3年ぶりにウエスタン・リーグ優勝を決めたソフトバンクの2軍。優勝を決めた中日戦(タマスタ筑後)が行われた9月29日の朝、選手たちによる“作戦会議”が密かに行われた。アリーワーク(早出練習)のために集まった笹川吉康外野手、渡邉陸捕手、川村友斗外野手らの間でこんな言葉が交わされた。
2年間、ファームを率いた小久保裕紀2軍監督を慕う気持ちをそれぞれが抱き、胴上げしたい気持ちも持っていた。“特別な胴上げ”にするために選手たちは作戦を立てた。将来の主砲候補として熱心な指導を受けてきた笹川はこう明かす。
「パワー系の人たちを集めて、小久保さんを今までにない高さまで上げようよって。胴上げって実際6、7人で上げるじゃないですか。自分とか川村さんとか陸さんとか、あとは森(唯斗)さんも来るから、それでぶち上げようって」
小久保2軍監督を高く、高く胴上げしてしまおう。感謝の思いも込めて、選手たちもその瞬間を望み、見事に3年ぶりの優勝を決めた。タマスタ筑後は大いに沸き、選手たちも感情を爆発させた。“優勝経験”のない若鷹がほとんどで、喜びもひとしおだったことだろう。
笹川はこうも語る。「最初は2軍って優勝したらどうするの? 胴上げとかするの? マウンドに集まったりするのかな? っていう話になったんです」。未知の瞬間を楽しみに思う気持ちから「アーリー組もみんな、ロッカーで『今日は勝とうや!』って話をしたんです」と、士気が高まっていた。
さらに、試合前練習で指揮官が選手にハッパをかけて、気持ちが昂ぶった。その言葉に呼応するかのように一致団結し、その日で優勝を掴み取った。
小久保2軍監督は3度宙を舞った。中心には歓喜に湧く選手が集まった。事前の“作戦通り”とはいかなかったが、偶然にも力自慢の選手が集い、高く宙を舞うことになった。
指揮官にとって、胴上げは自身の引退試合が行われた2012年以来だった。宙に浮いている時のことを回想し「現役のときより10キロ体重が軽いんで、高く上がってました」と笑っていた。選手たちが「高く上げてやろう」と意気込んでいたことを聞くと「僕の体重だと思います」。冗談なのか、はたまた照れ隠しなのか……。いずれにしても、選手たちの思いは届いていたようだ。
後日、胴上げの動画も見たという。「あんなに横にブレる胴上げ、間違いなく落ちていたと思うので、3回ぐらいでちょうどよかったと思います。危ないんですよ、あれ」と笑顔で訴える。胴上げの中心近くにいた生海外野手は「小久保さん、怖がってました(笑)でも、もっと高く上げたかったです」と振り返り、古川侑利投手は「小久保監督の頭らへんにいましたが、だいぶ危なかったです」と必死に頭を支えていたようだ。
そんな裏話もあった胴上げ。選手たちは「もっと安全に」「もっと高く」と口を揃える。7日に行われるファーム日本選手権で期す2度目の歓喜の瞬間。悲願の日本一に輝いた暁にはどんな胴上げが見られるのか。