2023年は91試合出場、打率.259に終わり「悔しさしかない1年でした」
自分の言葉で直接、指揮官に熱く訴えた。ソフトバンクは25日、九州各所で「ベースボースキッズ2023」を開催した。ファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」に参加したのは牧原大成内野手。「元気をもらえてよかったと思います」と子どもたちとの交流を楽しんだが、今シーズンを振り返ると、その表情はすぐに引き締まる。「悔しさしかない1年でした」とキッパリ言った。
2022年は打率.301を残し、規定打席まで残り2打席と確固たるレギュラーに間違いなく近づいたシーズンだった。迎えた2023年、3月にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に追加召集され、世界一に貢献する。確実に階段を上がり、レギュラーシーズンでもチームの力になるはずだった。しかし、8月30日のオリックス戦(PayPayドーム)で死球を受けて骨折。「右尺骨茎状突起剥離骨折、右尺骨茎状突起部骨挫傷」と診断され、そのままシーズンを終えた。
結果的に91試合に出場して打率.259、2本塁打、32打点、3盗塁。多くの数字で2022年を超えることはできなかった。リハビリ組を卒業したのは10月24日。ポストシーズン進出をかけた終盤戦、激戦となったクライマックスシリーズ(CS)を、牧原大はどんな思いで見つめていたのか。驚きの事実とともに、胸中を語った。
「シーズン中も最後まで立てなかったのも自分の中では情けない。CSというのも違う緊張感があってやりがいがある場所なので、立ちたかったです。クライマックスは正直、ファイナルまで行くだろうという気持ちでいた。僕もファイナルから(1軍に)合流する予定だった。なかなか、野球ってわからないものだと思いました」
骨折の診断を受けたのは福岡県内の病院。「『なんとかできる状態であってくれ』って正直、思っていました」と、たとえ骨折だろうがプレーできるなら、グラウンドには立つつもりだったとも明かす。4月27日に左足を負傷し、5月26日に復帰。その際も「トレーナーさんが言うことを振り切ってやっていた。そうでもしないと早く復帰できない」と、人一倍、グラウンドへの執念を抱いていた。それでも8月の骨折は「無理してでもやろうと思っていたんですけど、想像以上に無理だったので、仕方ないです」と振り返った。
9月、10月の戦いを引っ張ったのは周東佑京内野手。打率.330、12盗塁を記録して月間MVPにも選出された。牧原大は今季、二塁で44試合、外野で55試合に出場。自分の穴を後輩が埋めたことは頼もしくもあり、その何倍も悔しさを抱いた。小久保新監督がレギュラーを明言しているのは柳田悠岐外野手と近藤健介外野手のみ。周東も含めてレギュラー争いの熱が高まる中で、ハッキリと決意を口にした。
「僕はもう来年、外野はやらないと思います。セカンドを狙いに行きたいです」
定位置争いに挑むのは、二塁。今季、二塁として最多の出場を果たしたのは三森大貴内野手の91試合だった。これまで多くの起用に応えることで自分の居場所を掴んできた牧原大だが「ユーティリティというところでもいろんな選手が出てきているので、そろそろ本当に(レギュラーを)取らないといけない気持ちはあります」。10月には31歳を迎えた。キャリアを考えても、もう自分のためだけに勝負にかけたい年代だ。
小久保新監督にも意思は伝えてあるという。「2人で面談というか、話をしていただいたので、その時に」と明かす。指揮官は秋季キャンプ中、谷川原健太捕手にも捕手に専念させることを伝えるなど、各ポジションで少しずつ起用のイメージを明確にしながらチーム作りを進めている。牧原大も「監督の意思と僕の意思が噛み合った。またイチからやるだけです」と、力強く言い切った。
「レギュラーが決まっていない以上、『規定打席』(を目標)と言うわけにはいかない。開幕からレギュラーで出られるように、あそこの位置を掴めるようにしっかりとやるだけです」
自主トレは、現役を引退した松田宣浩さんのもとで、野村勇内野手らと行う。誰よりも負けん気の強い牧原大成が、2024年の競争をもっともっと熱くする。
(竹村岳 / Gaku Takemura)