西田哲朗広報が語る“10.16”の舞台裏 涙ぐんだ瞬間…柳田悠岐が見せた勝利への欲求

ソフトバンク・西田哲朗広報【写真:竹村岳】
ソフトバンク・西田哲朗広報【写真:竹村岳】

1人称で振り返る2023年 広報3年目で意識したのは「よりチームのために」

 鷹フルはソフトバンクの西田哲朗広報にインタビューしました。2020年オフに現役を引退し、球団広報を務めて3年目。西田広報にとって2023年は、どんなシーズンだったのか、1人称目線で語ります。また、延長10回でサヨナラ負けを喫した10月16日のロッテ戦(ZOZOマリン)の舞台裏も赤裸々に明かしました。あのまま勝っていたら、ヒーローインタビューに選ばれていたのは――。西田広報が、思わず涙ぐんでしまったという瞬間がありました。

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 鷹フルをご覧の皆さん、こんにちは。西田哲朗です。この仕事を務めて3年目。1年目はガムシャラに、野球選手の代表じゃないですけど、僕が仕事をできなかったら「やっぱり野球選手は……」と言われると思っていました。広報という会社としても大事なポジション。1年目から「負けない精神」でやってきて、より良くしようと思ってやってきた2年目。3年目は、ある程度の知恵もついて。でも、言ったらダレる時期でもあったと思うんです。そういうところを意識した3年目でした。

 いらないところを削ったり、そういうところも意識しました。削る分は、1軍のチームについている広報なので、少しでも勝ちにつながる行動をしたいのはありました。選手のキャッチボール相手がいなかったら、僕がしたり。甲斐拓也の遠投も付き合って。甲斐もびっくりしていました、低い球で僕も投げられたので。「そんないい球投げられるんですね」って言われた時に、選手のストレスにならなかったなって。そういう意味では嬉しいですよね。ちょっとでも選手のためになれたんかなって。

 僕らも、インタビューとかを調整して、マスコミに出てもらうことが選手のためになると思っているんですけど。選手としては、負担にもなるわけで。お願いする時ももちろんある中で、お願いばかりをするんじゃなくて、じゃあ選手のお願いも聞きましょうよっていうのが僕の考えで。持ちつ持たれつじゃないですけど、そういう考えが3年目になって、削っていくっていうところになっていきました。それは後半ができたのかなって。もっと早くできたらよかったんですけど。

ソフトバンク・西田哲朗広報【写真:竹村岳】
ソフトバンク・西田哲朗広報【写真:竹村岳】

 皆さんの印象に残っている試合の1つが、10月16日だと思います。延長10回に佑京(周東内野手)がセンター前を打った時、僕本当に嬉しかったんです。佑京も足の状態が良くなかったと思うし、シンプルにチームとして「全力で大阪に、なんとしても行きたい」ってそういう話ばかりをしていました。裏方もベンチ裏で展開を見ていて、僕今までで一番強いガッツポーズをしたんですよね。

 僕はベンチにも入れるんです。ベンチの一歩外で見ていたんですけど、いつもはモニターで見ているんです。でもやっぱり後半、終盤戦の方から「これは自分の目で見て感じないといけない」って、生で見るようにしていました。そういう中でのロッテ戦。延長でピンチもしのいで、チャンスを作って、2アウトから佑京が打って、ガッとガッツポーズしましたね。僕も試合に入り込んでいたんだと思います。久々に、自然なガッツポーズをしましたね。

 試合の終盤は広報にとっては、ヒーローインタビューについて考えるタイミングです。でもあの試合は確定的に、ヒーローは絶対に佑京でした。誰が見ても佑京しかいなかったので。ベンチの雰囲気もすごくよかったです。タイムリーを打った時にみんなで一緒に「よっしゃあ!」ってなって。柳田さんも本心を語る選手じゃないんですけど「ええ、大阪行く?」みたいな感じで(笑)。冗談めかしていたんですけど、やっぱり(柳田さんが)内に秘めてるものはすごいなって。自分がキャプテンの時に勝ちたいっていうのも絶対にあったと思います。

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・柳田悠岐【写真:荒川祐史】

 ただ、ちょっとよぎりました。喜んでしまったので、裏で着替えに来る選手もいたんですけど、自分もちょっとフワフワしていて。笑顔が絶えなかったので……。それが、何かが足りなかったのかなっていうことなんですけど。ロッテのファンの方々の声援が届いたのかもしれないですし、今年ホークスが3位だったことを物語っていたのかもしれないですね。結果的に、でしかありませんけど。

 僕は朝から、その日のやることを考えながら走るんですけど。ふと思ったんです。「このメンバーでやれるの最後やな」って。もう1回大阪に、日本シリーズへの挑戦権をこのチームで取りたいと本当に思いました。広報をしていても、毎年チームは変わるわけじゃないですか。選手も首脳陣も変わるわけですし、1年に1回しかこのメンバーではやらない。ロッテ戦もチームの背中を見ていて、途中でちょっとウルっときました。それくらい燃えていて、だからこそ僕自身もチームのために何ができるのか、入り込んでいた部分もありました。

 僕もベンチではチームの動きを見ています。コーチが何をしているかとか、選手も「いい顔しているな」とか、凡打したら何て声をかけようかな、とか考えて。例えば上林なら「いい感じやけどな」とか。誠知も1本打てたら、えらい打ち出す選手なので。自分なら何て声をかけられたら嬉しいか。やっぱりいい感じに振れているなら、そのまま伝えてあげようって。本人も「行ける!」となったらいいな。「クライマックスなんて“1日ヒーロー”やぞ。その日のヒーローを作ったら勝ちやぞ!」と声をかけていました。

 10月の下旬となって、小久保裕紀新監督となりました。1軍のヘッドコーチをされていた時は僕も広報1年目で。2軍監督もされて、雰囲気も違ったかなって感じます。何より、僕も背筋が伸びますよね。「美しい」という表現もされていましたけど、秋季キャンプでも1日目から選手のために打撃投手もして。やっぱり緊張感はありますよね。選手が主体でやる、そこにプラスして監督みたいにしっかり言える人が噛み合ったら、めちゃくちゃいいチームになるんじゃないかなって思います。

 小久保監督はもともとしゃべるのも上手な方(かた)で。自分のプロモーションもすごく上手だと思います。自分なりにそのサポートをしていけたら。監督が、監督でいられるような環境を作っていきたいですし、今年と同じく、チームのために少しでも力になっていきたいです。

(竹村岳 / Gaku Takemura)