「悔しさがなければ、この世界で投げていくことはできない」
ソフトバンクは25日、敵地ZOZOマリンスタジアムでのロッテ戦に10-1で大勝し、7月11日以来となる単独2位に浮上した。先発の和田毅投手は4回、5回と度重なるピンチを気迫の投球で1失点で切り抜けて5回を5安打8奪三振1失点。味方の援護もあって、8月10日の楽天戦以来の白星となる7勝目をマークした。
42歳の大ベテランが初回からフルスロットルで飛ばした。初回を簡単に3者凡退に抑えると、2回はポランコ、井上、佐藤都を3者連続空振り三振に仕留める驚異の立ち上がり。3回2死から和田にこの日最初の安打を許したものの、3回までわずか1安打、5つの三振を奪ってロッテ打線を圧倒した。
暗雲が垂れ込めたのは4回だ。先頭の石川慎に左前安打を許すと、ブロッソーには左翼線への二塁打を浴びて無死二、三塁のピンチを背負った。ポランコの一ゴロの間に同点にこそ追いつかれたが、後続を打ち取って最少失点で止めた。5回にも先頭の中村奨、続く茶谷に連打を許して無死一、二塁とされたが、ここも後続を切って無失点。最後の石川慎を三ゴロに仕留めると、グラブを2度叩いて、気持ちを全面に押し出した。
「今日は初回から全力でと言いますか、そういう気持ちで投げていました。ちょっと5回は疲れてしまいましたけど、最少失点で抑えることができたので良かったかなと思います」。1か月半、遠ざかっていた久々の白星。初回から飛ばしに飛ばして、仲間の援護を待った。4回の窮地を乗り切ると、その直後に、味方が42歳の気迫に応えた。3年目の井上朋也内野手のプロ初本塁打が飛び出すなど、3点を援護してくれた。
汚名返上のマウンドだった。前回登板だった9月17日の日本ハム戦。制球が定まらず、5回を7安打6四球5失点で負け投手になった。ベンチでは珍しく感情を爆発させ、グラブを2度、壁に投げつけた。大ベテランらしからぬ荒れ具合だった。あれから1週間。和田はあの時の心境をこう明かす。
「自分への不甲斐なさもそうですし、やろうとしたわけではないんですけど、色々と溜まっていたものが出てしまったっていう方が正直なところ。それだけ僕らも、真剣といったらおかしいですけど、1球1球本当に気持ちを込めて投げていて、それがうまくいかない時ってどうしようもない感情になってしまうことがある」
「良くないことだとは分かっているんですけど、それを反省するってことは僕はないと思っているんで。そういう感情が出るっていうのが僕は普通だと思っているし、表でやることじゃないかもしれないですけど、その悔しさがなければ、この世界で投げていくことはできないと思っている」
チームは負けられない戦いが続いている。自身に課された責任の重さも感じている。絶対にやってはいけなかったミスを、大事な試合でやってしまった自身への不甲斐なさ……。抑えきれない感情が表に出て爆発した。ただ、あの悔しさが、この日のピッチングに繋がったのも事実。己を奮い立たせて、マウンドに上がったからこそ、初回から全力で腕を振り続けた。
「それ(前回の登板の悔しさ)が消えることはないですし、消しちゃいけないと思います。その悔しさ、不甲斐なさを今日、マウンドで払拭していくしかなかったので」。勝てば単独2位浮上となるロッテとの直接対決で見せた、42歳の意地のピッチング。感情を爆発させるほどの気概と情熱を持つ大ベテランが、チームに大きな1勝をもたらした。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)