「難しいプレーよりも普通のプレーをしっかりできるように」
職人はどこまでも“一途”だった。ソフトバンクの中村晃外野手は11月30日、都内のホテルで行われた「第52回 三井ゴールデン・グラブ賞」の表彰式に出席。4年連続4度目の受賞に「この賞を目標にやってきましたので、4回目を取ることができて嬉しいです」と喜びを口にした。
中村晃は今季、体調不良による欠場などもあったが、シーズンで136試合に出場。主力としてチームを支え、打率.274、5本塁打、37打点の結果を残した。最多の118試合にスタメンした一塁手だけでなく、左翼で4試合、右翼でも8試合に先発しており、プロ16年目、34歳になってもマルチな役割を担った。
その中でも一塁手では巧みなグラブさばきを見せて、守備の名手に贈られる同賞を4年連続で受賞。「しっかりミスなく、というのは意識しています。難しいプレーよりも普通のプレーをしっかりできるようにと意識してやっています」という言葉通りに、派手さはなくとも、とにかく堅実なプレーで今の地位を築き上げた。
そんな中村晃にはこだわりがある。守備を支えるファーストミット。SSK製の“相棒”をよく見てみると、かなり年季が入っている。「しっかり収まってくれるというか、ミットの中でボールが遊ばないようなことは重視します。あとは手にはめた感じ、フィーリングもあります」というファースミット、実は“9年もの”だというのだ。
「僕は4年と言わず、9年ぐらい使っています」
プロ野球選手、特に1軍の主力選手となれば、毎年、契約するメーカーからグラブをはじめとする用具が支給される。使い分けは人それぞれで、シーズンごとに“主戦”のグラブをメインに使用する選手や試合や気分によって何個かを使い分ける選手もいる。気に入った“相棒”を数年に渡って使う選手もいるが、それが「9年」ともなると異例だ。
中村晃自身も「そろそろヤバいなと思っている」というほど。現在、SSKの担当者にミットを預け、メンテナンスをしてもらっているものの、長年連れ添った“相棒”の後継者作りも必要になってくる。「次を作らないといけないんで、オフの期間にそういうことはします」。4年連続での受賞に隠された秘密。中村晃なりの“こだわり”が堅い守備を支えている。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)