一変した秋キャンプの景色…16時には選手撤収 “実り”から“気付き”への変革

ソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:福谷佑介】
ソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:福谷佑介】

例年は日が暮れるまで選手が練習に明け暮れた秋季キャンプだったが…

 変革のキャンプとなった。11月2日から17日まで行われていたソフトバンクの秋季キャンプ。野手は従来通りに宮崎で、投手はファーム施設の「HAWKS ベースボールパーク筑後」で、球団としては初の“分離キャンプ”を実施した。これまではハードな練習を課してきた秋のキャンプだが、今年はかなり様子が違った。“実りの秋”ではなく“気付きの秋”といった16日間だった。

 米トレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」の動作解析や最新鋭マシン「iPitch」の活用など、最先端の練習や設備を取り入れて行われたこのキャンプ。野手は野手、投手は投手が一箇所に集まることで、若い選手たちが主力や1軍に近い選手たちの力や取り組みを目の当たりにすることができた。さらに、1軍から4軍まで同じ担当コーチが一堂に介して選手をチェックしたり、議論を交わす時間ができた。1人の選手に対する、コーチ陣の指導方針を共通させるにも貴重な時間となった。

 ただ、練習自体は決してハードなものではなかった。午前9時から練習が始まり、チームが設定するメニューは午前中で終了。ランチタイムはたっぷりと時間が取られ、午後は自由練習となり、選手個々で考えながら練習に励む時間に充てられた。ホテルへ戻るバスの最終出発時刻は16時。スイング量などは例年と大きな差はなかったが、日がまだ高いうちに選手たちは宿舎へと戻っていった。

 果たして、こんな練習量で4年ぶりのリーグ優勝は叶うのか。小久保裕紀新監督はこう語る。

「キャンプを打ち上げると『よっしゃオフだ!』みたいなのが、従来のキャンプの終わりだと思うんですけど、今年のホークスに限ってはこのキャンプがオフに入るキッカケ作り。これからコーチの指導が受けられない時期に、いかに自分で考えて練習を続けられるかっていうその課題を見つけようというところのキャンプだった」

 フロント主導でプランニングが行われたキャンプのテーマは「キッカケ作り」だった。ハードなメニューを課すのが当たり前だった従来の秋季キャンプは、キャンプが終わると、選手たちはどうしても一度、息が抜けてしまうところがあったという。選手たちにどうやってオフの期間を有効に過ごさせるかという部分は、育成の重要なテーマだった。

 本当に大事なのは、秋のキャンプではなく、春のキャンプを迎えるまでの2か月半をどう過ごすか。そのために「ドライブライン・ベースボール」やハイテク機器を駆使した分析を行い、そのフィードバックも行った。秋のキャンプで行ったのは、選手の課題をハッキリさせること。2か月半のオフの間に“取り組むべきこと”を明確にし、課題と向き合わせる道筋を整えた。

「12日の練習ぐらいじゃレベルアップしない。これからの残り2か月半をどう過ごすかで変わってくるのは間違いない」。選手にとっての勝負は、このオフの2か月半の取り組み方。息を抜くことなく自分を律し、課題克服とさらなる成長のために自分を追い込めるか。2月1日の春季キャンプがスタートする時の姿で、首脳陣からの評価が決まる。

「クリアしてこなければ、スタートラインには立てないんで。このオフをいかに過ごすか、オフの過ごし方で選手の差に繋がるっていうのは間違いないと思うんで、いいオフというか、いいトレーニングを積んできてほしいですね」

 オフでの取り組み方が不十分であると首脳陣が判断すれば、スタートラインに立つことなく、キャンプ初日に競争から脱落することもあり得る。「自分の野球人生なんで、自分で責任とってやってほしいですね」と小久保監督。気を抜いている暇はない。選手たちにとって、大切なオフシーズンが始まる。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)