球団から複数年の打診も…あえて選んだ単年契約 甲斐拓也が明かした“FAへの考え方”

契約更改交渉に臨んだソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】
契約更改交渉に臨んだソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】

現状維持で1年契約「僕らは1年1年が勝負なんで、まずは単年で」

 ソフトバンクの甲斐拓也捕手が21日、本拠地PayPayドームで契約更改交渉に臨み、現状維持の年俸2億1000万円(金額は推定)で契約を結んだ。来季中に国内FA権を取得予定で、球団から複数年契約の打診も受けたが、甲斐自身が単年契約を選択。会見、その後の囲み取材で複数年契約を選ばなかった思いなどを語った。

 今季は野球日本代表「侍ジャパン」でのWBC制覇から始まった1年だった。「本当にたくさんの経験をさせてもらった1年だった。3月にベストパフォーマンスでできる状態を作らないといけなかったので、難しさももちろんありました。そういった難しさも含めて、いい経験だったと思います」。調整の難しさもあったが、選ばれたものにしか味わえない経験を積んだ。

 シーズンでも139試合に出場。打率.202、2年ぶりに2桁本塁打となる10本塁打を放ち、自己最多タイの44打点をマークしたものの「納得いくようなものではない」と言う。チームも3位に終わり、3年連続でV逸。「ホークスは優勝しないといけないチーム。この結果はものすごく悔しい結果ですし、勝たないといけないチーム、優勝しないといけないチームなんで、それが全てかなと思います」と悔しい1年になった。

契約更改交渉に臨んだソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】
契約更改交渉に臨んだソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】

 順調にいけば、来季途中には国内FA権を取得する。球団ではFA取得前年に複数年契約を打診、締結する選手が多い。甲斐の後に契約交渉を行なった牧原大成内野手も来季中に国内FA権を取得する見込みで、新たに3年契約を結んだ。甲斐にも当然、球団から複数年契約の打診があったものの、あえて単年契約での勝負を選んだ。

「僕らは1年1年が勝負なんで、まずは単年でやっていこうかなという感じ。もちろん考えはしましたけど、別に今年(FA権を)取っているわけじゃないですし、どちらにしても取得するのは来年になるわけなんで。複数年とかは来年を迎えてからでもいいんじゃないかな、と。単年で、1日1日勝負して、ホークスに今までやってもらったことを結果で返していけるようにしたいなと思います」

 何度も繰り返したのは「1日1日が勝負」という言葉だった。育成選手から這い上がり、球界を代表する捕手にまで成長した。もともとが目の前のことに全力を注いできた野球人生。プロ野球選手として1つの大きな節目となるFA権取得を目前にしても、そのスタイルは変わらない。

 FAという権利に対しては“特別な思い”がある。

契約更改交渉に臨んだソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】
契約更改交渉に臨んだソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】

「プロ野球の世界に入って細川さんや鶴岡さん、嶺井さんもそうですけど、FAで(ホークスに)来られたキャッチャーを見て、FAを取っている選手が本当のプロ野球選手だなって僕は感じていて。僕もこの7年間、1軍の試合には出てましたけど、プロ野球選手なんですけど、まだそこまでではない、FAを取ってからがプロ野球選手なんだって僕はすごく感じていたので。別に自分がどうなりたいか、というわけではなく、単純に単年で勝負して、普通にそこからかな、と」

「野球をしている以上、どこでしたいかとかっていうのは人それぞれあると思いますし、誰のためにっていうところもあると思う。FAってどうしてもお金のことになっちゃうと思うんですけど、僕はお金が全てではなく、どこでやりたいのか、誰のためにやりたいのか、そういうのを含めてかなと思う。まずはしっかり来年頑張りたいと思います。どっちにしても、僕らは1日1日の勝負なんで、来年それで終わったとしても出し切るだけなので」

 未来のことを考えるのは、正式に権利を取得してからでいい。取得した先のことは「あまり考えていない」とも明かす。まずは目の前のこと、来シーズン、ホークスがリーグ優勝、日本一になることしか考えていない。

「優勝しかないと思いますし、このチームは勝たないといけない。優勝しないといけないチームなので、優勝して、そこを達成して、その後に自分の結果がついてくればいい」という甲斐。3年連続でリーグ優勝を逃していることに捕手として責任を感じている。来季は勝負の1年。だから、あえて選んだ単年契約だった。

(鷹フル編集部)