3年ぶりのウエスタン・リーグ優勝に王手をかけているホークスの2軍。選手たちはみな同じように熱い思いをたぎらせている。それを代弁するのは奥村政稔投手。マジック「1」で迎えた27日の広島戦に先発し、6回途中4安打1失点と好投した右腕も胸に秘めてきた小久保裕紀2軍監督への思いを口にした。
チームは最高の雰囲気だった。奥村自身もマジック1で巡ってきた先発を意気に感じ、優勝を強く意識してマウンドに上がった。「今日は(捕手の渡邉)陸に『もう3回で潰れてもいいつもりで、出し惜しみなくいけるところまでいこう』と話していた。陸もうまくリードしてくれた」。1球1球、魂を込めて腕を振った。
0-1で敗れて優勝はお預けとなったが、その投球は小久保2軍監督にもしっかりと届いた。「奥村はよく頑張りましたよ。今年1番くらいのピッチングやったんじゃないですか」。十分過ぎるほどに気持ちが伝わるピッチング。降板後も「降りたからにはもう声出すしかないんで、声出せるだけ出して」と、ベンチの最前列で味方を鼓舞し続けた。
優勝を目前にして、2軍には雰囲気の良さがハッキリと感じられる。奥村のような選手の存在も大きいが、その奥村は小久保2軍監督への思いこそがチームを一つにさせていると言う。
「やっぱり小久保さんの“男気”とかっていうのは、若い子はどうかわかんないですけど、自分とか森(唯斗)さんとかはすごく感じているんですよ。そういうところに憧れるし、だからこう慕っているじゃないですけど、そういう気持ちがあるんですよ。今日とかも、みんなそういうのを感じていると思うんです。小久保さんを男にしよう、とかそういうの」
「(小久保さんを胴上げする)力になりたいっていう気持ちで、逆に固さも少しあったんですよね。今日、みんなの顔見ていたら、やっぱりちょっと緊張してるのは感じましたね。だから、海野(隆司)とか1軍でそれなりにやったり、ムードメーカー的な存在なんで。固くなった選手とかにも声をかけたりしていたんで、そういうところは『海野はさすがだな』と思いました」
2軍の選手たちにとっては「小久保さんを男に」が合言葉のように広がっている。先発した投手はすぐに2軍本隊を離れて筑後に戻らなければいけないが、奥村は「明日も中継ぎで」とまで言う。「そのくらいの気持ちです。残っていいって言うんだったら残りたいぐらいですけど、帰れって言われると思うんで……」。28日に優勝が決まれば、小久保2軍監督の胴上げには参加できない。それがなんとも名残惜しそうだった。
小久保2軍監督は、たとえ1軍クラスの選手が2軍に落ちてきても特別扱いはしない。奥村曰くベテラン、若手関係なく「悪いことは悪い、良いことは良い」とハッキリと言う。社会人としての立ち居振る舞いも大切にさせる。「例えば『ペットボトルに水が入ったまま捨てるな』とか、当たり前のことを言う。いつもそれを片付けてくれる掃除のおばちゃんにも気を遣えるっていうか、本当すごいなと思う」。常に“スジ”が通った言動は選手の心を掴む。「小久保さんに言われたら直そうって思いますもん」と笑顔で語る。
そんな指揮官と戦ってきた1年だからこそ、選手たちは2軍といえども優勝したいのだ。「もう“男”ですけど、もっと“男”にしたい! 2軍でずっと一緒にやってきた選手はみんな多分、将来、小久保さんに1軍で監督してほしいと思っていると思います。それだけ本当に一致団結しているので。2軍だからっていうのはあるかもしれないですけど、でも、なかなかそういうのはないと思うんですよ、監督のためにやるって」。奥村の言葉は全員の総意かもしれない。苦楽を共にし、厳しさも愛情も存分に受けとってきたからこそ、小久保2軍監督と優勝したいのだ。