岩井俊介が20番目まで残っていた“幸運” 最高の潜在能力…古澤スカウトが惚れ込んだ3軍戦

福山龍太郎アマスカウトチーフ、2位指名を受けた名城大・岩井俊介、古澤勝吾アマスカウト(左から)【写真:福谷佑介】
福山龍太郎アマスカウトチーフ、2位指名を受けた名城大・岩井俊介、古澤勝吾アマスカウト(左から)【写真:福谷佑介】

2780回転/分の回転数など、ポテンシャルは“ドラ1クラス”

 楽しみな逸材だ。ソフトバンクがドラフト2位で指名した名城大の岩井俊介投手は最速156キロを誇る剛腕だ。野球日本代表「侍ジャパン」大学代表に選ばれ、名だたる代表メンバーの投手の中でも群を抜くストレートの回転数2780回転/分を叩き出した。“ドラフト1位クラス”とも言えるポテンシャルの持ち主なのだ。

 岩井が指名されたソフトバンクの2位はドラフト全体で20人目の指名だった。19人目にDeNAが同じ名城大の松本凌人投手を指名。2人連続で名城大から名前が呼ばれ、2人が指名を待っていた校舎内はチームメートたちの大歓声に包まれたという。

 全体20番目。実はここまで岩井が残っていたのが、ソフトバンクには幸運だった。入札制の1位でホークスは大阪桐蔭高の前田悠伍投手の交渉権を確定させた。ウエーバー順となる2巡目で、誰を指名できるかは重要なポイント。福山龍太郎アマスカウトチーフは「よく(2位で)取れたなって感じです」と振り返るほどだ。

 プロの世界でもトップクラスに位置する回転数はもちろん、変化球の曲がり幅などの投球成分は十分に1軍で通用するレベルにある。当然、各球団が高い評価を下しており、早い段階で指名されることを覚悟していた。「我々も当然、2位指名なんで高い評価はしていますけど、そこの順番にいたっていうところは、ありがたかったですね」

 この岩井を1年間、担当してきたのが古澤勝吾アマスカウトだ。2014年のドラフト3位で九州国際大付高からホークスに入団した元内野手。2020年に戦力外通告を受けると、野球振興部で2年間働き、今年からスカウトとなった。古澤スカウトにとっては、岩井が担当として初めてドラフト指名された選手になった。

 今もあの衝撃は忘れられない。古澤スカウトが岩井を初めて見たのは、3月29日に名城大のグラウンドで行われたホークス3軍との練習試合だった。3軍とはいえ、ホークス打線をねじ伏せる岩井のボールに釘付けになったという。

「その試合がめちゃくちゃ良くて、この投手は良いなと思いました。その後も何試合もチェックしましたけど、その試合が1番良かったです」

 岩井にとっても気合十分の試合だった。初めてプロの打者を相手に投げる貴重な実戦機会。気持ちを剥き出しにして、ねじ伏せにいったという。その姿にホークスのスカウト陣は魅せられた。福山アマスカウトチーフも「向こう気の強いボールを投げますし、顔つきとかも強さを持っている」という。惚れ込んだ古澤スカウトは上位での指名を球団に猛プッシュした。

 ドラフトでの指名は、各球団の戦略はあれど、最後は縁だ。どれだけ欲しかった選手でも、先に他球団に指名されてしまうこともあれば、その逆もある。3月29日を機に歯車が動き始めたホークスと岩井の縁。チームを背負う投手に育ってもらいたい。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)