倉野信次1軍投手コーチの指示で、全球ストレートの30球で終了した
高卒ルーキーらしからぬ立ち振る舞いだった。ソフトバンクの宮崎春季キャンプは22日、第5クール3日目を迎えた。この日ブルペンで注目を集めたのは、今キャンプ3度目のブルペン入りとなったドラフト1位ルーキーの前田悠伍投手。まだキャッチャーを座らせることなく、状態やバランスを確認しながらの投球だったが、これまでにはあまり見られなかった球がバラつくシーンが多くあった。
「状態的には別に良かったですけど、体が横振りになってボールが横にズレてたので、そこが課題ですね」
この日の前田悠は投げた瞬間に帽子の脱げる場面が何度も見られた。力を込めての投球ゆえのことかと思われたが、実際には違った。「頭を振ってしまっていたので。それが今日は出ていたので、ちょっとダメでしたね」。帽子が飛ぶことは、自身の“悪い癖”が出ている時であると明かした。
これまでとの違いを感じたのは前田悠だけではなかった。倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)と、ボールを受けた樋越優一ブルペン捕手も変化に気がついていた。「キャンプが始まってから僕はずっとキャッチボールをしてるので」と、いつもと球筋の違いを感じた。
「少しカットというか、引っ掛けていたので、倉野コーチも『どうだ?』みたいな感じでした。あとはバランスとか並進運動の方向がおかしいから、というところでした」と樋越ブルペン捕手は倉野コーチとのやり取りを明かす。それぞれが感じていた前田悠の変化と、実際にボールを受けた時の感覚を擦り合わせたという。
倉野コーチの指示で投球練習は30球で終了となったが、この後に、前田悠が並の高卒ルーキーではないと感じる出来事があった。「普通だったら『あぁ……』ってなるんですけど『これが悪い時の自分です』って終わった後に言ってきた。そこは凄いなって思います。自分のどこが悪かったか、分かっているんじゃないですか」と樋越ブルペン捕手は語る。その日のコンディションを冷静に把握できていることに驚き「他のルーキーとは違いますね。高校生ではないですね。彼は考える力をちゃんと持っているんだなって思います」という。
「今日は悪かったというか、あまり良くはなかったですけど、良いボールもあったのでそれを踏まえたら良い状態ではあるんじゃないかなと。ちょっとの修正をしたら普通になると思うんで、全然調子はいいと思います」。まだ出力は8割ほど。秘めるポテンシャルの高さはもちろんだが、“今”の状態を把握する力も高校生離れしている。
プロで初めてのキャンプもいよいよ終盤に差し掛かってきたが、「疲れはあまりないです」と順調にキャンプを過ごせていることに笑顔を見せる。「何回っていうのは決まってないですけど、あと数回は入ると思います」。どう修正し、次のブルペンでどんな投球を披露するのか。ドラ1ルーキーの“変化”から目が離せない。
(飯田航平 / Kohei Iida)