意地を込めた一発だった。ソフトバンクは14日、ロッテとの「パーソル・クライマックスシリーズ・パ」ファーストステージ第1戦(ZOZOマリン)に2-8で敗れた。一矢報いたのが、柳田悠岐外野手の2ラン。2点差に迫り、反撃ムードを高めた一発となった。チームを引っ張るキャプテン。試合後に「難しい……」と語った部分とは。柳田の目に、試合の流れはどう見えていたのか。
相手先発は佐々木朗希投手。9月17日以来の登板となった右腕に、3回を完全に抑えられる。初回2死、柳田も空振り三振に倒れ、立ち上がりからの内容に「素晴らしい。素晴らしい投手だと改めて感じた」と脱帽するしかなかった。ホークス先発のカーター・スチュワート・ジュニア投手も、初回から2被弾など、2回1/3を投げて4失点。ロッテがペースを握ったまま、試合は後半戦に突入した。
迎えた6回1死一塁、柳田が打席に立つ。左腕・坂本の142キロを捉え、打った瞬間に確信する特大2ランだ。反撃の狼煙を上げ、笑顔も見せながらダイヤモンドを1周。「打ったのはカットボール。いいスイングで完璧に捉えることができました。まずは2点を返すことができてよかったです」と、球団を通じてコメントした。
しかし、直後の6回だ。嘉弥真新也投手が無死一、二塁から安田に適時二塁打を浴びる。津森宥紀投手にスイッチするも、1死二、三塁から藤原に2点中前打を許して5点差に広げられた。柳田が高めた反撃ムードはすぐにしぼみ、打線も4安打2得点に終わった。森浩之ヘッドコーチも「お互いにやるか、やられるか。今日は向こうがしっかりとした野球をして、うちができなかった」と展開を振り返る。
自身で「完璧」と表現した一発だったが、柳田は試合後「負けたので、意味はないかなと思います」と淡々と話す。本塁打の後、ベンチでは満面の笑みでハイタッチを交わし、テレビカメラの前ではガッツポーズも決めていた。追いかける中でも明るさを示していたが、結果的に劣勢となったことに「いやぁ……。やっぱり負けていたら難しい感じになる。そこはうまくいかなかったかなっていう感じです」とベンチの雰囲気を代弁する。1勝が重い短期決戦なだけに、点差が開けば当然モチベーションにも直結してしまう。
“病み上がり”のような状態だった佐々木朗。試合前、長谷川勇也打撃コーチはキーマンを問われると「近藤(健介外野手)、柳田」と即答。「この2人でここまできて、シーズンも打線を引っ張ってもらったので。柳田はキャプテンとして、コンちゃんは朗希を全く打っていないですけど、意地を見せてくれると思います。あの2人には、期待しています。うちの“背骨”ですから」と続けていた。
柳田は163安打で最多安打。近藤は本塁打王、打点王、最高出塁率の“3冠”となって2023年の打線を引っ張った。現役時代に何度も短期決戦を経験した長谷川コーチも、CS特有の空気を踏まえて「これまでのCSと違うのは3位だから。今までは、下のチームには負けられないみたいな変なプレッシャーもあったんですけど。今年に関してはそういうのはないから、ガンガン攻めるだけ」。引き分けも許されない。勝つしかないのなら、前のめりになるしかないと言う。
「CSになれば、レギュラーシーズンじゃないから。集中力を持って打席に入って、自分が決めたことをやってくれたら。それが結果、どっちに転ぼうが、しっかり腹を決めて打席に立ってもらえたら。勝つことしか考えていない。3位なので、めちゃくちゃやってもらえたら」
試合前ではあるが、そう意気込んでいた長谷川コーチ。柳田も「また明日頑張ります」と小さく頷いた。崖っぷちに追い込まれたホークス。柳田を筆頭にして、もう一度、チャレンジャーになるしかない。