「今日(の契約更改)は僕1人だけっていう話だったんで…」
半分は本音、半分は気遣いからの言葉だった。ソフトバンクの甲斐野央投手が11日、本拠地PayPayドームの球団事務所で契約更改交渉を行い、400万円増の年俸4000万円(金額は推定)でサイン。交渉後の会見では「オスナから9回奪えたらメチャクチャかっこいいだろうな、と思いますし、オスナを脅かせる存在になりたい」と高らかに誓った。
2018年のドラフト1位でソフトバンクに入団。ルーキーイヤーに65試合に登板して2勝5敗8セーブ26ホールドをマークしたものの、2年目は右肘の怪我で1軍登板なしに終わった。その後もなかなか右肘の不安は拭えず、2021年は22試合、2022年は27試合に終わった。
「おととし、去年と怪我の後遺症じゃないすけど、肘の怖さが半々ぐらいの中で投げていた。今年に関しては、8、9割方は怪我の不安がなく投げられた」。今季は開幕1軍こそ逃したものの、5月に昇格。その後は1軍でプレーを続け、46試合に投げて3勝1敗2セーブ9ホールド、防御率2.53。4年ぶりに年俸アップを勝ち取った。
会見でプロ6年目の来季に向けた意気込みを聞かれ「オスナがエラいお金を貰ってるなって思って。それは冗談ですけど、そんなオスナから9回奪えたらメチャクチャかっこいいだろうな、と思いますし、オスナを脅かせる存在になりたいなと思っています」と語った。ここに甲斐野なりの報道陣への気遣いがあった。
その後の囲み取材でこう言って笑った。
「今日(の契約更改)は僕1人だけっていう話だったんで、何かネタを作らないといけないかな、と。(大きいことを)言っておいた方がいいかな、と。ネタ作りです。そちら側(報道陣)のことも考えて言いました」
この日、予定されていた契約更改交渉は甲斐野1人だけ。翌日の新聞紙面やテレビ番組の“尺”のために、あえてネタになりそうな言葉を考えていた。それが“オスナ超え”。半分はリップサービス。ただ、半分は本心でもある。
「みんな思っているけど、なかなか言わないだけ。『僕は負けパターンでいいです』とかいうピッチャーは絶対いないと思うので。『9回を頼んだ』って言われたら絶対にみんな喜んで行くと思う」
投手たるもの、より良いポジションで投げたいと思うのは必然のこと。先発投手であれば、目指すべきはエースであり、リリーフであれば勝ちパターン、そしてクローザーが最終目標になる。甲斐野にとってもそれは同じ。胸の中にある志をあえて口にした。
まだまだ守護神に及ばないことは自覚している。今季は46試合の登板。「あと4試合で50試合だったという思いもありますし、そこは信頼の無さ、能力としての評価だったと思う。投げられている部分はあったのかなと思っているので、技術としてもっと上げていかないといけないと思います」。このオフにどれだけレベルアップできるか。甲斐野央はしっかりと自分の足元を見つめている。
(鷹フル編集部)