3日遅れとなった実戦初登板「ワクワクしながら投げられました」
待望の実戦初マウンドだった。3日にタマスタ筑後で行われた春季教育リーグのオリックス戦。2点をリードして迎えた9回、ホークスの5番手として登板したのはドラフト5位ルーキーの澤柳亮太郎投手だった。プロ野球選手として初めて上がった対外試合でのマウンド。わずか9球、3者凡退で試合を締めくくり「緊張というよりかはワクワクしながら投げられました。本当にホッとしました」と安堵の笑みを浮かべた。
「ストライクゾーンで勝負することを意識しながら、カウントを早めのうちから追い込むっていうこと、決め球で三振を取ることを意識していました」。先頭の山中を2球で二飛、続く元も2球で二飛に打ち取った。最後の平野は縦変化のカットボールで空振り三振。堂々たる投球でデビュー戦を終えた。
「ちょっと力み過ぎたんで、次からちょっと改善していきたいなと思います。初登板の意味も込めて(今日は)70点ぐらいです」と、澤柳本人としてはまだまだ納得いく内容ではなかったよう。それでも、松山秀明2軍監督は「すごいですね。バッターに圧をかけるピッチャーというか、そういう意味では力強さを感じた。期待大ですね」と絶賛だった。
1月の新人合同自主トレで左膝の違和感を訴えて出遅れた澤柳。大卒・社会人ルーキーでただ1人、そして新人投手でただ1人、キャンプインを筑後で迎えた。「同期のピッチャー全員が宮崎に行っていたので、悔しい気持ちだったりとか、ものすごいハングリー精神は養えたかなって思います」。1人出遅れた悔しさを胸に抱きつつ、リハビリ、体作りに取り組んだ。
「自分の中で筑後にいる理由っていうのが明確に決まっていたので、そこは焦らずやれた。そういう意味でもいいキャンプを送れたのかなと思います」。ようやく宮崎行きを手にしたのは、キャンプも最終盤になってから。B組キャンプの最終クールが始まった27日に宮崎に合流した。29日に行われるはずだった練習試合で実戦初登板を踏む予定だったが、雨のために中止に。この日に“デビュー”がずれ込んだのだった。
ただ、わずか3日間だけでも、同期と同じ宮崎の地で練習できたのはいい時間になった。「悔しい気持ちがあったんですけど、3日間だけでしたけどキャンプを味わえたので、宮崎に行けて良かったなって思います」。ドラフト2位の岩井俊介投手はオープン戦にも帯同。ルーキー同士の競争の中に、澤柳もようやく加わることができた。
初登板でルーキーらしい初々しさもあった。タマスタ筑後での試合では、試合が終われば、選手たちは一塁線上に整列し、声援を送ってくれたファンに挨拶をすることになっている。ただ、澤柳はその流れが分からずに右往左往……。「社会人の時は終わったら整列するんで、整列しようとしちゃってて。どこで整列するのかなと思って探してたら、後輩たちが『何してるんですか?』っていう感じだったので……。これから気をつけます」と苦笑いだった。
この日の実戦初登板では武器であるカーブを使わなかった澤柳。「追い込んでから(カーブを)投げられたと思うんですけど、まずはストレートっていう風に意識して投げていたので。カーブはまた次の機会に投げようかなと思います」。まだまだ引き出しも残されている。出遅れたものの、そのポテンシャルは高い。澤柳のこれからに期待したい。
(取材・米多祐樹 / Yuki Yoneda)