ドライブラインで変わる選手の“目の色”…数値以上に与える影響とは? 小久保新監督のコメント全文

ソフトバンク・小久保裕紀新監督【写真:竹村岳】
ソフトバンク・小久保裕紀新監督【写真:竹村岳】

ドライブラインから数値のフィードバック「説明してもわからんやろ(笑)」

 ソフトバンクは10日、宮崎県の生目の杜運動公園で行われている秋季キャンプで第3クール1日目を迎えた。米国のトレーニング施設「ドライブライン・ベースベール」のデータ計測と、数値のフィードバックが行われた。練習中も、選手に密着してフィードバックに耳を傾けていた小久保裕紀新監督。練習後、取材に応じた。一問一答は以下の通り。

――数値のフィードバックが行われた。
「フィードバックからの、スイングデザインか」

――監督もかなり近くでご覧になっていた。
「説明してもわからんやろ(笑)。多分、わからんと思う。俺でも『こういうことやったんや』ってわかったくらいなので」

――それだけ新しいこと。
「ですね。あれを知っておけば“500”くらい(ホームランを)打っていたかもしれんな。なんでアウトコースのボールが飛ばなかったか理由がわかりましたね、僕の中で」

――監督なりにも理由があった。
「はい。僕は外甘(そとあま)まで引っ張っていたので、あれを知っていたらライトにもう少しホームランが打てたなって思いましたね」

――それはどういう……。
「だから、わからへんやん(笑)。細かく言っても、多分わからないです」

――体を調べることで、その選手に応じたスイングを作り上げていく。
「そうそう。全部数値が出るので、数字に沿って『君のスイングはこう』って。そいつのスイングを見ているわけじゃないんですけど。僕は笹川にはべったりついて見たんですけど。数字を見ただけで、シルエットが、打ち方ができるっていうのがすごいなって思って、信頼しましたけど」

「スイングを見ていないのに、この数値から言うとこういうふうになっているからっていう形が、まさに『そうそうそう、だから打てないのよ』みたいな形になっていたので、それを修正するドリルがあって。そのドリルをやったら、吉康は明らかに変わりました」

「でも、俺らは芸術品ではないのでね。点数ではなくて、打たないかん。そこにはタイミングが入ってくるので、いくら綺麗なスイングをしてもバットに当たらなかったら意味がないんですけど。でも、この短時間でああいう発見はありましたね」

――球団からもデータサイエンスからのアプローチをテーマに掲げられている。
「選手ももちろんそうでしょうし、コーチ陣もすごく引き出しが増えると思う。選手にとって、どこを目指させるのかっていうのを決めた後に、じゃあどうしていこうっていうのは、各部門のストレングス含めて、これはストレングスと技術部門が一緒になってやるので、余計にわかりやすいんで。あの形に持っていくには時間はかかるでしょうけど、取っ掛かりとしては彼ら(ドライブライン)をこっちに寄越してくれたのは非常にありがたいですね」

――そのスイングを表現するには、ここを鍛えないといけないというのも同時に並行している。
「ストレングスと技術練習は同じ。やりたくてもここの筋力が弱いからできないですよねって話になる。その辺は、ホークスもやっているのはやっているんですけど、それとコーチが一緒になって、ノウハウというか、どのドリルを処方すればどうなるというところまでいっていないので、その辺は結構見えましたね」

――常々、監督とコーチ陣による指導方法の統一を掲げてきたが、数値からのアプローチで、より一層の統一を図れる。
「だから、今回は城所がある程度、分析してやったやつでやっている。どうしても主観もあって、そこは彼らに聞いても『ドリルがあって、この選手はどう目指そうとなっても、伝える人によっては多少なりに個性は出る』と言っていたので、そりゃあ個性は出るんでしょうけど、やっぱり目指すところへの真逆は行かないですよね。それがないように、結構わかりやすいです」

「吉康は、スイングはメジャーでもトップクラス。メジャーでも通用するくらいのスイングスピード。それは僕らもわかっている。じゃあなぜ、アウトコースが遠く見えるのか、アウトコースの打球がレフト方向に飛距離が伸びないのはこういう理由があるんですよって、すごく納得できました」

――これまでだと秋のキャンプで猛練習して12月に少しペースを落とすイメージだったが、こういう勉強をすることで、12月に再現性を高めるためにも振り込まないといけない。
「それが目的で呼んでいるのでね。秋のキャンプが『やった、キャンプ打ち上げ!』じゃなくて、その後に11月の半分と12月、1月の自主トレと、キャンプインまでにどういう時間を過ごさせるのかで、フロントも考えて。例年は猛練習で、終わって『やった、これで休みや』っていうんじゃ、またゼロに戻るので、そういう狙いもあるんです」

「だから、そういう点では松本晴(投手)も、ピッチデザインでめちゃくちゃ良かったみたいです。早く打者に投げたいって言っていたらしくて、そのモチベーションやと冬の過ごし方が変わってきますよね。投手の場合は投げすぎるわけにはいかないでしょうけど、非常に有効的なピッチデザインが昨日はあったみたいです」

――12月から1月の過ごし方も重要だが、その過ごし方においても時代が反映されてきた。
「1年中、野球ができるイチローみたいなタイプもいれば、僕みたいに1回落としてから作るっていうタイプもいて、どっちがいいのかわからないでしょうけど。今の子は比較的、年中動いているイメージがある。でも自分の課題には沿ってやった方がいいですよね。メンタルが弱いならメンタルをすることも必要でしょうし。自分の課題は自分で見つけるんですけど、今回は課題という点では非常に、打つのと投げるだけですけど、その課題は見つかっているんじゃないですかね」

――数値を上げるのは最終目標ではなく、投手の球を打つこと。そこに生かしていくのが難しい。
「今日も、向こうの先生方も言っていたけど、最終的にはプロが投げたボールを打つのが最終目的。いくらいいスイングをしても当たらないと意味がないっていうのはその通り。ただ、理にかなっていないスイングだったら伸び率も低いじゃないですか。せめて、スイングは理にかなうスイングにして。タイミングだけは自分で掴むしかない。教わるものではない。生海のノーステップか足を上げるのか、吉康どうするのか、タイミングは自分で決めないといけないので。タイミングが本当、命だと思います」

――指導する側にとっても、数値があることでわかりやすくなる。
「わかりやすかったですね。測る技術と出す技術が、ある程度ホークスにはできてきている。あとはその見方ですね。見方プラス、どのドリルの当てはめるのか。球団も最終的にはそこまで落とし込みたいんでしょうけど、まだ始まったばかりですから」

――第2クールは筑後に行っていた。宮崎に戻ってきて、選手の表情に変化は感じましたか。
「早くドライブラインのフィードバックを受けたいと、みんなチラチラ見ていたので、順番を待っているんやろうなとは思っていました。早く知りたいんだろうなっていうのは思いました」

――そういう意味では、選手の意欲や興味を促すこともできている。
「今日ので、受けたやつらはそれを課題にしてこれから取り組めばいい。最終的には、生きた球を打つのが仕事なので、そこにどうアジャストするのかはタイミングです」

――育成選手たちにも、このフィードバックをしていく。
「明日もありますよ。明日も6時間くらいあるんじゃないですか」

――全員やるということ。
「多分、そうだと思います」

ドライブラインのフィードバックの様子【写真:竹村岳】
ドライブラインのフィードバックの様子【写真:竹村岳】

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)