ド緊張の初対面…松坂大輔さんに感じた“怪物のオーラ” 大関友久が2月1日に質問したこと

ロッテ戦に先発したソフトバンク・大関友久【写真:荒川祐史】
ロッテ戦に先発したソフトバンク・大関友久【写真:荒川祐史】

2日のロッテ戦で7回無失点の好投…2月1日に松坂大輔さんからもらった助言とは

 特別な存在でもあるレジェンドから、アドバイスをもらった。ソフトバンクは2日、PayPayドームで本拠地開幕戦を迎えた。ロッテ戦に2-0で勝利。先発の大関友久投手が、7回無失点の好投で今季1勝目を挙げた。和田毅投手が左手中指のマメの影響で登板を回避。代役という形で、本拠地の“開幕投手”を託された。「どんな状況でも抑えるだけでした」。汗を拭った大関には、大切にする松坂大輔さんからの教えがあった。

 初回は3者凡退。2回は先頭の山口に二塁打を浴びたが、ホームは踏ませなかった。最大のピンチは7回1死一、二塁で愛斗の打球は三塁・栗原陵矢内野手のもとへ。二塁に転送したが、二塁手の牧原大成内野手の足がベースから離れてしまっていた。ロッテベンチのリクエストで判定はセーフとなり1死満塁。もう1段階、ギアを入れた瞬間だ。

「その(バックのミスを救いたい)気持ちもありましたし、とにかく試合に勝ちたいので、完全にスイッチを切り替えて、いい力を発揮できたのかなと思います」

 茶谷を2球の変化球で追い込むと、ラストボールは外角へのストレートだ。見逃し三振で「拓也さんの配球に感謝したいです」。中村奨を遊ゴロに仕留め、グラブを叩いて大きく吠えた。バックの助けはもちろん、自分の力でも勝ち取った白星になった。

 昨シーズンは開幕投手を託されながらも5勝7敗、防御率2.92に終わった。体調不良での離脱もあり、6月以降は1勝。大黒柱にはなれず、今年2月のキャンプも競争からスタートするという立場だった。球春到来の2月1日、向上心の塊である大関らしい行動に出た。取材に訪れていた松坂大輔さんのもとに、自ら足を運んだ。当然、進化のためにヒントを得たかったからだ。

「松坂さんの本を読んでいたんです。メンタルについて、ちょっと自分で色々と学びたいなと思って、その本を読み始めたんですけど、そのタイミングでちょうど松坂さんがいらしていた。直接本人に聞いてみようと思って、そんな感じです」

 大関が開いた本は、昨年に発売された松坂さんの自伝「怪物と呼ばれて」。和田毅投手のインタビューを終えて同級生の2人が談笑していた時、思い切って質問に行った。「勇気を出して、西田(哲朗広報)さんにも相談したりして。話を聞かせていただきたいですってお願いして」。松坂さんが記した言葉に触れてみて感じたことは、まさに人柄そのものだった。

「僕が思ったのは、悪い意味じゃなくて、いい意味で全て自分の責任だと思って何事も考えているなと思いました。上手くいかなかったことも『僕がこうだったから』って、置き換えて話されているので、全部自分のプラスに働くように、成長させる方向にされているなと。すごいなと思って、なんというか、器が違うなって。そういうのを自分も少しずつ頑張りたいなと思って、ご本人には『どういうことを考えてマウンドに上がられていたんですか』っていう、より具体的なことを聞きました」

ソフトバンク・大関友久【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・大関友久【写真:荒川祐史】

 聞いてみたかったのは、マウンドでの心構え。高校時代には甲子園で伝説を作り、日米通算170勝を挙げた右腕は、どんな答えをくれたのか。

「自分の中で気持ちの切り替え方とか、考え方とか。練習までは神経質に追い込んだりとか準備に神経を使ったりするけど、マウンドに上がったらもう開き直る。逆に楽になるくらいの気持ちでっていうのが松坂さんからいただいたアドバイスでした」

 試合のマウンドに上がるまでは、徹底的に準備する。だからこそゲームの中では余計な考えは必要ない。バッターとの勝負とチームの勝利に集中することが大切だと教わった「『楽しめたら最高だけど』とおっしゃっていました。なかなか楽しむっていうのは簡単にはできないと思いますけど、それくらい準備は真剣に頑張ってマウンドで開き直るっていう感じです」。抜かりのない準備をするのは、それがプロだから。試合を楽しもうとするのは、野球が大好きだからだ。

 現役時代は野球ファンの記憶にも、数々の記録も残した松坂さん。話してみるまで面識はなく「緊張しましたね……」と苦笑いする。それでも「WBCに松坂さんが投げられているのは見ていましたし、1人の野球人として大好きな選手の1人なので。特別な気持ちはありました」と、野球選手としての気持ちを抑えずにはいられなかった。実際に松坂さんと会ってみて感じたのは、栄光も挫折も味わった人にしかないようなオーラだった。

「すごく朗らかで優しい人だなと思いました。僕がそんなふうに言うのもおこがましいんですけど、いろんなことを経験されてきたんだろうなっていうのが伝わるくらい、どっしりとしたというか。こういう人がすごい道を歩んできたんだなって思いました」

 ローテーションを再編した影響を受けながらも、見事に結果で応えてみせた。「ホームの開幕戦、小久保監督のホーム1試合目でもありましたし、大事な場面でこういうピッチングができたことは自信になります」。今季が5年目の左腕。目標に向かって真っ直ぐと進む大関の言葉と姿にも、いつかきっと風格がついてくる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)