(見え方の違いなど)もあったり、中継ぎで出てくる投手だと、球が速い投手が多くて初球がファウルになってしまったり。そういうところが難しいなと思います」。
ただ、1軍には最高の手本が近くにいた。今季は主に代打として控える中村晃外野手だ。正木も中村晃が鬼気迫る表情で準備する姿を近くで見ていた。置かれた立場も、起用される状況も違うため、同じような準備ができるわけではないが、その姿は「もちろん、勉強になった」。戦況を見つめながら、心身の最高の準備を整える必要性を感じた。
また、同い歳の川村友斗外野手らから感じることもあった。現状、1軍はレギュラーがほぼ固定されており、ベンチメンバーに求められるのは守備力や走力の高さ。同じ外野手の川村は開幕から11試合に出場(23日時点)し、代走、守備固めを中心に出場機会を増やしている。
正木の売りは打撃だが、より一層、総合力を上げる必要性を感じた。「急に足が速くなったり、急に守備が上手くなったりするものではないですが、出来ることはあると思う」。まだまだシーズンは始まったばかり。この経験も糧にして、さらに進化した姿を見せてくれるだろう。