森唯斗が「大好き」…今宮健太の心からの“本音” 親友との対戦で抱いた特別な感情

ソフトバンク・今宮健太(左)とDeNA・森唯斗【写真:竹村岳】
ソフトバンク・今宮健太(左)とDeNA・森唯斗【写真:竹村岳】

今宮健太vs森唯斗…チームリーダーだった2人の対決に「思いっきり振っていこうと」

 親友との対戦に、特別な思いを抱いて打席へと向かった。何度も助けてもらい「大好き」だと心から言える関係性だ。ソフトバンクは2日、DeNAとのオープン戦(北九州)を戦い5-3で勝利した。同点となる一打を放ったのが、今宮健太内野手だ。昨季までチームメートだった森唯斗投手からの快音に「あの打席だけは特別感を持って」と振り返る。敵同士にはなったものの、2人だけの尊い関係性がグラウンドから溢れていた。

 4回に古川侑利投手が2点を失い、先制される。その裏から、森唯が登板した。先頭の近藤健介外野手が左前打を放ち、続く山川穂高内野手が左中間への二塁打で1点を返す。その後2死三塁となり、今宮の出番だ。1ボールからの2球目、変化球をバットの先で拾うと打球は中前に弾む適時二塁打となった。「ああいった場面でしたし、あの打席だけは特別感を持って、思いっきり振っていこうと思っていました」――。

 今宮にとって森唯は、1991年世代の同級生。入団こそ今宮の方が4年先ではあるが、成長に比例してお互いがチームリーダーになり、高め合ってきた2人だ。「昨日(1日)、本当にちょっとだけ会ったので、明日投げるというところで」と、対戦するチャンスがあるかもしれないとは思っていた。今季から敵同士として戦うことになってしまったが、今宮は森唯を「親友」だと表現する。

「僕としてはすごく思い入れというか、親友だった。ああいった形で早くも対戦する機会があるとは思っていなかったですね。あんな感じのヒットでしたけどしっかりと振っていこうということだけは思っていました」

 チームメート同士が対戦するなら、春季キャンプ中の紅白戦くらいしかチャンスはない。今宮は「あんまりイメージないですね」と、鮮明な記憶としては残っていない様子だった。親友が“勝たなければならない相手”となり、放ったこの日のタイムリー。二塁上から森唯の表情を確認したが「見たんですけど、唯斗も真剣だったので。あれだけ今日はボコボコいかれてしまって。まあ、やられて良くなっていくタイプだと思うのでこれからだと思います」。グラウンドの真剣勝負の場で、2人にしかない時間が確かに流れていた。

 今年1月、今宮の自主トレ先にまで森唯が足を運んでくれた。「バッピ(打撃投手)をやってくれましたね」と、2か月前のことだが懐かしそうに振り返る。オフとはいえ、現役選手が打撃投手を務めるのは異例。心を通わせる2人だから実現した瞬間だった。SNSでも今宮は「唯斗大好きやで」と関係性を表現していたが「それも冗談抜きで常に思っています。野球の中でも、プライベートの中でもいろんなところで助けてくれたのが唯斗だった」と、心からの本音だった。

 長年、ブルペンを引っ張ってくれた親友は昨年10月に戦力外通告を受けて、ホークスを去った。投手陣のリーダーがいなくなったことで、今宮も「投手に関しては唯斗の存在は大きかったと思いますし、いなくてはならない存在だったと感じています」と目線を下げて語る。森唯にとっても移籍1年目。「あいつもあいつで勝負の1年ですし、僕も違う形で勝負の1年になる。お互いに、その気持ち1本でやりたい」と、刺激に変えていかないといけないことは2人が一番よくわかっている。

ソフトバンク時代の森唯斗(左)と2軍監督時代の小久保裕紀監督【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク時代の森唯斗(左)と2軍監督時代の小久保裕紀監督【写真:上杉あずさ】

 小久保裕紀監督にとっても、2軍監督時代から目をかけてきた選手の1人。昨年10月のファーム選手権では先発を任せたほど、信頼の厚かった投手だ。試合後、正面玄関で出くわすと「複雑な気持ちで見てたわ! 抑えろとも思いながら、複雑やったわ!」と大きな声で呼びかける。2月の春季キャンプ中から対外試合5連勝となったが、この日は森唯が3回5失点で敗戦投手。シーズン中なら結果が全てだが、オープン戦であることもまた指揮官の気持ちを少しだけ曇らせていたみたいだ。

 森唯も昨年は1軍で6試合登板にとどまる。2軍で過ごす時間が長かったにも関わらず「小久保裕紀さんを胴上げしたい」と、モチベーションは失うどころか上昇気流を描き、後輩に背中を見せてきた。この日も試合前からグラウンドに出てきてホークスナインと再会。試合後も、球場の外にいたホークスのスタッフに「ありがとうございました!」と声をかけるなど、律儀な姿勢は何も変わっていなかった。

 1軍で会うには、お互いの結果が必須。今宮も「(次に)やるならもう交流戦になる。僕自身はまずは開幕でレギュラーを取ることを目標としてやっています。唯斗自身も、開幕ローテーションを目指してやっていると思うので、先々でもし対戦する機会があれば、願ってもないことだと思います」と見据えた。今季のDeNA戦は6月7日から横浜での3連戦。ともに過ごした日々の先、必ず1軍で親友と再会したい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)