B組恒例の1分間スピーチ「先輩の行動を見て学んだいきたいと思っています」
これもホークスの“洗礼”だったのかもしれない。ソフトバンクは11日、宮崎の生目の杜運動公園で行っている春季キャンプで第3クール2日目を迎えた。B組の練習前の集合で、1分間スピーチを務めたのがドラフト1位の前田悠伍投手だった。自己採点は70点。「途中で飛んじゃって訳わからん内容になってしまった」と苦笑いするしかなかった。
まだ朝陽がまぶしい時間帯に、B組の選手が集まる。前田悠は、まず「いち社会人、野球人として言動や行動に気をつけつつ、先輩の行動を見て学んでいきたいと思っています」と切り出す。そして「自分の引き出しを増やすためにも……」と2度繰り返してしまった。少し言葉に詰まった後に「自分の課題を見つめ直して、全てをレベルアップできるように頑張っていきたいと思います」と締めくくった。
宮崎でキャンプインした時には、11日に1分間スピーチを務めることは把握していた。「(内容を)考え始めたのは3日、2日前とかでした」。前田悠自身も、高校時代からキャプテンを務め、名門の大阪桐蔭高のエースとして何度も人前で言葉を発してきたはず。「完璧に言えなかったので、そこはちょっと残念でした」と頭をかく。実は前田悠、ある先輩から事前に“手ほどき”を受けていた。
その人物とは、同じB組の投手でともにメニューを消化している鍬原拓也投手だ。内容を考え出した段階で鍬原には相談していたといい「一応(前日の)夜には『こういう言葉遣いでいいですか』って聞きました。少し訂正もしてもらったんですけど(内容が)飛んでしまって。スピーチが終わった後に『飛んでるやんけ』って言われました」とやり取りがあったそうだ。
鍬原は2017年にドラフト1位で巨人に入団。2022年には自己最多の49試合に登板したが、昨季終了後に戦力外通告を受け、ホークスと育成契約を結んだ。伝統球団のドラ1として、数々の重圧も、言葉を発する機会も経験してきたはず。そんな鍬原の姿を前田悠は「お手本」と表現する。「野球の面でもそうなんですけど、言葉遣いだったり、社会人としての対応が違うなというのは感じています。ここの言葉遣いは、目上の人にはこういう使い方をするとか、そういうところを言ってくれる」と、頼もしすぎる先輩だ。
この日は100メートル前後の遠投を、メニューの中で行った。高校時代も70メートルほどでしか遠投は行っていなかったそうで「普段はあんまりやらないです」と、これもまた初めての経験だった。そんな中で顔を合わせたのが、入団前から憧れとして名前を挙げていた和田毅投手。ウエートルームで姿を見つけ「何を話すというか、少し迷いました」とはいうものの、勇気を持って質問した。
「遠投をする時に意識することを聞きました。60メートル、70メートルだと低く投げると言われていたんですけど、全身を大きく使いたい時は80メートルとかに離れて、ラインに入れて投げると言われていました。質問に対して、自分が思っている以上に返していただいたので、これからもわからないことがあれば聞いてみたいです」
まだブルペンに入っての投球はしていない。「(第3クールの)残り2日の予定は、まだ言われていないので、自分もわかっていない状況です」と言うが「自分的にはいつでも行けます」と胸を張った。毎日の全てが勉強。先輩の姿に学び、充実の球春を過ごしていく。
(竹村岳 / Gaku Takemura)