オスナからベンチ裏に異例の“呼び出し”…スチュワートと擦り合わせていた独自のプラン

ソフトバンクのカーター・スチュワート・ジュニア(中央)【写真:竹村岳】
ソフトバンクのカーター・スチュワート・ジュニア(中央)【写真:竹村岳】

初回の守備を終えてオスナがベンチへ…異例の光景の裏側で行われたやり取りとは

■ロッテ 7ー1 ソフトバンク(5日・PayPayドーム)

 異例の光景だった。ソフトバンクは5日、ロッテ戦(PayPayドーム)に1-7で敗戦した。先発したカーター・スチュワート・ジュニア投手は4回3失点と試合を作れず。全てのイニングで先頭打者の出塁を許すなど、リズムを生み出すことはできなかった。悔しい内容となった中で、初回の守備が終わった後、守護神のロベルト・オスナ投手にベンチ裏に呼ばれた。2人の中で行われた具体的なやり取りとは。

 初回、安打と2四球を与えて1死満塁を招く。5番の角中に左犠飛を浴び、あっさりと先制を許してしまった。続く山口にも四球を与え満塁としたが、ここは佐藤都を見逃し三振で切り抜けた。2回は安田、3回はポランコと先頭打者の出塁を許す。4回2死一塁からは、藤岡に右中間テラスへの2ランを浴びた。

 藤岡の後も中村奨、ポランコを歩かせてしまい、守備の時間を短くできない。最後は角中を空振り三振としたが、5回からベンチは田浦文丸投手にスイッチした。「毎回先頭バッターを出してしまい、攻撃につながるような投球ができなかった。リズムの悪い投球になり、チームに申し訳ない」と球団を通じてコメント。2位のロッテ、4位の楽天との6連戦の初戦で、今季最短KOという結果になってしまった。

 そんなスチュワートに、言葉をかけたのがオスナだった。初回から37球を要した後、オスナが一塁ベンチに姿を見せた。スチュワートを呼び、そのまま2人はベンチ裏へと消えていく。異例の光景の先に行われたやり取りは、どんなものだったのか。スチュワートが明かす。

「気合を注入されたというか、カツを入れられた感じです。『プランをしっかりと持って、自分のピッチングをしろ』と。相手に惑わされたらいけない、と言われました」

 試合前の時点で、ロッテのチーム打率.242、同62盗塁はリーグ4位。同84本塁打は同5位ではあるものの、作戦を仕掛けてくる攻撃は印象深いだろう。1安打、3四球を与えた初回のピッチングからは、事前に決めていたという攻め方を表現できていなかったようだ。スチュワートも「2ストライクからのところで球数を使ってしまった。あとはイニングの先頭できっちりアウトを取れなかった」と反省しながら振り返る。

 オスナの視点からはどうだろうか。この日への入り方について、2人で独自にプランを立てていたこと明かす。

「試合に入る前に、こういうプランで行った方がいいんじゃないかと2人で話していたんですけど。そのプラン通りにうまく投げられていなかったので。その話をしようと思った」

 オスナなりに伝えたことは「他のチームのこともあるので、それは言えない」と明かすことはなかったが、スチュワートが苦しんでいたことはすぐにわかった。結果には繋がらなかっただけに「解釈とか、難しい部分もあったと思いますけど。それがうまく行かなかったんだと思います」とも。オスナ自身も責任を感じながら、スチュワートの内容を受け止めていた。

 スチュワートは2018年の米ドラフトで、ブレーブスから1巡目(全体8位)で指名された。身体検査で異常が見つかり入団には至らなかったものの、米国ですら輝くほどの才能を持っていることは確かだ。MLB時代にセーブ王の経験があるオスナも「彼自身が自分にアドバイスを求めてきている」と言う。圧倒的な才能を持つ2人にしかない世界。発展途上のスチュワートが自分の成長のために、リスペクトを込めながら、実績のある守護神からきっかけを得ようとしている。

「操れなかった部分がありますけど、それプラスで自分自身ももう1つ、成長しないといけない。ここでやっていく以上……というのは今日改めて感じました」とスチュワートも自分自身に矢印を向けた。オスナをはじめ、サポートしてくれる存在に感謝しながら、全ての経験を糧にする。前だけを見て進んでいく。

(竹村岳 / Gaku Takemura)