「できないと思っていた」 周東佑京の新境地…中村晃からもらった助言と“極意”

ソフトバンク・周東佑京【写真:竹村岳】
ソフトバンク・周東佑京【写真:竹村岳】

春季キャンプを振り返っても「振っている感じは悪くないです」、打撃面の新たな手応え

 確かな手応えを得た。打撃スタイルにおいて“新境地”に飛び込もうとした1か月だ。ソフトバンクの周東佑京内野手は、春季キャンプを振り返り「感覚自体も、振っている感じも悪くないです」と言う。レギュラーを奪うために、明確な課題である打撃面。克服しようと助言を求め続けていたのが、中村晃外野手だった。

 周東は2024年から、新たに選手会長を務めることになった。序盤は人前に立ち、発言する機会も多かっただけに「行事みたいなものも多かったですしね。引っ張っていくには周りを見た方がいいのかとか思いました」。キャンプ後半、実戦が本格化してからは「前半は意識しましたけど、後半はあまり意識しなかったです。自分のことをしっかりやろうとしていましたし、いつも通りでした」と、自然体でいられる時間も増えていった。

 2023年は打率.241、2本塁打、17打点。9月、10月の2か月間で打率.330を記録するなど、進化のきっかけを掴んだままシーズンを終えた。年が明け、2月のキャンプ中も「結果はそんなには求めていなかったです。めちゃくちゃ結果が欲しいというわけでもなく」と、取り組んできたことが内容に表れるようにアプローチしていたようだ。自分の「走力」こそが最大の武器であると理解しているだけに「塁に出られるように」と何度も繰り返してきた。だからこそ、中村晃の言葉に耳を傾けていたという。

「そんなには(打席内のアプローチは)変えていないですけど、1番(を打つ)なら(球を)選んでいくというか、そういうふうに考えた方がいいとは思っていました。そこは色々と考えながらです。晃(中村)さんにも聞いたり、どんな感じでやろうかなとは今考えています」

 キャンプ中の実戦形式では途中出場もあったが、スタメン時は1番を託されることが多かった。自分なりにリードオフマンとしての役割を考えた時に、積極性とじっくりアプローチする打撃を使い分ける必要性を感じたそうだ。「うまくバランスを取りながら、いくところはいかないといけないですし。塁に出てほしいところも絶対にありますし、待ちながらというか。しっかり見ながらという感じでした」と、難しい“両立”を語る。

 周東は通算打率.246に対して、同出塁率.301。1234打席で80四球と、打つ球を選ぶというよりも積極的にバットを振っていくスタイルでここまでのキャリアを積んできた。一方で、中村晃は通算打率.279、同出塁率.364。2016年にはシーズンで出塁率.416を記録、常に勝負どころで集中力を見せるなど求められる役割に対応して自分だけの居場所を掴んできた。振り返ってみれば、周東は中村晃のような打撃を自分から遠ざけてしまっていたと言う。

「できないと思っていたんです、自分が晃さんみたいなそういうバッティングを。色々と考えながら、待ちながらというのができないタイプのバッターだと思っていたんですけど、去年の後半とかは意外とそれができていた。球を選びながら。その時期(昨シーズン終盤)に色々とできるんだなと思うこともありました」

 淡白さと、積極性は紙一重。打撃面の“永遠のテーマ”だからこそ、中村晃からヒントを得ようとしている。「初対戦の時は振っていくことで合わせていけばいいんじゃないかとは言われました。逆に、去年対戦したことがある投手だったらどういう攻められ方をするのかもある程度はわかっているので、そういう時にどういう対処ができるか、とか」。考えを整理して打席に立つ。言葉にすれば単純なことかもしれないが、それを打席の中のアプローチでしっかりと表現できるようになってきた。

 中村晃の視点からはどうだろうか。「あいつはいつも言います。『今日ダメです』みたいな」と笑いながら明かす。その上で「その時の状態、佑京のバッティングを見て、どうなっていますか? っていうのを聞かれて、こうなっているんじゃない? って答える。先頭打者としての、1番バッターとしての、初回の打席の入り方はポロッとどうやったらいいですかみたいな話はしました」。中村晃から周東に伝えた1番打者としての“極意”があった。それは別述する。

 オープン戦がスタートして周東は打率.182。「あとは実戦に入って、力が入った球が来た時にどう落ち着いていけるかとは思います」と、練習と実戦は全くの別物であることを踏まえ、本格化する競争を見据えていた。球界屈指の俊足に、中村晃のようなバッティングがついてくれば――。周東の試行錯誤も、打破していこうとする努力にも注目したい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)