「また96年会をやりたい」少しずつ離れ離れになっても変わらない“居場所”
甲斐野央投手が、西武に移籍することになりました。西武から国内FA権を行使して入団した山川穂高内野手の人的補償に指名され、新天地へ移ります。静岡市内で自主トレを行っていた甲斐野投手は、鷹フルの単独インタビューに応じてくれました。語ったのは、1996年生まれの同級生への感謝。涙あり、笑いあり、文字通り1人1人にメッセージを、一人称の視点で掲載します。ルーキーイヤーの思い出から、移籍が決まった日の夜の出来事まで。今後の「96年会」は、どうなっていくのでしょうか?
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同級生にメッセージですか! いいですね。まずは、クリ(栗原陵矢外野手)。うん、お疲れ(笑)。
クリとの初めてはめちゃくちゃ覚えているんですよね。僕が筑後で、新人合同自主トレでブルペンに入った時に、あいつが後ろにいたんですよ。それこそ96年の堀内汰門と、ずっとひょっこり見ていたんです、僕のピッチングを。多分2人も、大学を卒業した僕と同級生ですし、気になっていたんでしょうね。結構しゃべりかけてきてくれました。
僕もさすがに、このキャラですけど若干人見知りな部分ももちろんあるんで、出すぎることはできないじゃないですか。そのまま話して終わるんかなって思ってたら、僕たちまだ寮生だったので、お昼を食べた後に『ちょ、部屋来てや』って言われて。汰門の部屋に行って、練習が終わってから風呂にも入らずにトランプしたのを覚えていますね。汰門と、クリと。
印象に残っている1つが、僕の復帰戦(2021年8月15日)です。あの時も確か、クリがサードでしたよね。外野でも出ていましたけど、コンバートし始めた時ですか? 僕はセットポジションなので、そのまま見た時にあいつがいるのはちょっと不思議な感覚でした。でも時には声をかけに来てくれて、ちょっと余裕を持たせてくれる、そんなクリですね。
とりあえず、人的補償で移籍が決まった時に電話したんですけど、出てくれなくて、アメリカにいたので。僕もテンパっていてそれを忘れていて「電話全然出えへんやん」って思っていました(笑)。そしたら夜にテレビ電話がかかってきて「あ、そっか。お前アメリカか」「ごめんごめん」って。結構驚いた表情はもちろんでしたけど、テレビ電話でも寂しさが伝わってくるような顔をあいつはしていましたね。
なんだかんだ、寂しいなって。あとは対戦できるのが楽しみだねって。「央、寂しいわぁ!」ってめっちゃ言ってました。ランナーに出たら、あいつふざけ出すかもしれません(笑)。
マツ(松本裕樹投手)は、高校の時に対戦もしていましたし、高校時代からスーパースターでした。すごく目立っていましたね。あのキャラなので、ちょっと人見知りじゃないですけど寡黙な感じかなと思っていました。でもどんどん距離が近づいていくにつれて、同級生会とかもあいつから「したい」って言い出すようになりましたし。マツってこんな部分あるんやって思ったり。
今回も移籍が決まって連絡がきて、本当にびっくりしたんですけど「引越しの手伝いとか、できることあったら言ってな」って連絡が来て、マジで嬉しかったです。びっくりしましたね、マツってこんなこと言うんやって。野球の話は一番、ピッチャーの中でもしたんじゃないですかね。お互い頑張ろうとマツも言ってくれたので、頑張りたいですね。
藤井(皓哉投手)は、広島から1回戦力外になって独立に行って、ホークスに育成で入ってきましたけど「ほんまにこいつ1回クビになったんか」ってくらい実力がありましたし。最初は正直、僕も怪我明けだったりして2軍にいて、藤井が1軍で投げている姿を見て悔しかったです。「俺が絶対に投げないといけなかったポジションなのに」って思いもあったんですけど、今となっては絶対に必要な存在だと思います。野球についても、野球脳とかも、すごくリスペクトしている部分があります。
プライベートではそんなに関わりは、同級生会くらいでしたけど。ドームで会う藤井はオーラがありましたし、また今後とも頑張っていきたいと思います。
シュン(笠谷俊介投手)は……。頑張れって感じです。お疲れって書いておいてください(笑)。
(移籍が決まって笠谷から連絡は)来ました、テレビ電話が来ました。あいつ今日も朝、LINE来たんですけど「なんかわからんけど、お前のニュース見て悲しかったんか知らんけど、起きたら“ものもらい”できたわ。めっちゃ目腫れてたわ」っていう、意味のわからないLINEをしてくる左投げのAB型です(笑)。
勇(野村勇内野手)は同じ兵庫県の出身でもありますし。正直、まだあいつはキャラを出していないんじゃないかっていうのがあります(笑)。初めてご飯に、拓さん(甲斐拓也捕手)と3人、4人で行ったんかな。勇に『お前全然しゃべりかけてきてくれへんやん』って言ったんですよ。そしたら『ちょっと怖い』って言われたのがすごい印象的です(笑)。そんなこと思われてたんやって」
出身は同じですけど、勇は特殊ですよ! 関西人の中でも飛び抜けて面白いタイプだと思いますね(笑)。でも勇も絶対にホークスの顔になるべき選手と思うので、活躍しているところを見たいです。
圭ちゃん(泉圭輔投手)、うん。お疲れ(笑)。
圭ちゃんは(1996年会の)マネジャーとして、業務を果たしてくれました。あいつの方が先に出ていくことになって、僕も寂しいなって思っていたら、出ることになりました。同じ東京近辺ということで、それこそ泉からも連絡が来たんですけど。「人的補償なんや……」って感じかと思ったら、第一声が「家決まった?」だったんで。いや、早すぎるやろってツッコミました(笑)。最後の最後までマネジャーの業務を果たそうとしていましたね(笑)。
泉はそうですね。同期入団で同級生、ポジションも同じピッチャーですし。正直、同級生は全員仲良いですけど、よく家にも泊まりに行っていましたし。一番気を使わない人間だなと。僕だけじゃなくて、そういう力をみんなに対しても持っていると思います。本当にナイスガイ。マウンドで、豹変してほしいですよね、それが。
岡本(直也投手)は今回自主トレも一緒ですね。ドラフトで入ってきた時、しゃべりかけてもこなくて、アイコンタクトすらなかった。それで最初、寮の中で岡本の部屋にゲームして集まっているって聞いて、岡本の部屋に行くようになってからですね、仲良くなったのは。それまで本当に一言もしゃべったことなかったんですけど、今となっては、岡本は僕のことを一番の親友って言うので(笑)。このヘアバンドをくれたのも岡本ですし、気が利くやつですよね。
重田(倫明広報)も連絡が来たんですけど、正直あいつが一番悲しがっていました。今年からあいつは広報ということで仕事が変わるんですけど、一番悲しんでくれましたし『西武に行った央も(応援する)』っていう話もしてくれました。本当に性格のいい男だと思います、ナイスガイですよ重田は。
1996年の同級生がいてくれて、本当によかったです。ここまで仲のいい96年世代の球団はないんじゃないかっていうくらい、ここが好きでした。本当に寂しいですけどね。ちょっとずつ離れ離れになっているのも、いつまでも甘えてんじゃないよって、野球の神様が言ってくれているのかもしれないですね。仲良しこよしでやっているんじゃないよって。そんなつもりはないんですけど、自立しなさいということなんですかね。
僕がもし、西武に行って活躍したらみんな喜んでくれると僕の中では思っています。僕も頑張りたいなって思いますし、本当にかけがえのない存在です。これからも泉にマネジャーとして仕切ってもらって、また96年会をやりたいです。あ、泉かマツ(笑)。そんな形でまたみんなに会えることを、僕も楽しみにしています。
(竹村岳 / Gaku Takemura)