なぜ野村大樹を2番に? 9月だけで借金4…苦しむ対左腕、首脳陣が組むオーダーの“根拠”

ソフトバンク・野村大樹【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・野村大樹【写真:藤浦一都】

9月に入って左投手が先発だった試合は2勝6敗の借金4

 ソフトバンクは27日、敵地・京セラドームで行われたオリックス戦に0-1で敗れた。先発のカーター・スチュワート・ジュニア投手は、2回に若月にソロを浴びたものの、6回を投げて3安打1失点と好投。ただ、打線がオリックス先発の山崎福の前に沈黙。わずか5安打に封じられてスコアボードにはゼロが並んだ。

 25日のロッテ戦で左腕・小島から大量点を奪った打線が湿った。この日も藤本博史監督は左腕の山崎福対策として、2番に野村大樹内野手、7番に井上朋也内野手と2人の右打者を起用。だが、野村大は3打数無安打。6回1死一、二塁のチャンスでは投併殺に倒れ、井上も2打数無安打。8回無死一塁でベンチは“ピンチバンター”として川瀬晃内野手を送ったが、これも得点には繋がらなかった。

「ピッチャーはよく頑張ったと思いますよ、1点に抑えているんだから。0点じゃ勝てない。相手の山崎くんも良かった。積極的にファーストストライクから打ちにいこう、とやったけど、なかなか打てる球もなかった」。試合後、藤本博史監督はこう嘆いたが、終盤に入って深刻な“左腕恐怖症”に陥っている。

 藤本監督は就任時から一貫して相手投手の左右によってオーダーを組み替えている。主力には柳田悠岐外野手や近藤健介外野手、周東佑京内野手、中村晃外野手ら左打者がズラリ。右打者のレギュラーは今宮健太内野手と甲斐拓也捕手くらいで、現状では右投手には左の柳町達外野手や川瀬を、左投手には野村大や井上らをスタメンとして起用している。

 オーダーについて森浩之ヘッドコーチは「左に主力が多い中で、出した右打者になんとかしてもらいたい。大樹にしても、増田にしてもそう。中継ぎに左がいないと言っても、先発をどう崩すか考えてオーダーを組んでいる。そうすると2番に右を挟んでっていうところになる」と指揮官の考えを代弁する。

 だが、その“対左腕打線”が機能していない。9月に入って相手の先発が右投手だった試合は9勝5敗の貯金4。14試合で64得点を奪い、1試合平均4.57点を生んでいる。

 その一方で左投手が先発だった試合は2勝6敗の借金4。8試合でわずか22点しか取れておらず、1試合平均ではわずか2.75得点となる。このうちの17得点は7日と25日のロッテ戦で奪ったもの(7日が7点、25日が10点)。それ以外の6試合は1点、1点、1点、1点、1点、0点と結果に繋がっていない。

 9月の月間打率.394と好調の川瀬のスタメン起用も「今日は考えた」と森ヘッドコーチは言うが「山崎は右の方が相性がいいということで大樹をもう1回使ってみようということになった」。山崎福は確かにこの試合前まで対左打者被打率.208に対し、対右打者は被打率.296となっていた。これがオーダーを決める根拠になったという。

 ただ、野村大は対右投手打率.333に対して、左投手は.163と左腕に苦戦している。一方で、川瀬は対右投手の.215に対して、左投手は.346と苦手にしているわけではなかった。

 今季、リーグ3連覇を果たしたオリックスには山崎福の他にも宮城や田嶋といった好左腕がいる。2位を争う楽天にも前回苦戦した藤井らがいる。この苦手ぶりを見れば、残り試合での直接対決、そして、その先のクライマックスシリーズでも相手が左腕をあえてぶつけてくる可能性も十分にある。

「そこはまたいろいろ考えてやっていけたら」と森ヘッドコーチは言う。相手の先発の左右にとらわれないオーダーを組むことも打開策の一手になるか。残り7試合。首脳陣はいかなる判断を下すのだろうか。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)