相次ぐ大型補強に溢れる本音 「本当に毎年しんどいなって…」柳町達の胸中と覚悟

ソフトバンク・柳町達【写真:矢口亨】
ソフトバンク・柳町達【写真:矢口亨】

小久保監督が明言したレギュラーは柳田悠岐と近藤健介

 毎年迫り来る大型補強にどう立ち向かうのか。今季もホークスは大型補強を行った。山川穂高内野手を西武からFAで、アダム・ウォーカー外野手を巨人からトレードで獲得した。新戦力はチームに新たな風を吹き込むことを期待されるが、出場機会減少への危機感を募らせる選手も多くいる。その1人が柳町達外野手だ。

 昨季は近藤健介外野手が加入し、外野陣は残る枠を争い、しのぎを削った。近藤の加入を知った柳町は当時、このように心境を振り返っていた。「そりゃあ、しんどいなと思いましたね……。うわぁ……ってなりましたけど、正直な話」。入団4年目の昨季は、開幕直後こそ2軍で過ごしたものの、終わってみればキャリアハイの116試合に出場した。

 近藤の加入があった中でも十分な存在感を示した。レギュラーと言われてもおかしくない場所までようやくたどり着いたと思われたところに、昨季に続いて、またしてもその枠を脅かすことになる高い壁が2人も加入することとなった。新たなシーズンを迎える今、柳町が胸中を吐露した。

「しんどいっすね……。本当に毎年しんどいなって思います……」

 溢れでたのは率直な気持ちだった。小久保裕紀監督はすでに、柳田悠岐外野手と近藤健介外野手を今季のレギュラーとして明言。「ウォーカーも外野手の練習をしないと」と、新助っ人を指名打者だけでなく、外野手として出場させる構想も描いている。

 それだけではない。山川の起用についても「運用でDHに入ってもらう日もあるかもしれないですけどね。基本、全選手守らないと」と、指揮官はコメントしている。山川が一塁手として起用されるとなれば、中村晃外野手や正木智也外野手といった面々の外野起用も考えられるため、外野手争いがさらに激化するだろう。

 山川は3度の本塁打王など、いくつものタイトルを獲得している。ウォーカーは、タイトルこそないものの巨人での2年間で29本塁打を放っている。どちらもホークスにとって積年の課題となってきた“右の長距離砲”であることも、柳町にとっては大きな壁となる。

 それでもプロ野球選手である以上、自分の城を築いていかなければならない。昨季も壁が立ちはだかりながらキャリアハイの数字を残した。「準備だったり、やることをやれた結果が、終わってみたら自信になったのかなとは思います」。“しんどい”と漏らしていた中でも1軍で出場した実績は、確かな自信になっている。

 後輩の存在も大きなプラス材料として捉えている。「刺激になりますし、先輩として負けられないなとも思いますね」。廣瀨隆太内野手がドラフト3位で入団。正木と育成の佐藤宏樹投手を合わせると、慶大出身者は4人に増えた。キャンプではA組とB組の違いこそあれ、全員が宮崎に集結。「今年は慶応が全員来てるんで、みんなで行けたらなって」。柳町自らが声をかけ“慶応会”を開催するつもりだという。

 自主トレでのテーマは“パワー発揮”だった。「強みはバッティングだと思う。試合形式の中でしっかりコンタクトするところが僕の強みだと思うんで、そこが発揮できればいいかなと思っています」。今年も痛感している“しんどい”状況。「どんな形であれ、試合に出れるようにやっていくだけかなと思います」。柳町からはレギュラーを掴み取る覚悟がヒシヒシと伝わってきた。

(飯田航平 / Kohei Iida)