昨オフの退団は「寂しかった」 敵として再会…中村晃が語る「嘉弥真やな」の意味

試合前に会話するヤクルト・嘉弥真新也(左)とソフトバンク・中村晃【写真:竹村岳】
試合前に会話するヤクルト・嘉弥真新也(左)とソフトバンク・中村晃【写真:竹村岳】

嘉弥真新也と中村晃の対戦…右前打を放ち「かわしてくると思ったので冷静に」

 ソフトバンクは5日、ヤクルトとのオープン戦(PayPayドーム)に5-4でサヨナラ勝利した。1点を追う9回に2点を奪い、春季キャンプからの対外試合の連勝は「7」に伸びた。得点には繋がらなかったが、福岡のファンの注目を集めたのが8回だった。ヤクルトの嘉弥真新也投手が登板。先頭打者として代打に送られたのが、同じ1989年生まれの中村晃外野手だった。

 内角球を見逃して、まずは2ボールと打者有利のカウントを作る。1球ストライクを見逃し、4球目だった。低めのボールを引っ張ると、打球は速い球足で一、二塁間を抜けていった。ホークス時代には紅白戦でも対戦を重ねていたそうで「結構打っていますよ」と胸を張る。“左キラー”として活躍した球友は、今季から敵となった。1人の投手として対戦してみて「ガツガツ打ちに行くとやられると思った。そういうタイプの投手ですし、かわしてくると思ったのでそこは冷静に行きました」と、知り尽くしていることをきっちりと結果に繋げてみせた。

 2007年ドラフト会議で3位指名され、帝京高から入団した中村晃。4年後の2011年、5位指名で入団したのが嘉弥真だった。2人が1軍に定着したのは2013年。中村晃が131安打を放ち、嘉弥真も40試合に登板した。ともにホークスを支えた球友との対決だが、漏らしたのは意外な本音だった。

「『嘉弥真やな』っていう感じでしたけど、そんなに余裕はない。1打席だったので、ヒットを打ちたいなと思って。先頭だったので、そんな感じです。試合のことを考えていたので、嘉弥真だからっていうのは考える余裕はなかったです」

 この日は、小久保裕紀監督からレギュラー起用を明言されている近藤健介外野手が侍ジャパンへの参加で不在。ベストメンバーではない布陣の中、中村晃はベンチスタートだった。指揮官は「晃(中村)を最初から代打の切り札として取っておくって話を晃にした」と意図を説明したが、だからこそ、レギュラーを目指す中村晃にとっては「あの時は1人の相手として結果を出さないといけなかったので、それどころではなかった」というのだ。

 嘉弥真は通算463試合登板のリリーバー。昨オフの戦力整備で構想外となり、ホークスを去ることになった。「寂しいのは寂しかったですけど、元気でやっていますから嬉しいです」と、福岡で再会できたことを喜ぶ。同期入団&同級生の岩嵜翔投手(中日)も含めて「同級生ですからね」と横の繋がりが強い1989年組だった。「結果的に楽しかったですけどね。打席に向かう時に嘉弥真の曲が流れているなって思いました」と、耳に飛び込んできた曲すらも懐かしかった対戦。今回は、中村晃の勝ちだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)