悔しさともどかしさが溢れ出た瞬間だった。4月7日に敵地・楽天生命パークで行われた楽天戦でのこと。この日、「1番・中堅」でスタメン出場していた周東佑京内野手が、思わずヘルメットをグラウンドに叩きつけ、感情を露わにした瞬間があった。
2連勝して迎えた楽天3連戦の3戦目だった。ホークスは3回に連打と犠打で作った1死二、三塁のチャンスで柳田悠岐外野手が2点適時打を放って先制に成功した。だが、そのイニング以外は走者を出せども、得点には結び付かず。逆に先発のカーター・スチュワート・ジュニア投手が4回に1点、6回にも1点を返されて同点に追いつかれてしまった。
試合はそのまま9回に突入した。ホークスは途中出場の緒方理貢外野手が楽天・則本から四球を選んで出塁。甲斐拓也捕手の犠打、牧原大成内野手の二ゴロで緒方が三塁まで進むと、ここで打席に入ったのが周東だった。1ボールからの2球目、外角高めの真っ直ぐを打ちにいった打球はグラウンドを転がり、二ゴロに。勝ち越しのチャンスが潰れ、一塁ベースを駆け抜けた周東は脱いだヘルメットをグラウンドに叩きつけた。
試合はその裏、ルーキーの澤柳亮太郎投手が楽天打線に決勝点を奪われてサヨナラ負け。試合後、小久保裕紀監督が「澤柳のせいじゃないよ。俺が守っていたら『こんな展開は野手のせいだから打たれることなんか気にせず、(甲斐)拓也のミット目掛けて思い切り投げろ』って言うだけなんで」と語ったように、11安打を放ってチャンスを再三作りながら、生かしきれなかった打線が敗因の1つだった。
数日経って、周東が“その時”を振り返った。「マジでムカついたんで、なんで打てないんだろうって。則本さんに対しては、打てると思った球が打てなかったんです。ミスショットでも、思うようなミスショットじゃなかった。それもありますし、あれだけピッチャーが頑張っていて、点が取れない中で、あそこで取っていれば勝ち試合でしたしね。そこに対して、自分にムカついたのが出ちゃいました」。自分への憤りが出てしまった。
今年から選手会長に就任した周東。チームをまとめる立場になったものの、グラウンド上では感情をあえて隠そうとはしない。「出そうとも、出さないようにともしていないです。人間ですもの。そこを我慢しているとキツイですし、溜め込まないようにしたいので、僕は。ムカつくことはムカつくので」。チーム防御率2.17と投手陣が奮闘している一方で、援護しきれない試合があるのも事実。野手としてのもどかしさ、申し訳なさももちろんある。
9日に熊本で行われた試合も周東は3安打を放ったものの、チーム全体としてはなかなか打線が繋がらずに10安打で2点しか奪えなかった。
「年間143試合あって、そういう試合は何試合かは絶対に出てくる。僕ら選手はそういう試合をいかに少なくできるかかなと思います。強いチームって1点1点(取って)いくのかなと思いますし、去年のロッテ戦とかそうですけど、序盤に僕らが点を取って、結局1点ずつ取られて最後やられるっていう試合もあった。序盤の4点なんてあってないようなもの。そこは野手が頑張らないといけない」
まだ開幕して10試合しか経っていない。1試合、1試合、もちろん反省や後悔もあるが、まだ「これからですよ」と周東は言う。長く険しいペナントレースは始まったばかり。良い時もあれば、悪い時も必ずある。周東は“周東らしく”、残る133試合を戦っていく。