牧原大成、和田毅からの苦言「育成の選手はプロ野球選手ではない」
「もうちょっと自覚持ってやらないと終わってしまう」「育成の選手はプロ野球選手ではないと自分は思っている」。次々と、チームを背負う先輩から苦言を呈された。ソフトバンクの牧原大成内野手が7日、久留米市内で自主トレを公開。2年連続での参加となったのが、育成の緒方理貢内野手だった。耳にした厳しい言葉に対して漏らしたのは、1人の育成選手としての本音。狭すぎた入り口に対して、モチベーションを保つことは難しかった。
緒方は宮崎県出身で右投げ左打ちの内野手。京都外大西高から駒大に進学し、2020年育成ドラフト5位指名を受けてホークスに入団した。2022年にはウエスタン・リーグで17盗塁を記録してタイトルを獲得したが、2023年は50試合出場にとどまり打率.140。4盗塁に対して失敗も3つと、結果を出すことができなかった。2軍の公式戦に出場できるのは1試合で最大5人。緒方もまた、ホークスの厚い選手層に阻まれた1人だった。
昨年12月、オフの契約更改で自主トレをともにする牧原大が育成選手に対して苦言を呈した。その4日後、呼応するように和田毅投手も「違うユニホームでプレーしてもいい」と、ハングリー精神を生み出すために明確な差別化を図るべきだと訴えた。実績のある2人から、現実を突きつけるような言葉。緒方自身はどのように受け止めたのか。「気持ちが足りていない」と言う。
「僕もずっとそうだと思っていましたし、言われたからどうとかはなかったです。僕も思っていたことでしたし、言ってくださったという感じで、正しいなと思います。自分が結果を出せば上に行ける世界なので、その気持ちが足りていないだけの話。自分がやらなかったら首を切られるし、結果を出せば上に行けるので。そういうところだと思います」
育成選手の間でも、緒方は雰囲気や意識の差を感じているという。当然「僕は意識が低い子を見ても、あまり人のことは気になっていない」と、周囲に影響されないようには取り組んでいるものの「2軍とかを経験していない子もいて、難しいところもあると思う。それも全部は気持ち次第だと思います」と理解も示していた。1軍への道のりが近い2軍ならまだしも、3軍以下なら文字通り、自分自身の鍛錬のためだけに日々を過ごさなければならない。育成選手にしかわからない気持ちを当然、緒方だから理解できる。
オフの戦力整備を経て、現在の支配下選手は63人となった。国内FA権を行使した山川穂高内野手も獲得。Aランクの選手と見られ、西武側もすでに人的補償での獲得を明言しているだけに、さらにもう1枠減ることになる。緒方も「今年は枠もありますし、狙えるところは狙っていきたい」と、育成選手にとってはそれだけチャンスが多い状況だ。開幕までにまだまだ補強を重ねる可能性もあるだろうが、育成選手の目もギラつき始めている。
2023年は開幕した時点で67人。木村光投手が支配下登録されただけで、残り2枠は外国人選手の補強で埋められた。緒方も「去年とか一昨年は、だいたい“わかっていた”というか……。それが正直なところ」とモチベーションの維持が難しかったことを認める。もちろん「気持ち次第」と、それすらも強い気持ちで乗り越えていかなければならないこともわかってるが、選手だって時期や残りの枠を逆算して考える。人数が多すぎるがゆえのジレンマがそこにはある。
「だいたい、キャンプ明けとかで上がっていなくて、シーズンが始まってきて外国人を取るというのもわかってきて……。色々と考えていたら『あ、もう枠ないか』という感じでした」
今季は大卒で4年目。育成選手は3年を終えると自動的に自由契約になるだけに「今年がラストだと思っている。もう1年を“もらった”と思っていますし、まだまだ野球はしたいので、しっかりと仕上げたい」と改めて危機感を抱くような1年だ。「結果が出なかったらこの世界は終わりなので、試合に出て活躍したいというのがより強くなりました」。狭き門であることは何も変わらない。2桁になるためには、結果を出すしかないことも理解している。
背中を見つめる牧原大は、2年目の2012年6月に支配下登録を勝ち取った。準備を欠かさない姿勢や、メディアの前でも発する強気な言葉、全てが勉強の日々だ。「入ってきた時からずっと目標の選手。こうやって自主トレでも姿で見せてくれているので、しっかりと自分が読み取ってやらないといけない」。支配下登録になることが最大の恩返し。7月31日という明確な期限までに、1日も早く2桁背番号を掴み取りたい。
「支配下にならないといけないので、それに向けて全てで鍛えていこうと思っています」。そう語りながら、真っ直ぐに未来を睨んでいた。
(竹村岳 / Gaku Takemura)