“美しさ”という言葉以上の意味…中村晃のプライド 小久保新監督の発言に共感したワケ

ソフトバンク・中村晃【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・中村晃【写真:荒川祐史】

会見でチームに求めた「美しさ」 中村晃なりに受け止めた思いとは

 主力の1人として、どう受け止めたのか。ソフトバンクは16日に2023年の戦いを終えて、藤本博史監督が退任。2軍監督から昇格する形で、小久保裕紀新監督が誕生した。来季17年目を迎える中村晃外野手にとっては4人目の指揮官。自分なりに抱いてきた“美しさ”があるから、指揮官の言葉は心にまで届いていた。

 23日、小久保新監督の就任会見が行われた。「主力が引っ張る」「美しいチーム作り」「来年はキャプテンを置かない」など方針を打ち出した。秋季キャンプでは宮崎で野手、筑後で投手に分かれて行うなど、球団の考えもしっかりと理解しながら、指揮官なりに改革を進めている。今は「みやざきフェニックス・リーグ」で若手の指揮を執っているところだ。4年ぶりのV奪回は、ミスターホークスの手腕に託されることになった。

 一部の若手はPayPayドームで秋季練習に参加しているが、その中の最年長は板東湧梧投手と周東佑京内野手。30代の選手は自己流の調整を任されて、来年2月のキャンプインを目指している。新監督の現役時代をも知っている中村晃。就任会見があった23日に直接のやり取りは「していない」というが、指揮官の言葉をどのようにして受け止めたのか。

「(主力が引っ張るというのは)もっと、まだまだ頑張れるぞというメッセージな気もしましたし。そういうふうに言ってもらえるのは嬉しいです。そういうことは年を重ねると、人に言ってもらえなくなる。しっかり意識してやっていても、できていない時もあると思うので。わからないですけど、でもそういう意識はあります。しっかりとしないといけないなっていう意識は」

 小久保新監督自身も、若かりし頃から当時監督だった王貞治球団会長に「若手の手本になれ」と模範的な姿を求められた。“美しさ”という言葉でプロ野球選手としてのあるべき姿を表現する。中村晃も「野球選手としても、人としても、模範になれる団体、個人であるように。それができれば、そういう(美しいという)ことになると思います」と同調する。

 柳田悠岐外野手は「美しさ」という方針を「日本代表の時に、着帽であったり、グラウンドに唾を吐かないとか(について言われていた)。そういうところを言われているのかなって思います」と受け止めていた。中村晃も、小久保新監督の侍ジャパン時代に選出経験があり「その2つ(着帽、唾を吐かない)を言われたのは覚えています」と振り返る。その上で「それだけじゃないと思います」と、言葉以上の意味を自分なりに理解しようとしていた。

「わかりやすいのがそういう話じゃないですか。全力疾走の話とか。『子どもたちに『なんで走らないの』って聞かれるのは美しくない』とか、会見でそんな話もされていたと思いますけど。しっかりと、模範になれるような行動、言動もそうですし、姿ができているチームが、美しいんじゃないですかね」

 中村晃といえば常に準備を怠らず、試合ではチームの勝利のために身を粉にする。内野ゴロでも全力疾走を怠らない、まさにチームリーダーの鏡だ。「人に言ってもらえなくなること」と監督からの言葉を受け止めつつ「それなりに自分は意識してやってきたつもり。それが来年、どう監督に映るのか。注意される部分もあると思いますけど。そういういい姿を見せられたらなって思いますけどね」と、誰よりも体現してきた姿勢でもある。自分が大切にしてきたプロとしての矜持を、改めて小久保新監督が掲げてくれたような感覚だった。

 春先、中村晃は後輩たちに対して「言いたいことはいっぱいあります」と思うことを抱えていた。シーズンが終わってみてもその考えは同じで「(実際に)言ってきたこともありましたし。今はタイミングじゃないのかなって思って言わなかったこともあります」と明かす。2023年の戦いが終わった時には「惜しいとかじゃない。同じような負け方を続けて2年間やっている」と、自分も含めて、チームとして変わらないといけない思いは強く抱えていた。

「言葉にしないとわからない部分もあると思うので。(後輩には)言える時に言いたいなって思います。しっかりと、いい姿を見せていけたら」。誰よりも“美しい”プロ野球選手、中村晃。その背中を見て、何かを感じ取る。そんな2024年に、必ずなる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)