後輩の台頭に募る“恐怖”「ポジションなくなる」 栗原陵矢に起きている心境の変化

契約更改交渉に臨んだソフトバンク・栗原陵矢【写真:藤浦一都】
契約更改交渉に臨んだソフトバンク・栗原陵矢【写真:藤浦一都】

1月は米国で自主トレ「野球人生においても、人生においても、刺激を感じたい」

 溢れた偽らざる本音だった。6日に来季の契約更改交渉を行なったソフトバンクの栗原陵矢外野手。今季から700万円減の6300万円で来季の契約にサインした。交渉後の会見では「自分のポジションがなくなっていく怖さもある」と、心中を吐露した。(金額は全て推定)

 不完全燃焼のシーズンだった。前十字靭帯断裂の大怪我から復帰し「すごく自分に期待しながら挑んだ」という今季。開幕直後は結果も出ていたが、徐々に成績は下降。左膝の炎症で7月末に出場選手登録を抹消され、8月16日の復帰直後に今度は右有鈎骨の骨折で再び離脱。96試合に出場して打率.239、13本塁打49打点という成績に終わった。

「自分の中でも残念だなと思いますし、チームのために働けなかったなというのはあります。どの数字を取っても納得いくものではない。チームとしても3年、優勝から遠ざかっていますし、とにかく優勝したいという気持ちが強いです」。口を突いたのは自責の思いばかり。リーグ優勝を逃した責任の一端を痛感している。

 2年続けての怪我での離脱。当然、栗原の胸には危機感が湧き上がっている。今季は戦列を離れている終盤に、三塁で3年目の井上朋也内野手が台頭。プロ初安打、初本塁打もマークするなど、15試合に出場した。昨季は長期間、ともにリハビリ組で過ごした同志で「一緒にやっていた井上がああやって活躍するのは嬉しいですけど、本当に自分のポジションがなくなっていく怖さもあります。本当に勢いありますし、刺激にはすごいなります」と口にした。

 1月はその井上と米国で合同自主トレを行う。ライバルとなり得る後輩の面倒を見ることになる。「一緒に行かせてくださいって言ってきたんで『いや、それはキツいだろう』とは言えなかった」と冗談めかして笑いを誘った栗原だが、この自主トレでは自らの“変革”も期待している。

「自分の野球人生においてもそうですし、生きていく人生においても、なんかすごく刺激になることであったり、自分ですごくもっともっと広い世界があるんだなということを感じる自主トレにしたいなと思います」

 栗原にとっては2年連続での米国自主トレ。今年1月は単身で渡米して米国のトレーニング施設で汗を流した。言葉も通じない環境で生活し、現役メジャーリーガーの姿も目の当たりにした。

「僕の中ではすごく大きかったですね。向こうの選手と一緒にやれたことは僕の中では一番良かったですし、ああいう環境に1人で行って、言葉も話せないし、自分のことなんて誰1人わからないような環境で生活していくことってすごく難しいですけど、すごく自分の中では刺激になることが多かったですし、何か人として変われた部分は大きかった」

 このオフもリハビリ、トレーニングに全力を注ぎつつ、空いた時間で外部からの刺激を求めた。

「野球を一生懸命頑張るのって当たり前なんですけど、野球を頑張るためにいろんなことを見たり聞いたり知ったりすることってすごい必要だなと思います。自分が知ってることだけじゃなくて、もっともっと刺激になることであったり、何か気持ち的にも変われることってたくさんあるなって思うんです」

「シーズン中には行けないところであったり、できないことであったり、もちろんトレーニング、野球は一生懸命やりますけど、その中でオフにしかできないこと、練習が終わってからのこと、普段会えない人に会ったりとか、そういうことをやりたいなと思っています」

 ここ数年、自らの中で起きている心境の変化。それも全て野球に生きると信じている。もちろんプレー面でやり返したい思いは強い。チームは3年連続でV逸。栗原自身、昨季と今季、2年続けて終戦の瞬間をグラウンドで迎えることはできず「本当につらかったですし、チームがすごい熱い戦いをしているところにいられなかったという悔しさがあります」という。

 2年続いた不遇の年。その鬱憤を晴らすための2024年にする。結婚したことを11月に発表し心機一転。「より一層やらないといけないですし、家族のため、チームのため、本当にやらないといけないと思っています」。来季の“新生”栗原陵矢に期待したい。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)