鷹フルがお届けする主力4選手による月イチ連載、板東湧梧投手の9月後編、テーマは「男前」です。今季はキャリアハイの5勝を挙げている板東投手。端正なマスクでファンにも高い人気を誇ります。そんな男前が思う「男前」とは――。名前が挙がったのは柳田悠岐外野手でした。「その時は“うわ……”って思いました」。遠征先で柳田選手に“胸キュン”したエピソードを明かしてくれました。
外見や身だしなみはもちろん、男なら、人間なら大切なのは中身だ。過去に、板東に聞いたことがある。「イケメンだな、男前だなって思う先輩は?」。真っ先に挙げたのが、柳田だった。「やっぱりかっこいいですよね。容姿ももちろんですけど、振る舞いとかも、全部がかっこいい。男として憧れるのはギーさんですね」。男前が選ぶ、男前。板東から明かされるエピソードは、柳田らしいものばかりだった。
2018年のドラフト会議で4位指名を受けた板東。同年に柳田は打率.352、36本塁打、102打点で2度目の首位打者に輝いている。入団時にはもうプロ野球の顔だった柳田。初対面の印象を「あんまり会話をした記憶はないですね……」と新人時代を振り返る。2019年2月、初めての春季キャンプは柳田と同じくA組に参加。「何かアクションがあったわけじゃないですけど、やっぱり見た瞬間に『すげえな』『柳田さんや』って思った記憶はあります」と笑顔で語る。
先発投手は、中継ぎ投手や野手と生活のリズムが違う。しかし、意外にも柳田とはともに食事をしたことがあるという。「中継ぎの時に連れて行ってもらったり。又吉(克樹投手)さんが(柳田さんと)仲良いので。あとは嘉弥真(新也投手)さん、健太郎(猪本ブルペン捕手)さんとかと一緒に行ったり。韓国料理を食べました」。続けて明かしたのは、推定年俸6億2000万円の柳田らしい豪快なエピソードだ。
「1回、その場に居合わせて全部奢ってもらったことはあります」
大関友久投手と2人で仙台で食事をしていた時、たまたま同じ店に柳田が来た。違うテーブルだったそうだが、伝票を持ってレジに行くと、店員から「すでに、柳田さまの方から……」。自分たちの分まで払っていてくれていた。もちろん、柳田の元まで行き、頭を下げて感謝したそうだ。先輩として見せた優しさ。右手で胸を抑えながら、板東も「そういうところがカッコいいなって思います。その時は“うわ……”って思いました」と“胸キュン”させられた。
食事の席での会話は、柳田から耳を傾けてくれるそうだ。「プライベートの話も聞いてくれたりして、そっちの方がうれしいです。それでご飯の後日とかに『どうやったんや』って話もしてくれて」。その場で話が終わるのではなく、進捗まで気にかけてくれるからカッコいい。話題は当然、野球にも及ぶ。柳田の感覚を聞いてみても、板東は「特殊」だと言う。
「打者心理を聞いてみたりするんですけど、ギーさんは特殊というか、一流。本当に反応で打つというか」
本塁打を打った試合後、柳田が報道陣の取材に応じる。狙い球や手応えを問われても「全部、反応です」「うーん、わからないです」とハッキリ言うのも、柳田らしさの1つだ。板東もそれを聞くと「ですよね、あんまり参考にならないですね(笑)」と苦笑する。しかし、通算1534安打、258本塁打(29日現在)のスラッガー。当然、後輩に自分なりの意見も授けてくれるという。
「もちろん参考になるところもあるんですよ。左投手と右投手のインコース、どっちが打ちやすいですかって聞いた時、『左のインコースの方が打ちやすい』『右の方が入ってくるから打ちにくい』って言っていて。僕も右投手だから右打者のインコースに投げるのが怖くてって言ったら『それは打ちやすいよ』って。やっぱりそうなんだって思った記憶はありますね」
「(右投手から右打者へのインコースは)やっぱり真っ直ぐ来るから、食い込んでくるわけじゃない。怖さがないじゃないですか。その時に、どれだけ嫌がる球を投げられるかって話になった記憶があります」
板東は柳田を「ギーさん」と呼ぶが、柳田は板東を「男前」と呼んでいるそう。「そうなんですよ、男前って呼ばれてます。『おう、男前』のイメージしかないです。あだ名をつけてもらってるだけでも光栄ですけど」と照れ笑いする。自身が思う男前の象徴が柳田悠岐。板東が思う“カッコよさ”とは、どんな人柄なのか。
「やっぱり尊敬できる人じゃないと、カッコいいって思わないですよね。プレーとかで、もちろんカッコいい人っていますけど、人として……。例えば悪口ばかりを言う人だとか。じゃなくて、やっぱり人として、当たり前のことを当たり前にやっていて、プラス男として惚れるような。リスペクトできる人が、カッコいいなって思います」
いつかは自分も、そんな本物の「男前」になりたい。“生き様”がついてきた時、板東はもっとカッコよくなる。