3日のロッテ戦で中村晃が今季初安打…周東佑京が「本当に参考になる」と語る部分
ベンチスタートが続く日々でも、生き様の全てが後輩のお手本となっている。4月6日の楽天戦(楽天モバイル)後、小久保裕紀監督も「あの喜ぶガッツポーズの姿とか、あれを見て感じない選手がいたら人じゃないですよ。あのぐらいのものを持って、1打席に懸ける選手がベンチにいてくれるっていう強さは感じました」と絶大な信頼を口にしたのが、中村晃外野手の存在だ。代打としてチームのピースとなる姿に、周東佑京内野手も「本当に参考になる」と心からのリスペクトを語る。後輩目線から見る中村晃のすごさ、そして代打としてどんな準備を重ねているのかを単独取材で迫った。
今季は山川穂高内野手やアダム・ウォーカー外野手らの加入によって、開幕スタメンを逃すことになった。開幕5戦目、3日のロッテ戦(PayPayドーム)で初安打を記録した。久々に奏でた快音の感触を「やっぱりホッとしますね」とうなずく。画面越しですら伝わってくるほどの集中力にも「全部していました。しっかりと初球から準備できていました。今日はいい打席、アウトにはなりましたけど、いい打席3つだったと思います」と語る表情が中村晃らしかった。
6日の楽天戦では9回に代打で登場すると、チームに貴重な追加点をもたらす左前への適時打を放った。一塁ベース上では雄叫びをあげ、感情を爆発させた。「代打の時は1打席しかないんでしっかり集中していけたかな、と思います。しっかり1年間、いい姿を見せ続けられるようにしていきたい」。決意に満ちた表情が印象的だった。
小久保裕紀監督は3月中旬、オープン戦中盤を戦っていた中でウォーカーの開幕スタメンを明言した。中村晃もオープン戦中から「公式戦と同じように」と、準備には手を抜くことなく、シーズン同様に結果を求めてきた。ベンチから戦況を見つめる隣には、多くの若手たちがいる。中村晃自身は「自分の準備で、そんなに余裕はないです」と前だけを見つめているが、そんなベテランの背中を見ている後輩はたくさんいる。その1人である周東はこう語る。
「試合へのアプローチだとか、打席への向かい方とか、晃さんがやっていること自体は変わっていると思いますけど、根本的な入り方とか準備は変わらないのかなと思っています。むしろ、トレーニングとかやっているのかなと思います。増やしているのかなって見ていますけど」
3日のロッテ戦、延長10回2死から中村晃が中前打を放ち、打席に入ったのが周東だった。結果は、9球粘っての四球。キャンプ中から、1番打者として「打つ球を選んでいく」と出塁率に重点を置いた成果が表れた。開幕5試合を終えて、3つ目の四球に「いいと思います。10打席に1個くらいを目標にしているんです。10打席に1個を、年間通してできたら60とか70個になるじゃないですか」という。3月以降、周東と中村晃の2人が会話をするシーンは日に日に多くなっている。
ナイター開催の時、PayPayドームに来ても「晃さんの方が早いです」と“球場入り”は中村晃の方が早い。「暇なんじゃないですか? めっちゃせっかちなので、あの人」と笑いながら明かすが「あれだけヒットを重ねてきて試合に出てきた選手ですから。気持ちの持っていきようとか、技術的なこともそうですけど、参考になる部分は本当に多いです」と、頼りにしている先輩だ。周東も今季が7年目。準備の引き出しが確実に多くなる中でも、中村晃から教わっているものがたくさんある。
「利き手が違うので、バッティングの中で一緒のことをやろうとすると難しいんです。だから晃さんの考え方を聞きながら、やろうとはしています。晃さんがこんなふうに考えて1番に入っていた、とか聞きながら、それに近づきたい、近づいていけたらとは思っています。晃さんが見ている中で、どう感じているかとかは聞きながら。『こうした方がいい』っていうよりは『こうなっていると思うよ』っていう。晃さんから言われることはないですけど、自分から聞きに行っています」
中村晃のルーティンにも変化は表れている。代打での出場がメインで、打席数の確保がどうしても難しい状況を「どうしても(影響は)あるというか、普通に考えたら1打席なので。集中力を発揮できるように考えてはいます」と、今は1打席1打席が貴重だ。2日、3日のロッテ戦の前はアーリーワークにも参加。若手に混じってバットを振っていたのも「速い球のマシンがあるんです。打席が少なくなっているので、できることはやろうと思っています」と少しでも目を慣らしておくためだった。
薄暗いベンチ裏と、照明に照らされる打席。明度の違いを考えて、目の準備を大切にすることも「最初は意識したんですけど」としつつ「それを気にしても仕方ないというか、他にもっと自分にはやった方がいいことがある気がしたので。今は気にしていないです。5回、6回くらいまではベンチにいて、あとはしっかりと怪我しないように動かして備える感じです」と、出番までの流れを語る。目標は当然、確固たるレギュラーに返り咲くこと。自分自身の最善の準備を、中村晃自身も探している途中だ。
「(スタメンと代打の違いは)しっかりと自分のスイングができたかどうか。その打席を増やせるかどうか。結果はもちろあるんですけど、それを意識しています。準備はしっかりとできていると思います。あとは打席での、反省とか。そういうのをしっかりして、また次に備えるということは今のところできているかなと思います」
若手への意識については「そんな余裕はない」と首を横に振ったが、最善を尽くそうとする姿を後輩は必ず見ている。代打で登場するたびに、毎回のようにファンから大きな歓声が注がれる。「本当にありがたいです」。今は出番が限られているかもしれない。だからこそ、プロとして徹底的な準備をする中村晃の一瞬一瞬を、見逃してはいけない。
(竹村岳 / Gaku Takemura)