中村晃は「実は一番笑う」 同僚となり感じた“ギャップ”…西田広報が見た凄みと素顔

ソフトバンク・中村晃【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・中村晃【写真:荒川祐史】

お立ち台はサヨナラ本塁打の中村晃のみ…同点弾の柳田を呼ばなかった舞台裏

 ソフトバンクは7日、2年連続となるクライマックスシリーズ出場を決めた。2日、3日の楽天戦(PayPayドーム)で連勝し、7日の楽天戦(楽天モバイル)で延長12回の接戦を引き分けて3位以上を確定させた。ここに来て改めてチームが一体感を取り戻している印象があるが、戦いを見守っている西田哲朗広報は、主力の存在感、特に中村晃外野手の偉大さについて語る。「中途半端は許さない」と、そう思えるだけの取り組みを日々、一番近くで見つめている。

 終盤戦となって、西田広報も“チームのため”を今一度、強く心掛けている。基本的にチームのスケジュールに合わせて自分も動くだけに、「広報の仕事がおろそかになってはいけないですけど、自分のできることを最大限にやろうと思っています」。打撃練習中に外野で打球を拾う、ティー打撃のトスを上げる……。細かいことかもしれないが、裏方としての意識を改めて強くし、日々を過ごしているという。

「練習日って時間が空く時があるんですよね。その時に、こっち(ベンチ付近)から見ている選手の様子と、外野を守りながら見る選手の様子は全然違う。外野を守っている裏方さんだって人数は限られているので、打撃投手の方のためにもね。打撃投手も投げるのが仕事なので、そこにパフォーマンスを出してほしいですし、そういう勝手な思いもあったり。時間がある時はそういうことしようと思っています」

 オリックスに優勝を譲ったものの、チームはいまだに順位を争っている。広報としての仕事に全力で向き合うことは当然だが「そういうことが終盤戦で、一致団結じゃないですけど大事になってくるんじゃないかなって」。身を粉にして、少しでも自分以外の人が動きやすくなるように立ち回る。自分自身もカメラを持って広報活動をしているだけに、「選手も僕には言いづらい、頼みづらいと思うんです」。だからこそ、自分から動くことを心掛けているというのだ。

 9月16日に今宮健太内野手、三森大貴内野手、中村晃らが体調不良を訴えて特例2023で登録抹消となった。若鷹を昇格させたものの、一時はさらに厳しい戦いが続いていた。少しずつ主力選手たちは1軍に復帰し、西田広報なりに「ギーさん(柳田悠岐外野手)も背中で引っ張っていると思うんですけど、やっぱり戻ってきて存在感がありますよね」と感じている。特に存在感を受け取ったのが、黙々とやるべきことをやる中村晃だった。

「晃さんもギーさんに続いて行動で(示してくれている)。グラウンドに早く出て体を動かすのも、そう。シートノック前もいち早く出てくるとか、そういう姿勢は若い選手は見ていると思います。若手がそれより遅く出てくるのも、感じることがあると思うし。軸となる選手がいない時に、感じることはありました。その大きさもそうですし、連覇を支えてきた選手の力ってすごいなって」

ソフトバンク・西田哲朗広報【写真:竹村岳】
ソフトバンク・西田哲朗広報【写真:竹村岳】

 中村晃はホークス一筋16年目。西田広報がチームメートとして過ごしたのは3年間だったが「晃さんって“監視されている”じゃないですけど(笑)、グラウンドで隙を見せないというか、中途半端なプレーは許さないという見え方でした。僕は他チームから来たんですけど、他チームから見た晃さんってそんな感じでした」と振り返る。それだけやることをやり、行動で示しているから、自分の背筋も勝手に伸びるような存在だという。

 2017年オフに楽天からトレードで加入した西田広報は、相手として中村晃を見た経験もある。長谷川勇也打撃コーチのような職人肌だと思っていたといい、「登場曲で洋楽を使っているのもイメージとして合わなかったんですよね。もう“登場曲なし”くらいだと(笑)」という印象だったそうだ。2017年からはエド・シーランの「Shape Of You」を使用するなど、チームメートとなり、距離感が近づいて初めてわかった一面がたくさんあった。

「以前、言ったことがあるんですよね。『晃さんが洋楽使ってるのすごく違和感あったんですよね』って。でも、プライベートで話してみるとくだらない冗談でも笑ってくれるし、笑わないイメージでしたけど、実は一番笑ってくれますよね。人をよく見ているというか、ファーストも守る内野手ですしね。だから背中で引っ張れるのかなって。厳しさを行動で示してくれるというか」

日本ハム戦でサヨナラ本塁打を放ったソフトバンク・中村晃(右)【写真:荒川祐史】
日本ハム戦でサヨナラ本塁打を放ったソフトバンク・中村晃(右)【写真:荒川祐史】

 9月30日の日本ハム戦(PayPayドーム)で、中村晃はサヨナラ本塁打でチームを勝利に導いた。直前の柳田が放った同点弾も価値があったが、ヒーローインタビューは中村晃1人。西田広報も「翌日もデーゲームでしたから、負担を減らしたくて」と舞台裏を明かす。「(あの状況だと)どうしても“サブキャラ”になってしまうので、柳田さんが。あのクラスはもう主役じゃないと」と、柳田と中村晃、1人1人が脚光を浴びるようにという西田広報なりの気遣いだった。

 終盤戦を戦う今、選手たちの雰囲気も「持ち直したというか、いいと思いますよ」と語る。2023年シーズンもあと少し。1勝の重みを知る主力選手の存在感を、見逃さないでほしい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)