柳瀬明宏打撃投手が自主トレをサポート…感じ取っている今年ならではの気合
ビールにハイボール、グラウンドを離れるからこそ見せられる素顔だ。ソフトバンクの中村晃外野手が23日、福岡工業大学の練習施設で自主トレを公開した。他球団含め4人の選手が集まる中、裏方さんとしてサポートしているのが柳瀬明宏打撃投手だ。ここまでの自主トレについても「マイペースでやっていると思います。周りが若い3人なので、晃も真面目で一生懸命にやりがちなので、地道にやっているんじゃないですか」と印象を語る。
自主トレ期間中、中村晃のサポートをするようになってもう数年が経つ。長崎で自主トレしていた時からといい、少なくとも4年前にはスタートしていた関係。それまでは高谷裕亮1軍バッテリーコーチと1月を過ごしていたが、高谷コーチがリハビリ組にいたこともあり「高谷さんが1月リハビリするから『今年はいいよ』って言われて、晃から『柳瀬さんどこか行きます?』って聞かれて、ちょっと来てもらっていいですかということで。そこからです」と背中を押された。すぐに声をかけてくれたのが、中村晃だった。
福岡市東区にある練習施設で、キャンプインに向けて準備を進めている今。近隣のホテルには西武の西川愛也外野手、楽天の黒川史陽内野手だけではなく中村晃も宿泊。裏方さんも同じホテルに泊まり、夜の食事には全員が出揃うという。同じ一塁を守る山川穂高内野手という最大のライバルが加入してきた今オフ、中村晃の取り組みは柳瀬打撃投手にどんなふうに映っているのか。かなり早い段階で、仕上げてきたそうだ。
「僕のイメージは、12月からしっかり体を作ってきたなというイメージです。もともと真面目なのでしっかりやるんですけど、今年は12月からトレーニングを入れたり、ドームでも打ったりしていたので。やってきたことを維持している感じだと思います」
通常なら心身を休ませる12月も、時間があればPayPayドームに足を運んでいたそう。中村晃本人も「最初の方にちょっと腰を悪くしまして。(報道陣へ)見た感じ、大丈夫そうですか? 個人的な感じだと、70%くらいじゃないですか」と言い、12月に作ってきたものを落とさず、腰の状態も回復しつつある。柳瀬打撃投手も「1月はちょっと落としているというかマイペースな調整をしているんですけど、12月にしっかりやった分、大丈夫じゃないですか」と見守っている。
充実の仕上がりだとしても中村晃は絶対に言葉にはしないという。「本人は『練習してきた』とは絶対に言わないです」とキッパリ代弁する。言葉の節々から、練習している姿から自信こそ感じても「『よく振ったね』と言っても『まだまだです』と言うので、その印象はあります。『もうちょっとやりたかったですけどね』っていつも言いますね」と、口に出すのは向上心だけだ。福岡工業大の施設は午後3時まで借り、その後はウエートトレーニングなどを挟む。夕食は午後7時と、毎日がみっちり練習の日々だ。
寝食までをともにする日々で、夕食には全員が揃う。食事中の雰囲気については「いろんな話をしながら、楽しくやっています。晃が中心ですし、若い子同士の話もしています」という。3球団の選手がいるだけに「その中でチームごとの話もしていますし、パ・リーグが3チームなので。僕も聞いていて面白いです」と、他球団同士の情報交換も行っている。若手3人だけで盛り上がっていても、笑顔で静かに見守ってくれる中村晃の姿も想像できてしまう。
2006年からプロ入りした柳瀬打撃投手。中村晃のことは新人時代から知っており、今は選手と裏方という関係性だ。中村晃の素顔については「オンとオフがしっかりしています。テレビで流れる時は真面目な顔じゃないですか。でもプライベートになったらお酒でも飲みながら、しょうもない話もして笑ったり、真面目な話もします」と語る。飲むお酒も「ビールとか、ハイボールだとか、基本的になんでも飲みますよ、飲む時は。でも飲まない時は飲まないですから」と、どんな時もプロとしての自覚があるから、中村晃らしい。
「次の日にはもう野球のことを考えていますし、オンオフの切り替えはすごいです。今日は練習するって決めたらとことんしますし、しない時は体の調整だけっていう時もあります。そこはメリハリがあって晃らしいなって思いますね。本当に“プロ”というか、職人みたいな感じですよね。真面目なところもありますけど、それ以外も魅力的だから若い子も寄ってくるんじゃないですか。若い子たちも『晃さんの自主トレに行ってよかった』ってよく聞きますから」
3年連続で自主トレ参加となった渡邉陸捕手は「言葉には出さないですけど、いつも以上にやる気があるというか、覚悟が決まっている感じはあります」と中村晃の印象を語る。「やっと心を開いてくれて、少しずつ晃さんの本性が見えてきました(笑)」と、距離感が近づいてきた。プロ野球選手としての技術や心構えに加えて、魅力的な素顔があるから、中村晃について行きたくなる。
(竹村岳 / Gaku Takemura)