支配下登録の“前祝い”になった。19日に川村友斗外野手、緒方理貢外野手、仲田慶介外野手の3人は念願だった2桁の背番号を勝ち取った。その数日前、本拠地PayPayドームでの試合後、緒方と川村は井上朋也内野手とともに“ある先輩”に誘われて食事に出かけていた。
3人を食事に誘ったのは大先輩の柳田悠岐外野手だった。緒方は突然の誘いをこう明かす。「『今日何しよん?』って感じで、ご飯行こうってなって、行かせていただきました」。緒方にとって、柳田との食事は初めて。「本当にもう、いつものギーさんって感じで、優しかったです」と、その夜のことを感慨深げに振り返った。
「ギーさんとは行ったことはあるんですけど、川村さんと緒方さんは初めてですね」と井上は語る。初めてのメンバーだったが、「普段から仲が良いので、変わりなく」。同じ雰囲気で食事と会話を楽しんだそうだ。ただ、そんな「ギータ会」の直前、柳田を慌てさせたのが、川村だった。
「カニのコースに連れて行ってもらったんですけど、僕だけ違う料理を出してもらいました」
緒方同様、川村に声がかかったのも試合前の練習中だった。「『今日、試合終わったら行くぞ』って言われて」。急な誘いに驚いた。柳田自ら、店の予約をしてくれていた。試合が終わり、その店に向かう道すがら、柳田は川村にこう尋ねた。「食べれないものある? ないっしょ?」。川村は申し訳なさげに答えた。「あのボク、エビ、カニがダメです」。
実は、川村は甲殻類にアレルギーがあり、カニを食べることができなかった。それを知った柳田は「マジで!?」と驚きつつ、すぐさま「電話するわ!」と店に連絡。川村だけ別のメニューに変更するように、お願いしてくれたという。
川村自身が甲殻アレルギーがあることを知ったのは、大学に入学する直前。「大学で寮に入るので『一応調べておいて』って言われたので、調べてみたら、アレルギーがあるって結果が出たんです」。以前はカニを食べたことはあったが、その結果を知って以降、口にすることはなくなった。
「みんなは、カニのしゃぶしゃぶとか、刺身を出されていて、僕は海鮮丼でした。めちゃくちゃ美味そうでした……」。3人の食事を羨ましがる川村だったが、柳田との初めて共にした食事は忘れられない思い出になった。
「最初は緊張したんですけど、テーブルじゃなくてカウンターだったので、普通に食べていました、僕だけ違う料理を」。緊張からスタートしたが、普段と変わらずに接してくれる柳田のおかげで緊張はほぐれた。「裏表がない人なんだなと思いました」。グランド外で初めて見る柳田の素顔は、普段の球場と変わらなかった。
野球の会話はほとんどなかったが、そこも“柳田らしさ”。川村、緒方は19日に支配下契約を結び、晴れて背番号は2桁になった。緒方と川村にとって、支配下登録の前祝いのような、思い出深い食事になった。