23日の広島戦後に行われた決起集会…津森宥紀、川瀬晃が語る舞台裏
なぜ、自分のユニホームではなかったのか? おっちょこちょいというわけでもなく、真っ当な理由だった。ソフトバンクは23日、広島とのオープン戦(PayPayドーム)を終えた後、ファンの方々との「決起集会」が行われた。センターに用意された壇上に立ったのは選手会長の周東佑京内野手、栗原陵矢内野手、津森宥紀投手の3人。目線を集めたのは、周東が背番号0番、川瀬晃内野手のユニホームを着ていたことだ。
スタンド、グラウンドにまで多くのファンで埋め尽くされた。選手の応援歌などが流れ一体感が生まれた後、最後にマイクの前に立ったのが周東だ。「リーグ優勝、日本一になることがファンの皆さまへの恩返しだと思っています。絶対に優勝して、ここで皆さんと大騒ぎしたいなと思います」と呼びかけると、大きな拍手と歓声に包まれた。「今シーズンも応援、よろしくお願いします!」と挨拶を締め括っていた。
選手会長になったことで、これまで以上に人前に立ち、発言する機会が増えた周東。なぜこの日は、自分のものではなく、川瀬のユニホームを着ていたのか。
ソフトバンク・津森宥紀、周東佑京、栗原陵矢(左から)【写真:球団提供】
「ランドリーに出して、ユニホームがなかったんです」
選手は試合や練習を終えると、着用していたユニホームやTシャツ、ジャージを洗濯に出す。1か所にまとめられた洗濯物を業者が回収して、洗って、綺麗にたたまれた状態で選手の手元に戻ってくる。これが毎日のルーティンだ。この日は広島戦でフル出場したこともあり、すでにランドリーに出してしまっていたよう。「必要最低限のものしかなくて、たまたま晃(ひかる)がいたから借りました」と背景を明かした。
貸した側の川瀬も「佑京さんがランドリーに全部もう出してしまっていたので、サイズ的に僕のが合うかなと思って『晃、貸して』って言われました」と言う。ファンにとって、周東が川瀬のユニホームを着ていたことが注目を集めたことも「確かに、そこ気になりますよね」と理解して、ニッコリ笑って舞台裏を教えてくれた。
ユニホームは毎年、微調整も含めて新調される。このシーズン前こそ、ヘルメットなど新しい用具が選手のもとに届く時期だ。周東も「1回ロッカー、荷物を綺麗に整理しようと思って全部を片付けていたので、ユニホームもまた新しくなりますし。試合で使う分だけでいいと思っていました」と、ユニホームの枚数も含めて整理整頓したという。思わぬタイミングで自分以外のユニホームを着ることになったが「全然大丈夫ですよ」とケロッとしているところも周東らしかった。
同じく壇上に上がったのが、周東にとって2歳年下にあたる津森。「嫁からは『ホークスの顔の2人と並べてよかったね』って言われて、ああ確かになと思いました」と家族とのやり取りを明かす。周東と栗原はグラウンドの外でも関係の深いコンビで、津森も「1人だけちょっと浮いていましたね……。(その2人と一緒にいると)自分がイジられていましたね」と苦笑いする。
津森は周東とも栗原とも食事をしたことがあるそう。意外な繋がりだったが、津森は「今宮(健太内野手)さんにお世話になっている」と言う。「そこでクリさんもいたり、周東さんもいたり、晃(川瀬)もいたりするんです。だからピッチャーはいつも自分だけです」と“今宮組”の延長で周東らとも食事をする機会が多かった。2歳年上の周東の人柄も「優しいですし、そんな気を遣わずに気軽に話せるって感じです。試合で投げ終わったらいつも声かけてくれますよ」と表現する。
川瀬のユニホームを着ていた周東について、津森は「(自分のものが)『ないから出やんわ!』って冗談で言っていましたけど、あの人が出ないといけないですよね(笑)」と笑顔で明かす。昨秋の選手会長就任から誰よりも自覚を持って過ごしてきた周東。後輩の前では笑い飛ばすところも、周東なら少し想像できてしまう。
(竹村岳 / Gaku Takemura)