7月24日のロッテ戦でサヨナラ被弾し「ごめんなさい」 なぜオスナは頭を下げたのか
勝利の“儀式”に、心からのリスペクトが込められている。ソフトバンクのロベルト・オスナ投手はここまで45試合に登板して3勝2敗23セーブ、防御率1.00の成績を記録している。メジャーリーグでも実績を残していた絶対的な守護神が「今まで一緒にやってきたキャッチャーの中でも一番と言っていい」というのが、甲斐拓也捕手の存在だ。2人の間で成り立つリスペクトに、迫った。
オスナの2敗の内訳は、7月24日のロッテ戦(ZOZOマリン)と9月16日の日本ハム戦(エスコンフィールド北海道)。ロッテ戦では1点リードの9回2死一塁、代打の角中に右翼席に2ランを浴びて試合を決められた。日本ハム戦では同点の9回1死一塁から万波にサヨナラ2ランを許した。セーブのチャンスはもちろんだが、勝敗がつきやすい機会で登板しているだけに3勝2敗は堂々の数字。マウンドを託されれば、ゼロを並べるために最善の準備を重ねている。
MLB時代にはセーブ王を経験し、NPB2年目の今季からホークスに加入した。遠征先では中継ぎ投手を食事に連れ出すなど、チームメートの存在を「ファミリー」と表現するオスナ。甲斐も、そんな右腕をリスペクトしている。ロッテ戦で角中にサヨナラ弾を浴びた時、オスナは甲斐に「すみません」と“謝罪”した。甲斐も悔し涙を流したというが、なぜオスナは頭を下げたのか。本人の口から語ってもらった。
「甲斐さんはいつも勉強して、自分だけではないんですけど、投手陣みんなのためにどうやったらアウトを取れるのか、チームが勝てるのかっていうのを、努力している。9回までにああいう状況を作って、自分が投げた球で打たれたホームランなので。それまでの甲斐さんの努力もあるし、その試合に関しては9回までにやってきたことが、無駄ではないですけど、自分の投げミスだった。そういう意味で『ごめんなさい』と言いました」
7月23日のロッテ戦で敗れた時点でチームは11連敗。オスナは参加しなかったというが、試合後には中村晃外野手が提案して、千葉市内で決起集会が開催された。24日の試合前も甲斐野央投手が声出しを務めるなど、とにかく選手間で勝とうと必死に努力、工夫を重ねた。だからこそ“あの1球”の重みは、オスナ自身もわかっていた。心から出た謝罪の言葉だった。
「自分は決起集会には行かなかったですけど、甲斐さんは普段から毎日努力して、チームのためにやってくれている。あの試合に関しては9回まで素晴らしい仕事をしていたのに、自分の球で打たれたので。そういう気持ちで『すみません』と言いました」
シーズンの途中から、甲斐がマスクを被り、オスナが試合を締めくくれば熱い“ハグ”を交わすようになった。飛行機で移動する時には相手打者の映像に目を凝らす。どんな時も抑えるための準備を怠らない甲斐への、オスナなりのリスペクトの証だ。「投手のために努力をしてくれている。僕たちがうまくいった時には“その半分”じゃないですけど、甲斐さんがいて、自分たちができている。彼の仕事に感謝していることを示す意味でも(ハグを)しています」。残り試合が少なくなっているが、心から喜ぶ姿なら何度でも見たい。
NPB以外での経験も含めて、何人もの捕手とバッテリーを組んできただろう。甲斐の特徴に関しては、その献身的な姿勢も含め「甲斐さんの強いところといえば頭がいいところ。あとはキャッチャーとしての技術が高いこと。ブロックもそうですし(走者に)走られた時の投げる技術も。自分が今まで一緒にやってきたキャッチャーの中でも、一番と言っていいくらい技術が高いキャッチャーです」とうなる。自分が抑えられる裏側で、甲斐が準備をしてくれていることには感謝しかない。
今月16日、万波に打たれた時も「同じように謝りました。あの時は甲斐さんが最初、スライダーを要求して、自分が首を振ってシンカーを投げたんですけど。甲斐さんがやりたかったプランと、違うのを投げて打たれたので。そういうところも含めて謝りました」と舞台裏を明かす。投手のために黙々と準備する甲斐のためにも、抑えたい。オスナから送る、最上級のリスペクトだ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)