選手会長就任は「伸び悩んだ」から…中村晃が明かす4年前の舞台裏 信じた今宮健太の“意地”

ソフトバンク・中村晃【写真:竹村岳】
ソフトバンク・中村晃【写真:竹村岳】

周東佑京が選手会長に就任…中村晃が今宮健太に託した時の舞台裏を明かす

 チームリーダーとして、優しさと思いやりがこもった“バトン”だった。2024年から、周東佑京内野手が選手会長に就任する。前々任だった中村晃外野手も「面白いんじゃないかなと思いますよ」と太鼓判を押した。明かしたのは、2021年オフに自身が今宮健太内野手に選手会長を託した時の舞台裏。中村晃なりの優しさに、今宮はしっかりと結果で応えてくれた。

 中村晃が選手会長を務めたのは2020年と2021年。以降、今宮も2年の任期を全うした。今宮は「誰がいいのかという話も先輩方にしながら」と、中村晃を含めて歴代の選手会長に相談をしたことも明かしていた。「めちゃくちゃ悩みました」と、周東へのバトンタッチを筆頭に選択肢の中で悩む今宮に対して、中村晃は力強く背中を押していた。

 中村晃にとって、周東の就任は「いいんじゃないですか? 普通にいけば拓也(甲斐捕手)がやるだろうなと思いましたけど、もう1つ若い選手にするって、いいことだと思います」と率直な思いを話した。今宮は「若い選手が上がってこられていないというのは正直、ある」と、自分よりも下の世代に自覚と結果を求めていた。中村晃も慎重に言葉を選びながら、20代の選手が選手会長となる“意味”を語る。

「そこらへんに任せることで責任感も出てくると思いますし、悪いことはないと思います。クリ(栗原陵矢外野手)にしても佑京にしても、そこら辺が中心になっていくことはチームにとってもいいことだと思うので、いいことだと思います」

 球団ではなく、選手たちが主導して受け継がれていくリーダーのバトン。中村晃は2019年、怪我も重なったことで44試合出場にとどまった中で、選手会長を託された。柳田悠岐外野手から中村晃、今宮と順当に思えるリレーだが、そこすら優しさがにじむ。中村晃が今宮に託した時は、どんな思いだったのか。

ソフトバンク・今宮健太【写真:竹村岳】
ソフトバンク・今宮健太【写真:竹村岳】

「僕は普通に、次は健太に任せるって最初から言っていた気がします。でも、ちょうど健太も成績が落ち気味の時だったんです。僕もちょうど伸び悩んでいた時期でもあって、選手会長をすることでまた、僕はそこでもう少し、浮上したというか。気持ちも前向きになれたのもあったので、健太もちょうどそういう時期だった。思い切ってやった方がいいよと言って、僕は託しました」

 今宮が就任する前年の2021年、125試合に出場しながらも打率.214に終わった。規定打席も2017年から4年連続で遠ざかり、年齢も30歳となった。肩書きを背負うことで成績をV字回復させることができた経験があったから、今宮もそうなれると信じて託した。「選手会長というだけでも、ピシッとなるじゃないですか。人間ですから。自分に責任感を持たせて、しっかりやっていくんだと気持ち的に持てれば、成績は残ると思うので、そんな感じで健太には任せました」と続けて振り返る。

 中村晃の任期中はキャプテンも置かれず、文字通り、自分が選手の代表だった。キャンプの手締めや、テレビへの出演。自分の言葉で思いを語る機会も増える。「代表してしゃべることが多くなる。テレビにもたくさんそういうのが映りますし、ちゃんとしないといけないなっていうのは思います。チームのみんなを代表しているので、そこの重みは感じていました」。言葉の重みや身だしなみなど、選手会長だった2年は中村晃にとって、よりプロ意識が磨かれた期間だった。

「言葉を出すにしても、立ち振る舞いにしても、ちゃんとしないといけないというのは思っていました」

 2022年オフ、松田宣浩内野手は柳田、中村晃、今宮の名前を挙げて、次代のホークスを託した。松田も2014年、2015年と務めた選手会長。3人も同様にしっかりと肩書きを背負って、チームリーダーとして成長してきた。今度は自分たちが“託す側”。若鷹にとって、いつまでも高い壁、そして最高のお手本であり続けたい。

「年は取っていますしね。もう自分も(来年11月で)35歳ですし。基本的にはしっかりと引っ張っていくというか、チームにはいい影響を出せるように、責任感を持ってやっていくのは変わりないですけどね。選手会長じゃなくても、ですね」

 周東へのサポートも力強く誓った。2010年以降、選手会長は2年周期で交代してきたが、そのバトンにはそれぞれの思いが確かにある。誰しもが経験できることではない重い肩書き。重圧も責任もきっと力へと変えていけると、中村晃は信じていた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)