制球が課題の杉山一樹を好リード…「練習からできることがある」
乾いた捕球音が響き渡る。培ってきた地道な努力が、形になった瞬間だった。ソフトバンクは11日、宮崎・生目の杜運動公園で行っている春季キャンプで第3クール3日目を迎えた。シート打撃では、杉山一樹投手が打者7人に対して1安打も許さない快投が際立った。見守った小久保裕紀監督も「球の力はホークスでもトップクラス。あれだけストライク先行で投げられたら」と目を細める。そして、その投球を支えたのは、バッテリーを組んだ谷川原健太捕手の“フレーミング”だ。
杉山は昨季、右肘の故障などの影響で1軍登板なし。2022年は25回1/3を投げ31四球と、制球面に課題があることは明白だった。昨年10月の「みやざきフェニックス・リーグ」で復調の兆しを見せ始め、2軍で指揮を執っていた小久保監督からも「大いにチャンスはあると思います」と評価されていた。
この日、対戦した打者の中で唯一、三振を奪った相手が山川穂高内野手だった。2ボール2ストライクと追い込んだ5球目、外角のフォークに手を出させずに見逃しの三振。見送った山川のリアクションからもボールと判断したことが伺える場面だった。投げた本人である杉山も、谷川原のキャッチングに頭を下げて感謝する。
「投げた瞬間、ボールかと思いました」
投じた球数は24球。制球に課題があることを自身も口にする杉山だが、14球がストライクとボールの数を上回った。谷川原のリードや構え、捕手としての全てにも導かれて「キャッチャーのフレーミングが良かったですし、投げやすかった」とうなずいた。杉山が発揮した能力はもちろん、バッテリーとして残した結果だった。
谷川原がリードした投手は3人。どの投手もストライクが先行し、常に有利なカウントを作り出すことができていた。だからこそ、打者23人に対して許した安打はわずか4本だけという投手陣の結果に繋がった。
1月に大牟田で行った自主トレからフレーミング技術の向上を課題に取り組んできた。重たいボールを用いての練習であったり、いくつものドリルに時間を割いた。それでも、「なんか今日はあんまり自分の思うような……。ブルペンだといいですけど、ランナーがいるとちょっと難しいなっていうのは感じました。もうちょっと助けられたなっていうのはありますね」。手応えを感じる一方で、まだまだ自身が納得のいくキャッチングには至っていないという。
「もうちょい下から(ミットを)入れられたかなっていうのはありますね。バッターも立って、ピッチャーも抑えにきた球で、ランナーもいるってとこで、もっとできるなっていうのはあります。練習から意識できるなっていうのはあります」。次の実戦に向けて、取り組むべき課題が見つかったことも良い収穫になった。自身のフレーミング技術がチームのピンチを救うと信じて、今後も谷川原は課題と向き合っていく。
(飯田航平 / Kohei Iida)